
あなたは「死」に立ち会った経験があるか?
大切な家族や友人、恋人の「死」を体験したことがあるか。
誰かの命を奪った、あるいは誰かに命を奪われたことは――
その日は例年になく蒸し暑い日だった。
トムとその友人の5名は、交差点で信号待ちをしている最中に事故に遭遇した。
一匹の犬が飛び出して車にはねられた。
車の運転手は一旦立ち止まりはしたものの車から降りもせずその場から立ち去っていった。
タイヤ痕が残る道路で、はねられた犬はなんとか立ち上がろうとするが叶わず、そのまま動かなくなった。
目だけがしぱしぱとまばたきを続けていた。
*
「あの車、何事も無く行っちまいやがった」
信号が変わり真っ先に犬の元へ駆け寄った青年は犯人の後ろ姿を睨み付ける。
「やだ、かわいそう」
いつもより化粧を厚く塗ったもののまだ表情に幼さを残すこの女性は、
二度三度目を逸らしつつもその犬のことを気遣っている。
「おい大丈夫なのか」
ピッチリと髪を揃えた男が覗き込みながら安否を伺う。
トムともう一人の友人は言葉を発することなく少し遅れて合流を果たす。
はねられた犬は動かない。
片方の後ろ足が潰れて血まみれになっている。
外傷はその一個だけだが、はねられた衝撃はもっと大きい。
いの一番に駆け寄った青年が犬の方に目を向けて言った。
「きっと内臓もダメージを受けていて動けないんだろう」
その時ようやく、交差点の対岸で事故の一部始終を見ていたと思われる集団が近付いてくる。
彼らは目配せはするものの足を止めることはなかった。
この現場に立ち会った時、あなたならどうしたか?
トムは少しためらいはしたものの、この犬を助ける決意をした。
「病院に連れて行こう。まだ間に合うはずだ」
それがこの物語の主人公、トムの第一声。
前髪を立てた青年も一度はトムの意見に賛同した。
しかし残りの仲間が制止をかける。
「駄目だ、面接までもう時間がない。
こいつを助けていたら遅刻してしまう」
彼らは皆下ろし立てのスーツに袖を通している。
これからこの国の自動車産業を支える大企業に集団面接に行く途中。
遅れることがあってはならない。
「大丈夫、急げば間に合う」
トムは反論する。
だが友人も食い下がる。
「駄目だ、どうやって連れて行く?
スーツを汚してしまったら替えが用意できない」
「そんなこと言ってる場合か! 死にかけてるんだぞ!」
トムは友人に向かって激昂した。
まばたきを繰り返すごとに、いつの間にか犬の目からは血が流れ出ていた。
頬をバシンと叩かれる。
友は目を見つめながら諭すように言った。
「そんな場合だ。
たかが犬一匹のために将来を棒に振る気か。
そいつは助けたら金の在処を教えてくれるのか?
そいつが実は面接に行く会社の社長の愛犬だったとか、そんな都合の良い偶然でも望んでいるのか?
大局を見ろ。
その犬を助けても誰も喜ばない。
残るのはお前の中の『犬を助けた』というちっぽけな虚栄心だけだ」
トムは右の頬をさすりながら黙り込む。
この友人の言葉は正論だ。
学生時代は一度も勉強で勝つことができなかったし、勉強以外の様々な場面でいつも彼の言うことが正しかった。
これはいじわるをしてるわけではなく、トムのことを考えての優しさであることをトム自身が一番分かっている。
彼はトムの家のことも、家族のことも知っている。
犬を飼う経済的な余裕が無いことも考えての助言。
「助けた後はどうする?
そいつは首輪をしていない。
治療費だけ出してほったらかすのでは、今見捨てるのと同じことだ」
その時、交差点の信号が点滅し始めた。
トム以外の友人は4人とも、犬を挟んで対岸側に足を向けている。
最初は犬を助けることに賛成した彼も、だ。
「車のナンバーは控えてるから、歩きながら警察に連絡しよう」
そう言ってケータイを取り出し歩き出す。
女の子も「ごめんね」とだけ言い残し、後ろ髪をひかれながらも歩き始める。
事故の一部始終を見ていながら一言も声を出さなかった彼も後に続く。
信号が赤に変わった後も説得を続け、強引にトムのスーツを引っ張って全員が歩道に辿り着き、
交差点には赤い涙を流し続ける一匹の犬だけが取り残された。
以上ですん!?
ちょっとわけありな作品なのでここで止めー⊂(^ω^)⊃
トムって名前に思うところがある人は振り返ってみてね。
続き読ませろーwwって思った人は左上の小説タブから「イズマイン」
ってタイトルの小説を探して読んでみてね。
途中で止めた理由はもう一つありー⊂(^ω^)⊃
結局犬は助けるべきだったのかどうか、読者のみなさんに考えてほしかった!
だからオチだけ削って載せました。
いずれ完成版を載せる日が来ると思うので、その時までにちょろっと考えといてね☆