『ジョーカー』(2019年) #イオンシネマ草津 #ホアキン・フェニックス #ジョーカー衝撃 | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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「バットマンの宿敵の哀しき誕生譚(19.10/4・2D字幕)」

ジャンル:人間ドラマ

原題:JOKER

製作年/国:2019年/アメリカ

配給:ワーナー・ブラザース映画

公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/

上映時間:122分

上映区分:R15+

公開日:2019年10月4日(金)

監督:トッド・フィリップス

キャスト:

ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、ビル・キャンプ、フランセス・コンロイ、ブレット・カレン、グレン・フレシュラー、ダグラス・ホッジ、マーク・マロン、ジョシュ・パイス、シェー・ウィガム ほか

 

 

 

【解説】

「バットマン」の悪役として広く知られるジョーカーの誕生秘話を、ホアキン・フェニックス主演&トッド・フィリップス監督で映画化。

道化師のメイクを施し、恐るべき狂気で人々を恐怖に陥れる悪のカリスマが、いかにして誕生したのか。

原作のDCコミックスにはない映画オリジナルのストーリーで描く。

「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。

これまでジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、ジャレット・レトが演じてきたジョーカーを、「ザ・マスター」のホアキン・フェニックスが新たに演じ、名優ロバート・デ・ニーロが共演。

「ハングオーバー!」シリーズなどコメディ作品で手腕を発揮してきたトッド・フィリップスがメガホンをとった。

 

第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、DCコミックスの映画化作品としては史上初めて、最高賞の金獅子賞を受賞した。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 

 

 

 

▲『ジョーカー』を昭和チックなポスターにしたらこんな感じでしょうか?

 

 

試写会のTwitterなどでの事前評価が高かったので、かなりの期待をして、滋賀県草津市のイオンシネマ草津に公開初日に鑑賞に出向きましたが、その予想をも遙かに超えた凄い作品でした。

 

 

アメコミヒーロー・バットマンの宿敵として有名なジョーカーの誕生譚として、一体どの様に生まれたのかを、原作コミックにはない独自の視点と解釈で描いた作品ですが、一切のエンタメ的な虚飾を排除した容赦ない描写で綴っていました。

 

 

これまでアメコミの悪役(ヴィラン)の誕生秘話を描いた作品も多くありますが、そういった作品とは全く異質な衝撃作と言って良いでしょうし、今年、いや2010年代を代表する映画のひとつと言って過言ではない傑作でした。

また、バットマンの単なるスピンオフ映画を超えた独立した作品としても、結実していました。

 

 

映画は大道芸人のアーサー(ホアキン・フェニックス)の辛い日々を積み重ねていきます。

 

 

アーサーは、バットマンの舞台でお馴染みのゴッサム・シティで年老いた母親と暮らす、孤独で心優しい青年でした。彼は「笑顔で他人を和ませなさい」という母の言葉に従って、ピエロとして生計を支え、コメディアンを目指して必死に生きてきた。

 

 

しかし、街では少年達にからかわれ暴行を受け、職場では上司にさげすまされ、帰宅すると精神を病んだ母親が待っている。同じアパートの住人の女性とのささやかな交流はあるものの、アーサーの心は社会から孤立し、次第に悪に染まっていくのでした。

 

 

時代は1981年に舞台設定されてはいますが、そこで社会問題になっている格差社会による貧富の差や予算縮小による社会保障の削減は、むしろ現代社会を色濃く反映しているようでもありました。

アーサーは、のちにバットマンとなるブルース・ウェイン少年。その父トーマス・ウェインが経営する大企業のエリート証券マン達を思わず射殺してしまうのですが、そんなアーサーを、社会に不満を持つ危険分子達がピエロ姿の男を勝手にヒーローとして祭り上げるのでした。

 

 

反体制・暴力的な作風が、60~70年代のアメリカン・ニューシネマっぽい作品を彷彿させる中、その象徴的な作品のひとつ『タクシードライバー』(1976年)で狂気の主人公トラヴィス役を演じた、ロバート・デ・ニーロも本作品に重要な役どころで出演しており、心の病に罹っているところなど、ところどころにアーサーが『タクシードライバー』の主人公トラヴィスとも重なって映っていました。

 

 

次第にどこからがアーサーの妄想なのか分からなくなるあたりの脚本も心憎く、あのSF映画の『メッセージ』(2016年)の音楽担当でもあった、ヒルドゥル・グーナドッティルによる独創的な劇伴をはじめ、挿入曲に、クリームやフランク・シナトラの楽曲を使用するなど気の利いた作りとなっていて、とても素晴らしかったです。

 

 

しかしながら、この作品の最大の見どころは、映像でも音楽でもなく、ホアキン・フェニックスの怪演の一語に尽きました。

 

かなりの減量をしたであろう肉体改造にも驚かされましたが、怒りと悲しみが同居した、泣きながら笑っているような病的な表情、笑い声に心が奪われてしまいました。

 

 

また、アーサーが解き放たれた後の、大階段を下る恍惚のダンスシーンが忘れ難いですね。

 

 

 

『ダークナイト』(2008年)と、故ヒース・レジャーが、史上最高のバットマン映画とジョーカーだという人も多いとは思います。

私にとっても、故ヒース・レジャーのジョーカーは永遠の存在ですが、本作品のホアキン・フェニックスはその彼とはまた違ったジョーカー像を呈示してくれて、その怪演ぶりは余裕で肩を並べられるほどだと実感しました。

 

▲『ダークナイト』(2008年)の故ヒース・レジャー演じるジョーカー

 

▲ホアキン・フェニックス演じる『ジョーカー』

 

殺人犯アーサーへの同情心や共感をいざない、凶悪なジョーカーになるのも無理は無いと思わせる点で、その悪影響を懸念し危惧する声もあるそうですが、それよりもむしろ考えるべきは、この映画がこの時代に作られたその意味でしょうね。

心優しき道化師を悪の化身にしたものは何なのか?

今のこの世も、誰もがジョーカーになり得るのである。

 

 

特に、PTSD障碍などの心の病に罹った事のある私のような者や、格差社会における貧富の差に苦しんでいる者など、謂わば、社会的弱者から観れば、かなり本作『ジョーカー』の主人公アーサーに同情的になってしまう部分も大きいとも感じられました。

 

かといって、主人公アーサーがジョーカーへと変貌を遂げる事を肯定は出来ないですが、全部が全部、否定することも出来ないでしょう。

主人公は、自ら悪の道を選んだわけではないのです。

悪にしか生きる選択肢がなかったのである。生きるために悪に辿り着いただけであり、それ程に、主人公アーサーの受難は、壮絶であって救いがないものであるのでした。

 

 

この様なアメコミ映画のリアル路線は、今に始まった訳ではないですが、ここまで社会系の人間ドラマ仕立てのシリアスなドラマになると、エンタメ路線を期待する原作コミックファンの心境はいかほどでしょうね(苦笑)。

 

実際に、アメコミファンの中には酷評している映画評も一部で散見はしているようですが、概ね、ホアキン・フェニックスのジョーカーの怪演を絶賛する映画評が多く、先頃に開催されたベネチア国際映画祭の最高賞の金獅子賞を受賞したのも頷ける快作。

ホアキン・フェニックスのジョーカーは、来年のアカデミー賞の主演男優賞にも当然ノミネートされ、受賞を本命視されることでしょうね。

 

『ハングオーバー』シリーズなどのコメディを撮ってきたトッド・フィリップスだけに喜劇のもつもうひとつのシリアスな哀しい顔も熟知しているのでしょうね。

 

 

香港当局が香港市民の暴動を鎮圧させるべく「マスク禁止令」を発令し、その禁止令に反対する反体制派の市民が、この『ジョーカー』を真似てピエロのマスクを被っているらしく、まさしく映画を先取りしているのか時代を先取りしているのか、実に面白い。

 

また、ハリウッドでは、『タクシードライバー』などを撮った巨匠のマーティン・スコセッシ監督が「(MCUなどの)アメコミ映画は映画ではない。」と発言し波紋を呼んでいるみたいですが、そんなアメコミが原点の映画でも、こんなにも凄い演技力で魅了する映画があるのかと、私は驚愕した次第です。

 

私的な評価としましては、

今年、いや2010年代を代表する映画のひとつと言っても過言ではない傑作と思いましたので、五つ星評価的にも、★が足りないくらいに文句なしの★★★★★(100点)の満点評価の作品だと思いました。

 

『アベンジャーズ/エンドゲーム』と本作品では、方向性は180度違いますが、両作品が今年の双璧をなす作品だと思いました次第です。

 

この両作品に、年末公開予定の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』が面白味がある出来映えで、これらに食い込んで来てくれれば、映画ファンとしては御の字で嬉しい限りですね(笑)。

 

●映画『ジョーカー』本予告

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。