

ブログネタ:
好きなハンバーガーチェーン
参加中
ここは田舎のファーストフード「マクドナルド若杉店」。
周りに田んぼが生い茂るこの店で小さな戦いが始まろうとしている。
ギネス記録、マクドナルドで一週間過ごす。
破天荒優。
それが今回のギネス記録に挑戦する高校生の名前だ。
破天荒までが苗字で、名前はスグルと読む。
事の始まりは一ヶ月前までさかのぼる。
部活仲間とこの店に足を運んだ際にそういう話に発展した、この年の頃にはよくある自慢話。
「俺なら一週間くらいマクドナルドで暮らしていける」
そう言い放ってからの破天荒の行動は迅速だった。
ギネスブックへの登録申請を済ませ、
戦いの舞台となるマクドナルド店へ事の顛末を説明して使用の許可を取り、
学校が長期休学に入るのをひたすら待って春休み初日を迎えたのであった。
いよいよ戦いが始まる。
彼の健康面を考慮して同じ新聞部の仲間である筆者、海崎恵が立会い兼記録係として同席することになった。
*
『飽きた』
『たこ焼き』
『キツイ』
『石狩鍋』
マクドナルドで一週間過ごすギネスに挑戦中の破天荒。
記録開始からまもなく半日、十二時間が経とうとしている時点ですでに限界が近づいている模様。
筆者がしりとりを切り出しても机にうつぶせたまま顔を上げなくなった。
「せっかく私が気晴らしにしりとりでもしてあげようと思ったのに」
「無理だよしりとりは。もう4回目だよ。
ていうか常に食べ物で返すのやめてくれない? 余計ツライから」
声に抑揚がなくなってきている。
しかしそれも無理もない話だろう。
とっぷりと日が落ちて、破天荒のまぶたもトローンと落ち始めてきている。
昼からマクドナルドの高カロリーなハンバーガーやポテトやジュースだけしか食べていない。
机に積み上げられた包み紙だけでもざっと15枚。
筆者こと美少女と相席というのも心身の負担要素になっているに違いない。
「つらいのは私も一緒だよ。はい『石狩鍋』」筆者が繰り返す。
「べ、べ…、『ベーコンエッグレタスバーガー』」挑戦者は返す。
「伸ばし棒で終わったときはどっちにすればいいの?」
「何回同じこと言わせる気だー。『ガ』でも『ア』でもどっちでもいいよ」
「じゃあ『アップルパイ』」
「『インド』」
「インドかー、インドといえば昨日はカレー食べたよ。すっごく辛いやつ。
最近辛い食べ物にハマってるんだー。食べたら汗がぶわーって出てきて健康にいいんだよ」
「もうやめて(´・ω・`)」
「え?
今、筆者の耳ににわかに信じがたい言葉が聞こえてきた気がする」
「お願いだから食べ物系で攻めるのはもうやめて」
「わかった。じゃあ『ドナルド・マクドナルド』」
そこから破天荒はしばらく口を利いてくれなくなった。
*
破天荒はギネスチャレンジのルール上、マクドナルドから外に出られない。
筆者が近所のツタヤから帰ってくると挑戦者の様子に変化が見られた。
目は虚ろ、うわの空を見上げながらブツブツ独り言を呟いている。
「なめてた。
マクドナルドなめてた。
安っぽいビニールの座席に座り続けるのが苦痛すぎる。
油っこいのばっか食べてるせいか気持ち悪くて吐きそうだ、あぁ…
諦めたくない。
あれだけ大口叩いておきながら失敗したらあいつらに笑われる。
でもツライ、苦しい。
なんで俺こんなことやってるんだろう。
マクドナルドってこんなにツライ思いをしなくちゃいけない店だっけ?
春休みってもっと楽しいもののはずだろ?
今日マクドナルドにいた時間をあいつらはもっと他の有意義なことに使ったはずなのに俺はマクドナルド。
俺だけマクドナルドで一週間、マクドナルドのものだけ食べて生活なんてふざけてやがルド!
マクドナルドシネ!」
いよいよ精神の危険が危ない様子。
語尾が侵略されはじめてきて問題発言まで飛び出してきた。
見届け人の筆者としてはドクターストップをかける義務がある状態だ。
しかし同時に、それでも机に噛り付いて頑張っている彼に言えるか。
涙を流し体を震わせそれでも耐え続けている男にギプアップするかなんて無慈悲で無責任なことを君は言えるか?
と、そこに店員の制止が入る。
渡されたコップ一杯の水をキュウッと飲み干し挑戦者は落ち着きモードに入った。
ここで筆者が恐る恐る男に近づいていく。
彼の目は充血し血走り、今にも獲って食われそうな野生の動物のごとく凄まじい形相をしながら口を開いた。
「しんどい」
「『石狩鍋』」
「しりとりじゃねーし! しかも石狩鍋使いすぎだ」
「じゃあギブアップする?」
「うんそうする」
決断はむっちゃ早かった。
ツタヤはすでに閉まっているが道路向かいのコンビニは営業している。
ペットボトルのお茶を飲みながら筆者と破天荒は朝日を見ていた。
「俺は大事なことを学んだよ。
どんなに好きなものでもやりすぎはダメだってことだ。
万能の薬も用量を誤ればそれは毒になる。『良薬口に苦し』ってやつだよ」
「ことわざの使い方は間違ってるけどその通りだね。
今日は良い経験をしたじゃない。
新聞部的にも良い記事が書けそうだし、めでたしめでたしだね」
これでギネスチャレンジは終了である。
挑戦は失敗に終わったものの得るものはあったはず。
そして失ったものも。
カメラとメモ帳を鞄にしまい、コンビニを後にする筆者を破天荒が後ろから呼び止める。
「今日は楽しかったよ。
今度ドーナツでも食べに行こうぜ、海崎部長」
「『うどん』♪」
以上です。
管理人ハルシオンは、マクドナルド様のハンバーガーが大好きです♪