わああああああああああ………

水沢君、その言い方、絶対岸谷さん誤解したぞ!だめ、どうしよう、うわ、えっと、一緒に図書館まで行ってくれるのかな、それは助かるけど学校から30分くらいかかるって言ってなかったっけ、いいのかな。ていうか家?家連れてってくれるの?それはだめ、だめだと思う、家の前で待っている、のもだめ、恥ずかしすぎる!

「おー、何水沢、ちゃっちゃと行ったと思ったらなんでまだいんの?」

「教室よってた」

「ああ、そう」

加藤君が来た。そうか、加藤君は水沢君と一緒に陸上部に行ってたんだった、どうしよう。加藤君変に思わないかな。

「ああ、川島、悪い道ふさいだ。通って」

そういって加藤君が道をあける。水沢君も一緒によける。あれ?これは行けって事かな。

「ありがとう」

小声になっちゃった声でお礼を言って二人の横を通り過ぎる。

加藤君と帰るのかな。一緒に行ってくれるはずだったのに、なしかな。私迷惑そうな顔とかしてなかったよね。気が変わっちゃったのかな。

ああやだ、別にいいじゃないか、こんな細かいことでいろいろ考えるなんてしないようにしたいと思っているのに。

二人が話している声が聞こえるのがなんとなくいやで、急いだ。さっきあんなに舞い上がっていた自分が自覚できていやだった。

教室に帰ったら、川島が岸谷と話していた。岸谷は男子とも平気で話すいいやつだが、自分が情報を持っていないと気がすまないやつだから、下手に扱うと面倒だ。まあ、できるだけ話せることは話しておけば味方もしてくれるのだから、そうしよう。ただ、俺と川島に見えているもののことは、話したら広められる、絶対。

「川島―、お待たせー」

川島が一瞬びくっとしてから振り向いた。そして岸谷にごまかすような言い方をしてかばんを持ってくる。俺はあえて岸谷の勘違いを助長するようなことを言ってやる。

「川島、かばん俺んち置いてく?チャリでいけばもっと楽だぞ。二人乗りはあぶねえからしないけど」

川島がまたびくっとして足を止める。だがそのまま、止まったことがただ机の間をすり抜けるためだけだったような様子で歩いてきた。

「あ、ううん、いいよ、悪いし自分でいける」

これは一人で行くといいたいのだな、そうはさせない。

「一緒行けばいいじゃん、ちょっと家の前で待ってくれ。じゃあな岸谷」

そういうと、俺は川島が教室の扉にたどり着いたタイミングで歩き出した。背後で川島がうろたえた声で岸谷に「じゃあねー」なぞといっている。

ここまで言っておけば岸谷はきっちり信じて勘ぐって回りに言いふらして俺と川島が話していてもそういう話題だとしか思われない状況を作ってくれるだろう。

頼むぞ。

掃除が終わって教室で待っていたら、一緒に掃除当番だった岸谷さんが声をかけてきた。

「川島さんまだ帰らない?」

私今日面談一番だから机面談用に動かせって言われているんだけど、といってくる。他意はなさそうだが、私はちょっと慎重に答える言い方を探す。

「あ、うん、今日、図書館行ってみようと思って」

「え、今日図書館面談で使ってんじゃない?」

「ああ、ううん、市の図書館」

いいながら、水島君が来る前に出て行かないと、と思っていた。クラスの人たちに男子と二人で帰るというのを知られるのはちょっといやだった。

「あ、本当。そういえば水沢君が図書館の近くの家じゃなかったっけ」

うわ!と、ぎゃ!の入り混じった悲鳴を心の中であげた気がした。これははぐらかすべきか?それとも、あとで一緒に歩いているところを見られた場合にごまかすためにそのことは知っているということを示すべきか、それとも一緒に行くことまで言うべきか、中間の水沢君の家のほうまで行くというべきか。

「川島―、お待たせー」

すべての思考を無駄にする天の助けか状況破壊者か水沢君かが来た。

「え、なに、川島さん、水沢と待ち合わせだった?」

「待ち合わせというか、図書館の行き方教えてくれるって。こないだ話してたんだ」

できるだけなんでもないように聞こえるように答えてかばんを持ち上げた。

「ううんー、こっちのほうがごめんねー、ご案内ありがとうー」

水島君は誰とでも仲がいいから、多分おかしいと思われないで済む、と思いたい。