この作品で史上最高齢の83歳で米国アカデミー賞主演男優賞を獲得したアンソニー・ホプキンスと、私の父親が同い年と言うこともあり、私の年老いた父親と共に、6月2日(水)に、滋賀県大津市の大津アレックスシネマまで、劇場鑑賞に出向いて来ました。
今年度の26本目の劇場鑑賞作品。
(※今年度の大津アレックスシネマでの15本目の劇場鑑賞作品。)
率直な感想としましては、
サー・アンソニー・ホプキンスが主演男優賞でオスカーを獲得したのも納得の演技が輝る映画であり、作品の内容も、介護者視点よりも、むしろ認知症患者本人の視点から見た内容である点で非常に珍しい作品でもあることから、サスペンスフルな展開のため、時間が経過するのもついつい忘れてしまうほどの素晴らしい出来映えでした。
※本年度・第93回アカデミー賞主演男優賞(アンソニー・ホプキンス)、脚色賞(フロリアン・ゼレール / クリストファー・ハンプトン)受賞作品。
「認知症患者の視点を疑似体験する作品(21.6/2・2D字幕)」
ジャンル:人間ドラマ
原題:The Father
製作年/国:2020年/イギリス=フランス合作
配給:ショウゲート
公式サイト:https://thefather.jp/
上映時間:97分
上映区分:一般(G)
公開日:2021年5月14日(金)
監督:フロリアン・ゼレール
脚本:フロリアン・ゼレール / クリストファー・ハンプトン
キャスト:
アンソニー・ホプキンス / オリビア・コールマン / マーク・ゲイティス / イモージェン・プーツ / ルーファス・シーウェル / オリヴィア・ウィリアムズ
【解説】
名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じ、「羊たちの沈黙」以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した人間ドラマ。
日本を含め世界30カ国以上で上演された舞台「Le Pere 父」を基に、老いによる喪失と親子の揺れる絆を、記憶と時間が混迷していく父親の視点から描き出す。
ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。
そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。
しかしアンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張。
そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない。
現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、アンソニーはある真実にたどり着く。
アン役に「女王陛下のお気に入り」のオリビア・コールマン。
原作者フロリアン・ゼレールが自らメガホンをとり、「危険な関係」の脚本家クリストファー・ハンプトンとゼレール監督が共同脚本を手がけた。
第93回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演女優賞など計6部門にノミネート。
アンソニー・ホプキンスの主演男優賞のほか、脚色賞を受賞した。
(以上、映画.comより、引用抜粋。)
人の寿命が延びた現代において、避けて通れないのが認知症問題。
認知症をテーマにした作品は多く、本作もその1つであり、年老いた父と、介護する娘の物語。
ですが、認知症患者のみが知りうる現実と幻想が交錯する不条理な世界へと、これほどまでに強く観客を引き込む作品はそうは滅多にないでしょうね。
精密な映像演出とリアルな演技の力の賜物と言えるでしょうね。
本年度の第93回米国アカデミー賞で、アンソニー・ホプキンスが主演男優賞、監督・脚本のフロリアン・ゼレールが脚色賞でオスカーを獲得した一本であったため、期待値のハードルをかなり高くして鑑賞に臨みましたが、期待を裏切らない素晴らしい出来映えの映画でした。
そもそもはフランスの小説家、劇作家でもあるフロリアン・ゼレール本人が自身の母親の介護経験の際の逸話などを元に戯曲化した、自らの戯曲の映画化であり、本作が長編映画の初監督作品でもあるそうです。
ロンドンで独り暮らしをするアンソニー(アンソニー・ホプキンス)のアパートを、娘のアン(オリビア・コールマン)が訪ねて来た。
彼女は「愛する人とパリに住む」というのですが、そんな或る日、リビングにアンの夫だという男が現れて、「ここは自分とアンの家だ」と告げるのでした。
違う俳優が、何故だか同じ名前を名乗る。
1つの場面が行きつ戻りつする。
こうしたサスペンス的な仕掛けは、観客の「登場人物」や「時間」の認識を奪う。
困惑の中で思い至ったのは、「これが記憶を失うということか」と。
じりじりする焦燥感と恐怖を、私たち観客自身がアンソニーの立場になって味わうことになるのでした。
更に、フロリアン・ゼレール監督は、「ここはどこか」をも曖昧にしていく。その間、カメラはアンソニーの部屋からほとんど動かない。
高齢男性の重厚な住まいのはずが、シーンごとに微妙に色彩を変え、いつの間にか娘アンの現代的なアパートにと変貌する。
そして遂には、全く別の「どこか」になるといった見事な映像演出で、観客も当惑せざるを得なくなるのでした。
すべてはこの、別の「どこか」で起きた出来事だったのかと、観客も、衝撃に襲われてしまうことでしょう。
認知症になった父アンソニーが常に気にするのは自分の腕時計。
おそらくこの腕時計自体が「記憶」や「時間」が混乱する本作品の比喩的表現になっているのでしょう。
加えて、愛聴するクラッシック音楽のCD。これの音飛びが意味するところもまた然り。
不確かになった世界で、人間の脆さをさらけ出すのが名優サー・アンソニー・ホプキンスの本領発揮。
あの『羊たちの沈黙』(1990年)のレクター博士などの当たり役から、アンソニー・ホプキンス本人に「冷静で確固たる知性の持ち主」とのイメージを抱いている人も多いはず。その彼が周囲の人を傷付け、自らも傷付き、観た事もない何者かに変貌してしまう。
フロリアン・ゼレール監督が、あえて、主人公の年齢をアンソニー・ホプキンス本人と同じ81歳(撮影時)、役名も「アンソニー」としたことが、ここで大きな意味合いを持つこととなる。
二人のアンソニーの虚構と現実がピタリと重なり、いつしか演技であるということさえも忘れてしまうからである。
「私は誰なんだ」。放心して呟く姿はあまりにも痛ましく、悲しい。
劇中で目につく、大きな顔のオブジェはポーランド出身の美術家のイゴール・ミトライ作の”LUCIDI NARA"
ミトライの作風は彫刻の一部を大胆に切り取って、実際の古典彫刻がこうむっている損傷を強調するといったポストモダン的スタイルらしいと聴く。
これも、フロリアン・ゼレール監督が、高齢で認知症の父アンソニーを重ね合わせて観ているという暗喩的な仕掛けの一部であろうか。
こういった非常に重い題材ながらも、全体的にミステリー的な要素もあるのでエンタメ的にも堪能出来る作品となっています。
私的な評価と致しましては、
サー・アンソニー・ホプキンスの本領発揮の演技もさることながら、フロリアン・ゼレール監督が初の長編監督デビュー作とは思えないほどの巧みな映像演出には痺れてしまいました。
約100分弱の映画ながら、息をつく間もないほどにサスペンスフルであり、観ている間には、その時間の経過さえも忘れてしまうほどの素晴らしい出来映えでした。
つきましては、五つ星評価的には、映像、演技共に、まさに文句なしの★★★★★(100点)の満点評価が相応しい作品かと思いました次第です。
○本年度アカデミー賞受賞!映画『ファーザー』本予告
VIDEO
今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。