『斬、』(2018年) #斬 #京都シネマ #塚本晋也 #池松壮亮 #蒼井優 | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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~映画鑑賞雑記帳 &京都・滋賀の季節の歳時記 & 読書などのお気儘ライフ~

12/21(金)に、時代劇好きな父親を誘って、ミニシアターの京都シネマで鑑賞。

今回は、特に、作品のチラシの情報さえも読まず、事前の予備知識ゼロの白紙の状態で劇場鑑賞に臨んだ為か、よく意味合いが解らぬまま鑑賞し、小難しい映画といった印象のみが残ってしまいましたが、塚本晋也監督が挑んだ初の時代劇映画『斬、』について、取り急ぎ、ご紹介したいと思います。

 

 

「暗喩の意味合いが解らず小難しい印象に感じた時代劇(18.12/21)」

ジャンル:時代劇

製作年/国:2018年/日本

配給:新日本映画社

公式サイト:http://zan-movie.com/

上映時間:80分

公開日:2018年11月24日(土)

監督:塚本晋也

キャスト:

池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也

 

PG-12

 

 

【解説】

「鉄男・・・」「野火」「六月の蛇」の塚本晋也監督が、池松壮亮と蒼井優を迎えて描いた、監督、出演、脚本、撮影、編集、製作を務めた自身初の時代劇。

250年にわたって続いてきた平和が、開国か否かで大きく揺れ動いた江戸時代末期。

江戸近郊の農村を舞台に、時代の波に翻弄される浪人の男と周囲の人々の姿を通し、生と死の問題に迫る。

文武両道で才気あふれる主人公の浪人を池松壮亮、隣人である農家の娘を蒼井優が演じ、「野火」の中村達也、オーディションで抜擢された新人・前田隆成らが共演。

 

「沈黙 サイレンス」など俳優としても活躍する塚本晋也監督自身も出演する。

 

2018年・第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 


この映画の鑑賞後、作品の意図する意味合いがイマイチよく理解出来なかったので、映画秘宝などでの塚本晋也監督のインタビュー記事を拝読しますと、監督自身の初の時代劇映画という事で、あのレイテ島戦記を描く『野火』と地続きの、今作は「非暴力」を主題にした「人を斬れない武士」である幕末期の浪人・都築杢之進役に池松壮亮さんを主演に迎えての反戦をテーマに描いた時代劇作品との事でした。

 


一般的な、所謂、痛快時代劇とは全く異なる、ある種、時代劇の体裁を衣にした反戦映画なのでしょうが、なにぶんと私も父も、事前情報を全く容れずに鑑賞に臨んだ事もあり、各配役や映画自体の暗喩の意味合いがイマイチというか、ほぼ全く理解出来ぬまま鑑賞していましたので、途中までは、「暴力の連鎖の無意味さ」を説く主人公の言葉や、その「人を斬れない武士」という存在からも、暗喩の意味合いは、もしかして、<自衛隊の存在意義>を主題にしているのかと思って鑑賞していましたが、それとは全く真逆な意味合いとして、右傾化しつつある現政権に対して警鐘を鳴らす意味合いを込めた反戦映画の様でした。

 



開国に揺れる幕府のために有能な武士を探して旅していた澤村次郎左衛門(塚本晋也さん)に、村の若者で、村娘ゆうの弟・市助(前田隆成さん)との木刀を使った稽古中にその腕前を見込まれて、江戸に向かう組の一人として引き入れられた、主人公の浪人・都築杢之進(池松壮亮さん)。

 

 

村を発つ直前に問題が発生。源田瀬左衛門(中村達也さん)率いる無頼派の浪人集団が村はずれの洞窟に居座ったのでした。

村人達は気味悪がって退治するように杢之進に依頼するのでしたが、杢之進は何の危害を加えられた訳でもないため話し合いで解決しようと図るのでした。

実際に、浪人集団の源田瀬左衛門たちは「悪い奴にしか悪さをしない」をモットーにした輩であり、村人達に危害を加える気など微塵もない様子でした。

杢之進は話し合いの結果を伝えるのですが、それでは村人達は納得せず、引き続き浪人集団を退治するように懇願するのでした。

 

 

そして、村の若者・市助と浪人集団との間に起きた、小さないざこざを切っ掛けに、今度は、澤村次郎左衛門が源田瀬左衛門を残して浪人集団を全員斬り殺す事件を引き起こすのでした。

 

 

浪人集団が退治されたことで村人達は喝采をあげるのでしたが、そこから悲劇が起こるのでした。

 

復讐に燃えた源田瀬左衛門が他の仲間を引き連れて村に戻り、村のなかの一家を惨殺してしまうのでした。

杢之進は惨殺された一家で唯一生き残った村娘ゆう(蒼井優さん)から仇討ちを懇願されるのですが、それでも躊躇するのでした。

 

 

もしも仇討ちが成就したとしても、その憎しみは連鎖し、また同じことを繰り返されるからでした。

 

といった、あらすじの、決して、所謂、王道の痛快時代劇とは全く違う趣の映画でした。

 

 

その後、劇中、杢之進は結局、澤村次郎左衛門の導きで、源田瀬左衛門ら残党が巣食う洞窟へと仇討ちに向かうまでは良かったのですが、いざ戦う段になると、杢之進は、真剣の日本刀を使わずに、傍にあった棒っ切れで戦い、徹底した「非暴力」で臨み、恋心を抱く村娘ゆう(蒼井優さん)さえも彼らに陵辱され性的暴行を受けている状況でもなお、杢之進は何もする事が出来ないのでした。

 

 

一般的な時代劇の筋書きの定石では、こういった厳しい状況・局面を打破し克服することでドラマチックな展開を生み、それがカタルシスともなるのですが、時代劇を彩る仇討ちの場面ですら『斬、』では徹底的にこの「非暴力」という状況を貫き通す辺りは、それを克服することが容易であればヒーロー然とするのでしょうが、安易に、それが克服出来ないことを描く事でなお、絶望的にも近い右傾化に向かいつつある今の時代の危険性に警鐘を鳴らしているのかも知れないですね。

 



また、映画自体は冒頭の刀鍛治のシーンから始まり、日本刀の真剣が鞘から抜かれる際に放つ風斬り音など、その重量感溢れる刀の音にこだわる塚本晋也監督だけあってダイナミックな音響や劇伴に呼応するかの様な演出は迫力があって凄かったのですし、都築杢之進役の池松壮亮さんの運動能力の高さによる殺陣の上手さは元より、剣豪の澤村次郎左衛門役を演じるに辺り、あの北辰一刀流玄武館に長らく志願して稽古を積んだらしい塚本晋也監督の殺陣の演技もなかなか素晴らしかったです。

 


殺陣を美しく魅せるカメラワークは、全体像を撮さないだとか、ブレがあったりとイマイチ惜しまれる点もあった様な気もしましたが、初の時代劇映画としてはなかなか良かったとは思いました。

 



ただ、ストーリー展開の上で、あまりにも「非暴力」に対する暗喩にこだわるが故に、「天道虫が上へ上へと登っていく」が如くといった比喩を使いながら、山奥への逃避行動という形でのラストへの着地点があまりにも不自然な締め方で尻切れトンボ的な感が否めず、主題たる「非暴力」との肝心の答えを残さぬまま、観客にその答えを委ねて丸投げしたままになっているのが、どうにも勿体なかったですね。

 

 

また、所謂、一般的なありきたりなヒーロー然とした勧善懲悪型の痛快時代劇とは一線を画す時代劇であり、主題の「非暴力」を暗喩とした反戦映画である点を一切知らずに、観に行くと、私たちのように、完全に呆気にとられてしまう作品でしたので、全く白紙の状態で観るのではなく、事前に映画のチラシなどで簡単な事前情報を知っておいた方が良い部類の時代劇映画かも知れないですね。

 



私的な評価としましては、
塚本晋也監督による、徹底したメッセージ性の濃い「暴力の連鎖の無意味さ」や「非暴力」といった暗喩が込められた反戦映画であるが故に、一般的な痛快時代劇に観られるようなエンタメ性に乏しい点で、そもそも商業的な娯楽映画としては成り立たない作りである点。

その上に、更に、肝心要の主題たる「非暴力」という訴求点が、ラストの着地点があまりにも不自然な締め方で尻切れトンボ的にぼやけてしまった感が否めず、確固たる答えを提示しないまま観客にその答えを丸投げしたままになっていた点も非常に勿体なかったでした。

理想としては、ラストの着地点としては、やや説教臭くなるかも知れないですが、杢之進と互いに恋心を抱いていた村娘ゆう(蒼井優さん)とが、再度、向き合って「非暴力」の在り方の帰結としての答えを語り合うようなシーンが欲しかったですね。

従いまして、

私が当初この作品の持つ暗喩の意味合いを全く理解出来なかった事を以て、この作品を低評価にするつもりは毛頭ありませんが、非常に勿体ない幕切れだったりした点や、あえてなのか訴求点が安易には理解し難い様な観念的な構造の時代劇映画になっていた点などを勘案しまして、五つ星評価的には、★3つ半の★★★☆(70点)くらいの評価が相応しい作品かと思いました次第です。

 

●映画『斬、』予告編

 

 

 

 

 

 

 

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クラウドファンディングで微力ながらも私も支援していた、大分県のBeppuブルーバード映画祭実行委員会さんから、主催の別府ブルーバード劇場の岡村照館主の直筆の御礼状とともに、リターン品である、別府ブルーバード劇場の特製タオルが、可愛い「くまモン」の切手を貼った小包で届きました♫

ちょうど良いXmasプレゼントになりました。

 

 

森田真帆さんはじめご関係者の皆様方どうも有り難うございました。

メリクリ&どうかよいお年をお迎え下さい。

 

来年こそは「災」がある年ではなく「福」多い一年でありますように。

 

 

 

 

 

 

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今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。