『よりよき人生』(2011年) | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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「フランスの労働市場の現状(13.3/31・劇場)」
ジャンル:人間ドラマ
原題:UNE VIE MEILLEURE
製作年/国:2011年/仏=カナダ
配給:パンドラ
上映時間:111分
公式サイト:http://yoriyoki.net/
公開日:2013年2月9日(土)
監督:セドリック・カーン
出演:ギョーム・カネ、レイラ・ベクティ、スリマン・ケタビ、ブリジット・シィ
ほか

よりよき人生・チラシ2

 

よりよき人生・チラシ裏




京都市内の単館系ミニシアターで鑑賞。

この作品は、監督が、フランス最高峰の映画賞の一つのルイ・デリュック賞に輝く『倦怠』やカンヌ映画祭出品時に物議を醸した衝撃作『ロベルト・スッコ』の、フランスの若き名匠セドリック・カーンの作品という謳い文句から、このフランス人監督さんの映画は初体験ながらも、特に予備知識もなく鑑賞に臨みました。

よりよき人生・ヤン&スリマン1

お話の流れ的には、
学食の<コック>のヤン(ギョーム・カネ)と、ヤンが<シェフ>の採用面接で落ちた店で知り合った、9歳の息子を持つウェイトレスでシングルマザーのナディア(レイラ・ベクティ)は、充分な才能と熱い情熱、愛と夢、そして僅かながらの資金を持っていました。

よりよき人生・ヤン&ナディア2 
ですが、ヤンの発案から、湖畔のレストランを買うために全てを賭けることを決意したのは良いのですが、頭金を用意する手段として、数社の消費者金融に手を出し、瞬く間に多重債務者になってしまったのでした。

よりよき人生・ナディア&スリマン1

その状況から抜け出すためには、ナディアは、海外で働かねばならなくなり、一方、ヤンとそしてナディアの息子・スリマン(スリマン・ケタビ)はレストランを守るためにその場に留まらなくてはならなくなるのでしたが、容赦なく殺到する債権者たちや、多重債務者に対して無慈悲なフランスの制度、そして行き着き間もない日々に一家は追われるのでしたが・・・。

よりよき人生・ヤン&スリマン4

といった、一見、ドキュメンタリータッチの様な映画でした。

よりよき人生・ナディア&スリマン2

フランスにおいては、銀行は、より裕福な顧客に対しては最適なレートを提供するのですが、現金が乏しい貧しい貧困層にはその様な扱いはしてくれないらしいのでした。
そこで、貧しい貧困層は、クレジットで倍額になるような、結局リボ払いをせざるを得ず、法外な金利から、すぐに抜け出すことが出来ない借金地獄の悪循環に陥るといった実例が描かれており、現在の日本の銀行や、日本の法改正後の消費者金融の金利の在り方とは多少なりとも状況や上限額などが違う様で、興味深かったですね。

よりよき人生・ヤン&ナディア1

とは言え、ヤン(ギョーム・カネ)も、フランスにおいても、今の日本の労働市場と同じく、地道に、就活しても、<シェフ>として、なかなか雇ってくれる店舗も全くないのは理解出来ますが、いざ、肝心の<自分の城>たる湖畔のレストランを手にしようとするのにも拘わらず、予算の都合とは言え、消防署の営業認可の検査で引っ掛かる様な、予算軽減のための、手抜き工事はお粗末過ぎでしたし、あまりにも考え方が、浅はか過ぎましたね。

よりよき人生・ナディア&スリマン3

ですが、ヤン(ギョーム・カネ)に、シングルマザーのナディア(レイラ・ベクティ)が1人息子のスリマン(スリマン・ケタビ)を預けて、単身海外へ出稼ぎに行ってから、約1年間も放ったらかしになされた状態にも拘わらず、義理の父親として、その責務を果たそうと尽力する姿には心打たれるところはありましたね。

よりよき人生・ナディア&スリマン2

ヤンに預けっぱなし状態にされたナディアの息子・スリマンを連れて、ハンバーガー片手に、スタジアムの外からサッカー・ワールドカップを歓声だけで観戦気分を味わったり、船に乗せてもらって、スリマンに海釣りを教えたりと、お金がないなりにも、父親役を担ってあげているヤンの姿を観ていると愛おしくもなりましたね。

よりよき人生・ヤン&スリマン5

得てして、この映画の脚本家であり監督のセドリック・カーン監督は、資本主義経済の下、昨今の自由市場原理は、低所得者帯の貧困層を更に極貧層に助長するマシーンと化していることに警鐘を鳴らしてはいるものの、それに留まらず、その貧困層にいたるまでの、彼ら彼女らの家族の形成やその維持の大切さについても問題視しているかのようでもありましたね。

資本主義経済の下、昨今の自由市場原理は、皆に公平にチャンスの機会を与えられている訳ではなく、裕福な者には、より裕福に、低所得者帯は、その境遇から抜け出られないといった、正規雇用者と非正規雇用者との関係など、フランスに限らず、日本においても問題視されなければならない経済問題をも捉えているようで観ていて辛くなる映画でもありましたね。

ですが、その点、ヤン(ギョーム・カネ)が、最終的に採った手段の善し悪しは別に致しましても、最後まで、義理の父親としての責務を果たそうと尽力した末の結論としては、今後、諸問題を抱えるとしても、アレはアレで良かったのかも知れないですね。

私的な評価と致しましては、
当初は、フランスにおける多重債務者に陥った際の実例をドキュメンタリータッチに描いた様な、非常に重く暗い映画にも思いましたが、主人公ヤンが、次第に、義理の父親として目覚めていく姿の過程を観ていると心打たれる部分もあったのは事実でしたね。
ですが、映画自体は、最終的には落ち着きを見ましたが、フランスの労働事情や経済事情を知ることが出来て大変勉強にはなったのは良いのですが、観ていて非常に救いようがない様な映画でしたので、フランスの若き名匠セドリック・カーン監督には悪いですが、★★★☆(70点)の評価とさせて頂きました。


●映画『よりよき人生』劇場予告編



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