当店ではお正月が明けると、桜餅を始めます。
まだまだ、寒さ厳しい頃ですが、桜葉の塩漬けの独特の香りと
その葉からのぞくほんのり桜色に春を感じます。
4月の花が散る頃まで春を代表する主力商品として店頭に並びます。
物語ってほどの話ではないんですが、
「お宅の桜餅はどうして道明寺(もち米)だけなの?」
「焼き皮のはないの?」
と聞かれることが多いので、
ちょっと和菓子処清野 の桜餅についてお話ししたいと思います。
まずは、桜餅の歴史から。
「桜餅」には関東風と関西風があるのをご存知ですか?
両者の違いは餡を包む餅にあります。
関東風は小麦粉や餅粉を練った生地をクレープ風に薄く焼いたもの。
関西風は餅米を乾燥させて砕いた道明寺粉(昔、道明寺の僧が保存食として考案したもの)を蒸したものです。
もともとは江戸で考案された和菓子で、のちに関西へ伝わる際に道明寺粉にアレンジされたのではといわれています。
最近は関東でも、両方販売する店が増え、関東風のを「桜餅」、関西風のを「道明寺」と呼び分けているようです。
今から約300年も前、向島の名跡長命寺 の門番をしていた山本新六という人が、隅田川に植えられたたくさんの桜の落ち葉をどうにか利用できないものかと考え、試行錯誤の結果、考案したのが「桜餅」です。
そのお店
は今も向島にありこの頃と変わらない桜餅だけを作り続けています。本当に小麦粉を水で溶いただけの生地を薄く焼いた皮にあっさりとしたこしあんをはさみ桜葉3枚で包まれた独特の姿はここにしか無いでしょう。
以前友人がこの店に勤務していた時に訪れて、いただきました。私、ここの桜餅好きです。でもこの桜餅はウチでは売れません。他のどのお店でも売らないでしょう。皮には砂糖も一切入ってませんので3時間もすれば硬くなります。苦情が来るのは必至です。最近この本家長命寺さんにさえそういう苦情をいう方がいるそうです。作りたてを味わう、差し上げる場合もすぐに届けて、頂いたらすぐに食べる。この昔ながらのシンプルさがいいんですけどね。作り手にとってもこれが理想。でも美味しいものがあふれる現代、それはなかなかできないことのようです(ノ_-。)
で、清野の桜餅はどんなのかというと、
実は厳密にいえば関東風でも関西風でもないのです。
見た目、食感は関西風に近いのですが、道明寺粉ではなく餅米をそのまま使っています。
蒸かして、食紅で桜色に染めた砂糖蜜を含ませ、更に蒸かして、自慢の小豆粒あんを包み、桜葉一枚を巻いてます。
これは創業者である父が独立するまで勤務していた「和菓子の老舗 麻布青野総本舗」 で作っていたやり方なのです。
いわば「麻布青野風」の桜餅というわけです。
でも開店当初の43年前、特にこの辺では桜餅と言えば焼き皮の関東風しか見たことないお客様が大半。この餅米の桜餅を桜餅と認識してもらえない事も多かったので、焼き皮のも作っていました。
白く焼いた皮の方にはこしあん、餅米には粒あんをいれました。
最初、物珍しさで餅米の桜餅をお買い上げくださったお客様が美味しかったと、次からは餅米だけをお買い上げ、ということが多くなり、数年後には圧倒的にもち米の方が多く売れるようになり、焼き皮まで手が回らなくなったということもあり、10年後くらいには餅米の桜餅のみになりました。
ちなみに現店主の私の母は焼き皮&こしあんの桜餅が大好き!
なのでリクエストを頂ければ、喜んでお受けすると思います。
※事前にご注文頂ければその日の状況にもよりますが、焼き皮、粒あんこしあんの変更等、できるだけ皆様のリクエストにお応えしたいと思っていますので遠慮なく我がまま言ってください。
ですが、道明寺粉の桜餅は作りません。私は桜餅に限らず、道明寺粉は使いません。
理由は、高価な割に(当店で使っている)もち米そのものより美味しい道明寺粉を見つけられないからです。
もち米を炒って砕いて加工したものが道明寺粉ですので、餅米そのものの風味は当然半減します。さらに原料米が外国産であったり産地や銘柄を指定できないからです。
道明寺粉の風合いを出したい場合は、浸水させた餅米をぬれ布巾で包みすりこ木などで叩いて砕いて細かくして使います。
関西風の桜餅を手作りしたかったら、わざわざ高い道明寺粉を買わなくてもこの方法でできますよ!お家に餅米があったら試してみてください。
最後に桜もちを包んでいる葉っぱのお話。
みなさんは「桜餅」を召し上がる際に桜の葉を食べますか?
もちろん塩漬けにしてあるので、食べても問題ありませんが、あくまでも香りづけのためなので食べないという方もいらっしゃいます。
江戸っ子は葉ごと食べるのが粋という説もありますが、落語?小噺?に先の長命寺にまつわるこんな話を聞いたことがあります。
「ある人、桜もちの皮(葉)ごと食べるを見て、隣の人、
旦那、皮をむいて食べた方がいいですよ。
あ、そうですかとそのまま川の方をを向いて食べた」
川を向いて座れば、墨田川のゆったりとした流れと桜並木。
これはきっと桜もちの一番おいしい食べ方でしょう。
葉を食べる食べないは、結局好みということですね。
私個人的には、焼き皮の桜餅は味が比較的淡白なので葉をとって食べる、餅米の桜餅は葉(1枚)も一緒に食べるというのが好きです。
この食用の桜葉は、オオシマザクラの葉を塩漬けにしたもので、全国で生産される桜葉の約7割以上が伊豆の松崎町で生産されています。
独特の香りは塩漬けにしている過程で葉が発酵してクマリンという芳香物質が出てくるためで、生の葉にあの香りはありません。
昔の日本人の知恵というか感性って本当に素晴らしいですよね☆
※あ、でもこのクマリン酸という成分には肝毒性があると言われていますので大量に食べるのはやめましょう。
そして今年、この桜葉が全体的に大きすぎて硬くてとても困っているのです。
去年の猛暑の影響で育ち過ぎてしまったんでしょうか。。。
当店では最高級と言われている、淡渋いグリーン色がきれいで柔らかく、中の桜色が見え隠れする大きさもちょうど良い松崎産のものを使っていますが、年頭から何度も材料屋さんに無理を言って、松崎産の中でも色んなメーカーのを試しては返品ということを繰り返しています。
最近では中国や韓国産のものも沢山出回っていてそっちの方が安価で使いやすいと勧められるのですが、それは当店では絶対使いません。やはり色や柔らかさが不自然な感じがするし、そもそも日本独自の和菓子の材料を外国産に頼らなければならないならもう作らない方がいい!位に私は思っているのです。
もし葉が硬いと思われたら食べずに香だけを楽しむか、お持ちくださればお取り換えもします。
とまあ、うんちくを並べてみましたが、食べてみなけりゃ話にならない!
新潟産水稲もち米「こがねもち」の風味を生かした清野特製さくら餅を、是非召し上がってみてくださいね!!

