オーケストラ約150名に合唱約120名の大編成。こんなに人数多いコンサートは初めて見たかもしれない。
冒頭から、ものすごくお金をかけた大作映画を観に来たような気持ち。ものすごいロングショットを観ているような。
舞台はデンマーク、実在の王とその愛人の物語。愛人の死(正妻の暗殺らしい)を受け、王は神を恨んだため呪われ、夜毎家臣と共に森を駆ける死霊となり……って、今年はそんな設定ほかにもありましたね??(今年のワーグナー・シリーズは『さまよえるオランダ人』だった。)
第1部は、ヴァルデマール王と愛人トーヴェの恋の物語が、二人によって交互に歌い紡がれますが、やがて悲しい結末が山鳩によって述べられます。
この山鳩(メゾ・ソプラノ)の藤村実穂子さんの悲痛な感じがすばらしかったです。
休憩を挟んで短い第2部、ヴァルデマール王の呪詛を終えていよいよ第3部。呪われた王とその家臣たちの、夜の森での狩りが描かれます。
この場面の合唱がすごくて。3群の男声4部合唱だそうで。男声だけで12部。12部? どういうこと?? 聞くところによると声部の分割を合わせると最大21部とか。すごく分厚く、荒々しく、猛り狂う死霊たちという感じで圧巻でした。イメージ映像は完全に映画『ロード・オブ・ザ・リング』の死者の軍勢。
怯える農夫や道化師などの歌も挟まれますが、中でも酔っぱらいの道化師クラウスを演じたテノールのアレクサンドル・クラヴェッツさんの酔っぱらいぶりがよかったです。コミカルでありつつ、世の中への怒りを溜め込んでいる感じがよい。カーテンコールではちゃんとシャツ仕舞って出てきてくれてよかった。
楽器も声もあまりに多くて、何が起きているのか把握しきれなかったというのが正直なところですが、これやっぱりすごい映画を観たときの「あと何回か観ないと把握しきれん……!」という気持ちに近い気がする。
映画と違って、そうしょっちゅう聞きにいけるものでもないけどね、と思ってたら春祭で演奏した都響が10月に公演するとか。まあね、これだけのもの準備したら、もう一回ぐらいやりたいですよねええぇぇぇ! 声楽キャストは全然違う人たちのようですが。
東京交響楽団『グレの歌』、チケットは5月30日発売だそうです。