今回は、ようやく昨日に鑑賞した、あの西川美和監督が、初めて女性を主軸にした映画を撮ったことで話題の最新作『夢売るふたり』をご紹介致します。
「星屑を集める夫婦(12.10/9・劇場)」
ジャンル:人間ドラマ
製作年/国:2012年/日本
配給:アスミック・エース
時間:137分
公式サイト:http://yumeuru.asmik-ace.co.jp/
公開日:2012年9月8日(土)
監督:西川美和
出演:松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵、江原由夏、木村多江、伊勢谷友介、香川照之、笑福亭鶴瓶、やべきょうすけ、大堀こういち、倉科カナ、古館寛治、小林勝也ほか
R15+
京都市内の大型シネコンにて鑑賞。
率直な感想と致しましては、
脚本自体が、アテ書きでないところから致しますと、庶民派の代表格のコメディアン俳優の阿部サダヲさんを、夢を売るモテモテの詐欺師役・市澤貫也に、また、その出自が梨園といった、高潔な血筋のお家柄の松たか子さんを、その企てを影で操る妻の市澤里子役と、あたかも<真逆>のキャスティングをした時点で、なかなか成功した作品だったのではないかと思われた作品でしたね。
大まかなストーリーと致しましては、
市澤貫也(阿部サダヲさん)と市澤里子(松たか子さん)の夫婦は、苦労の末、小さな小料理屋を営んで5年目を迎えようとしていましたが、不始末から失火して店を焼失してしまうのでした。
再出発に必要なのは、とにかくお金。
ひょんなことから店の常連客だった睦島玲子(鈴木砂羽さん)と再会し、心身ともに慰め合い、大金を手に入れた貫也を見て、当初は、その貫也の行為に気付き、嫉妬から憎悪の念の塊の様になっていた里子でしたが、そこで、ふとある計画を思い付くのでした。
それは、里子がターゲットの女性を定めて作戦を立てる参謀役を務めて、貫也が実行部隊として、その女性を騙して、お金を工面して貰って頂戴していくという<夫婦共犯の結婚詐欺>でした。
結婚願望の強い独身OLの棚橋咲月(田中麗奈さん)、男運が悪い風俗嬢の太田紀代(安藤玉恵さん)、孤独な巨漢のウェイトリフティング選手の皆川ひとみ(江原由夏さん)、幼い子供を抱えたシングルマザーの木下滝子(木村多江さん)など、様々な女性の懐に飛び込んでいき、次々と騙される女性たちは大金を差し出していくのでした。
といったストーリー展開の映画でした。


当初は、私は、ブラックコメディ映画かと思って観始めましたが、たしかに、当初の結婚詐欺の段階で、5~6名の女性との間で結婚詐欺を同時進行させている辺り、阿部サダヲさん演じる貫也は、よっほどの<絶倫男>なの(笑?)と面白く思えたり、また、ウェイトリフティング選手とのエピソードなど笑える様な要素のシーンもあるにはあるのですが、観ていくうちにこれはコメディ映画ではないことに気付かされましたね。
ただ、素直には、なかなか笑えないブラックコメディ映画ではありましたが、個々の騙される側の女性たちにも、それなりの魅力溢れる要素を散りばめている辺りは、西川美和監督が、各々のキャラクターにも、ちゃんと愛を注いだ映画とも思いましたね。

松たか子さん演じる里子が、子宮ガンの関連書籍を伏せて、自慰行為をするシーンには、「あの松たか子さんが!」と驚かされましたが、これはセックスレス夫婦でありながらも愛の通っている夫婦像という設定を説明しようとするばかりに挿入したシーンであるのでしょうし、また、その後、生理用ナプキンを無造作に下着に貼り付けて、履き替えるシーンも、里子の子宮ガンという嘘を裏付けるための必要なシーンだったとは思うのですが、妙に生々しいシーンでしたので、チョットばかりエグいと感じる側面もありはしたのも事実ではありましたね。
ですが、この様な大胆なシーンを含めて、松たか子さんの好演が輝る映画でしたし、特に、ドブネズミを見付けた際のあの眼の演技は、<眼は口ほどに物を言う>とばかりに、さすが女優さんと感心致しましたね。
また、階段落ちのシーンもさすがに役者魂を魅せてくれていましたね。
もちろん、阿部サダヲさん演じる市澤貫也役も、三枚目俳優のはずが、二枚目俳優きどりのモテモテぶりを発揮していて、非常に良かったですね。
2人が騙して得た大金には、わざわざ借用書を貰って、それらを天井近くの壁に貼って拝むシーンなど非常にキュートで、犯罪の映画でありながらも、実にファンタジックでもありましたね。
それに致しましても、女優さんでありながらも、ウェイトリフティング選手役を演じた江原由夏さんには感服するばかりですね。
一定期間トレーニングを積んだとはいえども、あれほど、アスリートの役に成り切れる女優さんも非常に稀だと思いますよね。
また、私立探偵・堂島役を演じる、笑福亭鶴瓶師匠のあの神妙な演技もなかなか堂に入って良かったでしたね。
ラストの「カモメ」の解釈については色々な解釈があるかとは思うのですが、冒頭の築地市場のシーンを海側から捉えたショットから始まることから致しますと、おそらくですが、冒頭とラストで韻を踏ませなくてはいけないほどに、落語のオチの如く、映画全体を象徴するような重要な意味合いが隠れているのかもしれないのでしょうね。
これも、映画を観る観客に判断を委ねるといった、西川美和監督らしい映画の撮り方といえば撮り方ですよね。
私的な評価と致しましては、
当初はブラックコメディ映画と思って観始めましたが、観ているうちに、これはコメディ映画ではないと気付きまして、キュートでファンタジックな側面の描写も持ち併せていながらも、次第に、この映画の犯罪のお話し自体にも引き込まれて行き、その犯罪行為に麻痺していく自分を考えると恐ろしくなっていく側面も有している作品でしたね。
この<夫婦共犯の結婚詐欺>計画も、当然ながら破綻していくのは目に見えているのですが、破綻の仕方が、あの様な結果だったのが、チョット意外でもあり、また尻つぼみ的な結果でもあったのが多少残念ではありましたね。
ですので、その点を大きく差し引きましても、★★★★(80点)の高評価を付けても良い作品と感じました。
※尚、R15+指定になっていますように、セックスなどのややハードな性描写も多数箇所ありますので、もしもDVDソフト化した際にも、15歳未満のお子さんと言わず、未成年者のお子さんが居られる御方々は、ご自宅での鑑賞時には要注意ですね!!!!!!
お勧め作品です。
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