今日は月見えてる?
夕暮れ時はちっと見えてたけど。
ダメだねぇ、雲が厚い。
木星だけはチョビっと見えただけでも、儲けモンかなぁ。
怒鳴られ事業所からケアに行ってた、とあるお婆ちゃんは、
バリバリの認知症で。
あっしが初め、家を訪問すると、
めっちゃ不審そうにあっしを見ていたのだが
何回かケアに訪問しているうちに、
よぉく話をしてくれるようになった。
私が生まれたところは、
海が近くにあって、海の幸がとっても美味しかったのよ。
私はお魚が嫌いだったので、全然食べなかったけど。
…食べないのに、美味しいのが分かるンですかい?
なんて、意地悪な質問はモチロン致しませず、
ふうんふうん、そうなんですね。
当たり障りなく返事をしながら、ケアを続ける。
ケアの時間に余裕があれば、もうちっと話も聞いてあげられるンだけど。
ギリギリなんだわぁ、ごめんね、お婆ちゃん
いつも、少しつまんなそうな顔のお婆ちゃん。
それでも、帰りますねーって言うと、
うんうん、気をつけてお帰り下さいね、って。
でも、ちょっと泣きそうな顔。
ここは月しか見えなくて、淋しいねぇ、
生まれ育ったところでは、降る様に星が見えたのよ。
懐かしそうに、そう話す。
しかし、このお婆ちゃんの事でも、あっしは怒鳴られた
あのねぇ、この人は、
物がない、無くなった、って、大騒ぎするのよ、
あなたは何回もここにケアに入ってるのに、
どうしてその事を知らないのよっ!!!
…だって、あっしの前では…
一度も、物が無くなったとか、騒いだ事ないモン
認知症の人って、
確かに物忘れがひどくて、
今、自分が置かれてる状況が分からないとかで、
自分一人では生活出来なくなってくるンだけど。
冷静に判断してる部分もあると、あっしは思ってる。
特に、大騒ぎしてもええヘルパーや、って思ってたり、
穏やかにしとこうかなって思うヘルパーだったり、
なんて、冷ややかに考えてる部分がある。
あっしの時は、ずっと落ち着いてたよ、
管理者の貴方が同行したら、異様に不穏に騒ぎ出したのにはビックリしたけど。
私はプロの介護士なのよって啖呵切るなら、
お客さん、不穏にさせたらダメなんじゃないの、管理者さん
しかしここのお婆ちゃんちにももう行けない。
又、来て下さいね、って言って貰えるようになってたのになぁ。
最後の頃、お婆ちゃんは電話をかけたいと泣いていた。
ここ(自分の家)にいても一人だから、
お父さんのところへ行きたいのだと。
田舎へ帰りたいと。
しかし、認知症となったお婆ちゃんの家の電話は取り外され、
電話したくても電話がない。
もし家に電話があり、電話出来たとしても、
84歳になるお婆ちゃんのお父さんが、
田舎で元気に自活しながら暮らしている訳もない、
それでも泣きながら、お父さんに電話したいと訴える、
認知症とはなんと悲しい病気なのか。
お父さんに電話しようという気持ちを忘れてくれないかなぁ、
祈るばかりである。
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