「前向きな引きこもり(13.2/19・劇場)」
ジャンル:人間ドラマ
製作年/国:2012年/日本
配給:ファントム・フィルム
時間:120分
公式サイト:http://minasan-movie.com/
公開日:2013年1月26日(土)
監督:中村義洋
出演:濱田岳、倉科カナ、永山絢斗、波瑠、ナオミ・オルテガ、田中圭、ベンガル、大塚寧々ほか
PG12
京都市内のミニシアターにて鑑賞。
率直な感想と致しましては、
或る出来事を切っ掛けに、12歳の春にして、自分の住む団地から一歩も出ずに生きると決めた、渡会悟(濱田岳くん)の17年間の歩みを追った、笑いエキスをもトッピングした、異色の青春物語でしたが、その或る出来事が判明するまでの前半部分では、何故に、ここまで団地に執着し、「引きこもる」という理由があるのか、意味が良く解らなく進行するといったミステリアスな仕掛けになっており、すごく良く出来た脚本かと思いましたね。

中村義洋監督×濱田岳くん主演のコンビの映画は、数々観てきましたが、もう5回目となるのですね。
それらの作品群の中でも、この映画では、特に、12歳から30歳までを濱田岳くん1人で演じ切っているところが、いくら個性派俳優とは言えども、何よりも、すごかったですね。
濱田岳くんの中学生の役柄の際には、ちょっと無理がある様にも思えなくもなかったのですが、それ程には極端に違和感もなく、そつなく演じているところからすると、本当は、プライベートの濱田岳くんの実像は、ご結婚もされてお子さんも授かっている普通のお父さんとは思えないくらいに、幅の広い年齢層を演じ分けていて、「素晴らしい演技の振り幅」の一語に尽きましたよね。
お話的の流れ的には、
1980年代のマンモス団地には、肉屋に、魚屋、理髪店、衣料品店など何でも揃っているので、外出は団地の敷地内のみで充分。
また、初恋も、親友も、就職だって何だって団地の中で事が足りるのでした。
オマケに、オトコとしての性の目覚めまでも開眼出来ちゃうくらいに、恋愛にも不自由がなく、団地内で婚約まで出来ちゃうという巡り合わせにも恵まれているのでした。
ですが、いつしか団地で暮らす友人達は、1人、また1人と歳を経る毎に、悟の前から去って行くのでした。
また、悟が団地から出なくなった本当の理由を知るヒントとして、夜間の友人達宅の団地内の見回り行動、極真空手の大山倍達氏に影響を受けて空手の修行にも日々精を出す行動などが、その背景を知るまでは、実に滑稽で面白いのですが、その或る出来事の真実を知ると、逆に、それらの行動が、すごく物悲しくなるといった仕掛けが施されたお話の展開でもありました。
また、主人公の悟(濱田岳くん)の性の目覚めの描写シーンでは、(今回は、斉藤和義さんではなく)、エレファントカシマシの『さらば青春』が挿入歌として流れていて、妙な、いやらしさも軽減してる効果もあって良かったでしたね。
また、安川午朗さんのBGMも印象的で良かったです。
社会から隔絶しながらも、前向きに生きる「引きこもり」青年の異色の青春物語ですが、それとオーバーラップして、1980年代のマンモス団地から、徐々に衰退し寂れていく近年の団地街へとの様変わりようも上手く投影されていて、実に興味深い映画でもありましたね。
ただ、唐突なラストについては、ここが賛否が分かれるところかも知れないですが、せめて、あの様な幕切れであって欲しいと切に願うばかりでしたね。
また、様々な昭和っぽい服装を纏ってはいましたが、緒方早紀役の倉科カナさんは、ちょっと華が有り過ぎて、昭和っぽい鈍くさっぽさが足りなくて、役柄から浮いちゃってしまっていた感もあったのが多少残念ではありましたね。
ですが、私個人的には、
ケーキ屋店主役のベンガルさん。そして、オカマラスの永山絢斗くん。隣の号に住む松島有里役の波瑠さんの演技が秀逸でしたし、何気に、終盤の田中圭さんの悪党ぶりも似合っていて良かったですし、全体的に通して観れば、非常に良かった作品でしたね。

人は、自分の好む好まざるを別にして、時として、<孤独>にさいなまれる時期が到来します。
それは<老い>から生ずる場合などもありますが、自らが、若くして、社会との接点を隔絶してしまう際に生ずる<孤独>の辛さを、この作品の様に主人公自身が、前向きに、その<孤独>を乗り切っている場合には、まだ良いのですが、それでも、「引きこもり」という<孤独>からの<巣立ち>といった、社会復帰の更生の道は、やはり若い時期に解決するに越したことはないのはずかと思われますね。
また、その「引きこもり」という<孤独>からの<巣立ち>の舞台を、マンモス団地の栄枯盛衰の時代の流れと共に描いている辺り、この映画の主題は、非常に奥深いなぁー。とも思われましたね。
私的な評価と致しましては、
作品自体の主題の奥深さもさることながらも、濱田岳くんの演技の振り幅の広さに感服するばかりで、今回は、かなりの甘口評価になるかも知れないですが、もう濱田岳くんの演技についてのみでも、文句なしの★★★★★(100点)満点評価を付けさせて頂きました。
これを機会に、久保寺健彦さんの原作小説の方も是非とも読みたくなりましたね。
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