今回は「子犬の気持ちは三つしかない」ということについてのお話をしようと思います。
以前、わたしは「ぼぉ」という名のわんちゃんを飼っていたとお話したことがありますが、ぼぉが非物質界にかえっていってから何年か経ったあとのことです。
近所にお庭や山小屋風の建物が素敵なカフェがあるということをタウンページの広告で知り、行ってみることにしたのですが、
カフェだけでなく周辺も、緑が多く気持ちのよい街並みで、背の高い街路樹の細かい葉っぱたちがサワサワと涼しげに風にそよいでいるような所でした。低木樹も近所のかたが工夫して植えられているようで、ちらほらと咲きはじめのお花も目を楽しませてくれていました。
休日ということもあってか人々が緑の中をゆったりと歩いており、そんな中、一人の女性と一匹のわんちゃんがお散歩をしていました。
わんちゃんは見るからに赤ちゃんに近い、それはそれは小さな子犬でした。
ちょっとうなりながらリードを嚙んだかと思えば、つまづいてコロンと転がり、こんなのへっちゃら!と立ち上がって、楽しそうにまた全力で走り出すのです。
飼い主さんは子犬ちゃんのアクションのたびに「ひぇーっ」と慌てたり、周囲の人々に「すみません」と配慮しておられたりと、初めてわんちゃんをお迎えしたのだな、という感じが伝わって来て、わたしは思わず声をかけてしまいました。
「わんちゃん、本当にかわいいですね!」
女性はちょっとほっとしたように笑ってくださいました。ご迷惑だなと判断したらわたしはすぐに撤退しますので良かったです。
飼い主さんの女性はちょっと困ったような笑顔のまま、「いや~、でも、ホントに困ってて。
何を言っても全然通じなくて・・・。」とおっしゃいました。
その間も子犬ちゃんはウゴウゴ言いながら仰向けになってリードを噛み、
そして噛んでいたかと思えば急に立ち上がって飼い主さんの後ろに回ってしまい、飼い主さんも一緒になって一回転しています。
子犬がすべてこうなのではありません。中には小さなうちから落ち着いた子もいます。ですがこの子はまだ赤ちゃんに近い子犬でしたし、なによりぼぉもそうだったのです。
ぼぉは大型犬で、赤ちゃんの時からすでに成犬のポメラニアンちゃんくらいあり、そり犬でしたのですでに手足も太く、子犬にしては力もあったほうで、初めてわんちゃんをお迎えしたわたしは驚きととまどいの連続で、この飼い主さんの余裕のなさが、とてもよくわかったのです。
飼い主さんが「こんな調子だから、子どもも一緒に散歩するのイヤだって言うので、私一人で散歩させてるんですけど・・・。」と困惑しているそばから、子犬ちゃんは右に行ったり、左に行ったり、身体をくねらせてウガ!と言いながらリードに戦いを挑んだり(?)と、わたしから見たらこの世界に生まれてきた新鮮な喜びを全身全霊で表現しているかのようです。
わたしは二人の様子をなつかしく、たまらなく愛おしく思ってしまい、
「お散歩デビューして間もないのではないですか?
大丈夫ですよ、ウチの子も初めはこんな感じでした」とお伝えしました。
すると女性はとても安心したような笑顔を見せてくださったのですが、
しかしすぐに「でも、これからどうなっちゃうのか不安で・・・」というようなことをおっしゃいました。
お気持ちは本当によくわかりました。
ぼぉは声も大きく、ご近所にも申し訳なくて、わたしも気が気でなかったのです。
わたしは当時の自分が誰かに教えてほしかったことをお伝えしました。
「大丈夫ですよ。
長くてもあと3年だと思いますよ。ウチの子は三歳が過ぎたら、人が変わったというか、犬が変わったみたいに、急にこちらの話を聞くようになりましたから。」と言いました。
すると、こちらの意図に反して、飼い主さんは「うへぇ」といったような表情になって「あと三年もこんななの・・・」とおっしゃいました。わたしは、どうしよう、まずいこと言っちゃったかな、言わなきゃ良かったかな・・・と思いつつ、しかしなんとか元気を出して頂きたいと思ったのですが、気の利いた言葉が思い浮かばず、
「子犬ちゃんていうのはそんなものですし、この子は、健康で、元気なんですよ。
だから大丈夫ですよ、必ず会話できるようになる時が来ますから・・・」といったことをお伝えして、飼い主さんも「はぁ、アハハ〜・・・」といった感じで、お別れしました。
去っていく二人は相変わらずで、
赤ちゃんに近い子犬ちゃんは、全力で生きている楽しさ、嬉しさを炸裂させており、まるでショパンの『子犬のワルツ』のエンディングのように、飼い主さんを引っ張って、走り去って行ったのでした。
大人になると、わんちゃんは飼い主さんからのエネルギーの影響を色濃く受けて、飼い主の鏡として投影がはっきり現れて来たりします。あの飼い主の女性は心優しく、分別のある感じのかたでしたので、きっと成犬になったあの子は穏やかな子になり、長生きしてくれていれば、今でも幸せに暮らしているのではないかな?と思っています。
何かで読んだのですが、
海外の人間のお子さんが初めてわんちゃんをきょうだいとしてお迎えして、少し経った時に、親御さんに、確かこのように言ったそうです。
「〇〇(子犬の名前)の気持ちは、三つしかないってわかった。
嬉しいか。
すごく嬉しいか。
ものすごく嬉しいか。」
毎日を子犬の心のように生きていけたら最高ですね(^▽^)
そしてわんちゃんに限らずペットちゃんとの暮らしを、
ペットちゃんがいなくても人間だけの時間を、
お子さんとの今の時間を、そしてお一人だけの時間を、
このかけがえのない今回の人生の滞在時間を、どうぞ楽しんで頂けたらと思います。
それではまた・・・。