smile. | 伝えたい人、音にならない考え事

伝えたい人、音にならない考え事

演劇、表現活動での色々。独りよがりだけど伝えたい、そんな支離滅裂。

 戯曲提供させていただいた作品『smile.』。配信、劇場、さらには配役シャッフルまで含めて、全ての公演が終了しました。

今回は稽古期間もほぼずっといさせてもらって、作品が形になっていく過程をぼんやりと見届けておりました。いつもいつも、自分の書いた作品が人の手によって形になるのは、面白いものです。


演出の鮫嶋さんはやっぱり色々知っていて、重たくなりがちな私の話をいい感じにライトにしてくれる。実は今回、自分の戯曲で初めて笑いが起きたんです。それはひとえに演出と役者の力なわけだけど、それでも嬉しかったなあ。ライトなシーンもありつつ、もちろん大切な部分は外さない。演出の回数を重ねるごとに、そこらへんのさじ加減がどんどん絶妙になっていく。戯曲を渡すときはいつも気に入ってもらえるか不安で仕方ないのだけれど、最終的には彼に渡せてよかったなあ、と、いつも思わせてくれる。今や誰よりも多く私の作品に関わっている人なので、呼吸が合う(合わせてくれてる?)のも当然かも知れませんが。いや、ここまで回数を重ねられていることに驚きだな。毎度毎度不思議なテーマをくれたり、めちゃくちゃ詳しく物語のイメージがついていたりで「それ私が書くべきものか?」とか「そこまで考えられるなら自分で書いたらいいのに」とかまあ冗談半分で言うのだけれど「はるかちゃんの戯曲がいいから」と答えてくれるのが、1mmくらいは嬉しかったり。(あ、でも最近は自分でも書いてるみたいで、めっっっっちゃくちゃ楽しみにしてるんですけどね)


今回初めましての山嵜さん。初めて彼女のお芝居を観たときの印象は「声がいい」だった。よく通る声。それでいてまろやかな声質。高い音も低い音も出る。いいなあ、なんて役者の私は思ったものです。作家の私はというと、とてつもなくワクワクしていた。「この人に書くんだ!」と。そんな彼女から着想した「ウル」というキャラクターをやっぱり魅力的に演じてくれました。初めて見た彼女の芝居が、ああいうはつらつとした感じの役だったからイメージはしやすかった。実際、可愛かったなあ。配役シャッフルで山嵜さん演じるアカも、実はめっちゃ可愛くて好きです。語彙力消滅。真っ直ぐで素直で、打てば響くような女優さん。で、実際の山嵜さんはというと、ちゃんとお姉さんでした。何かとバタバタしがちなクソガキ2人を、上手いこと気遣ってくれて。些細なことだけど、よく「ありがとう」とか「お疲れ様」とか言ってくれるのが嬉しかったり。そういうのちゃんとできる人って、大人だなあって思うんですよね。



戯曲のことについて。今回は販売戯曲のあとがきをあんまり書かなかったので(じゃあ何を書いたのか?気になる方はぜひご購入ください、という地味な宣伝)、ここでぶちまけさせてもらおう。
本来、芝居なんてお客様が受け取ったことが全てで、それで「面白い」と思ってもらえるなら作者の意図なんて消えてしまってもいいんだと思うんです。なので、ここに書くのも戯曲のあとがきも、単なる自己満足なんですけどね。
追記 : 超長くなった。ごめんなさい。

最初にもらったオーダーは「愛についての戯曲を書いてほしい」ということだった。実際そう見えていたかは別として、男女の愛についての物語。その上で『赤ずきん』をモチーフにした設定やキャラクターのリクエストをもらって、今まで以上に材料をたくさんもらった状態での執筆スタートだった。それはそれは恋愛経験の少ない私は、まーあ悩んだものです。それまで全く興味のなかった恋愛映画なんかも見たりして。自分の今までの(皆無に等しい)経験を思い出し漁ったりして。
そして、早々にギブアップして出した結論。「愛であればみんな一緒だ」。男女の愛と考えるから難しい。私だって、恋愛経験は乏しくても、何かを愛した時間と回数は人並み以上に多い自信がある。要するに「何かを大切に思う感情」だ。私には、芝居を通して出会った人たちが大事だし、芝居が行われる空間を愛している(だから照明好きなんだな)。幸いなるかな家族のことも愛せる環境で育ってきた。私という人間はかなりチョロいので、自分を大切にしてくれる人(もしくは一度でもそうしてくれたことのある人)であれば多かれ少なかれ愛してしまう。愛と一口に言っても重い軽いはあるわけだけど、それはひとまず置いといて。その「愛」という感情がたまたま異性に向いたとき、男女の恋愛が成立するんじゃなかろうか。もちろん、異性愛者ばかりの世界じゃないから、厳密には違うけれど。ん?だとしたら、私はまだ理解してないな。広い意味での「愛」と、「恋愛」との違い。そんなこんなで、あんまり恋愛っぽくはない戯曲になったかも知れん。えー、どんな風に見えたんだろう。
恋愛に関してはギブアップした私は、人に対する愛に焦点を当てることにした。私は主に物や現象を愛することが多いので、これはこれで難しかった。人を愛することは、拒絶されることと紙一重だから。「こっちはこんなに思っているけど、向こうはそうじゃないかもしれない。むしろ嫌われてるかも」なんてことを、割といつも考えている。物や現象は拒絶しないから、愛する対象としてはとても楽。アカが本を愛するのは、そんな理由から。人間は本当に怖い。何がきっかけになって拒絶されるか分からないし、単にその人が離れていくだけならまだしも、攻撃に転じたりするから。そういや以前、「人懐っこい」と言われたことがあったなあ。とんでもない。嫌われたくなくて必死だけだと思うよ。それか虚勢はって予防線引いてるかどっちか。で、そんな怖いリスクを負ってでも愛せる人間って、それだけで相当だと思う。そんなこと簡単にはできないから、人を愛するなんて難しい。だから、相手もきっとそうだと思っといた方が楽。これも戯曲に絡んだ実話なんだけど、「友達なんていない」と言ったら「私は?」と返されたことがある。何も言えなかった。わー、やらかしたなあと思った。自己保身のあまり、失礼なことしたよ。それでも未だに、「友達がいない」なんて豪語している私である。酷い奴だ。失うのがどころか、もともと持ってないと気付かされるのが怖いから、もともと持ってないフリをする。本当はとんでもなく寂しがりやなのに、「1人の方がいい」と言う。それは強がりとは少し違う。自分の愛が返ってくると信じきれないから。アカは、そんなキャラクター。
それとは対照的に、ウルというキャラクターはずけずけと人の心に入ってくる。パーソナルスペース皆無のコミュニケーションモンスターだ。言わば愛の押し売り。相手がどう思おうと、自分の愛を貫く。一見強そうに思える彼女も、本当は愛が返ってこないことに怯えている。「返って来なくてもいい。あたしがあんたに構いたいだけなんだ」という風を装いつつ、一方で返ってこない愛に寂しさを感じる。ウルの場合は、アカが本当はウルを想っていることを知っているから。それを伝えてくれないことに、余計に不安になる。そんな裏表を知ってか知らずか、アカはウルに救われ、ウルに惹かれる。そんな構図に、なっていただろうか。
今回の戯曲の執筆は、もろ緊急事態宣言の期間だった。全部が終わった今改めて考えると、あのときもっと人と関わっていたら、今回の戯曲は少し違うものになっていたかもなあ、と思う。ちょうど一人暮らしを始めた時期でもあって、1人の時間が急にめっちゃ増えた。滅多に思わない「人に会いたい、寂しいなあ」を毎日思った。色んな人のことを考えながらこの戯曲を書いた。だからかは分からんけど、アカもウルも、実は私の対人関係のあり方を映していた。それに気付いたのは本番中。こんなにも自分に違いキャラクターを書いたことがあっただろうかというくらい、馬鹿だなあと思うけど、共感してしまった。人に関わるのも独りでいるのも怖くて仕方なくて、いろんな処世術や保身術を試して、最終的には自分と正反対の人間に救われる。アカもウルも、なんか不器用だ。今はなんだか彼らが愛おしい。自分の戯曲に何言ってんだ私は。ちょっと今回は、ひとりよがりが過ぎたかな。解説しない方がよかったかも。

まあ、あくまで私の解釈なんでね。戯曲を提出するときも稽古中も、基本的には何も言ってません。役者さんの解釈で表されて、演出さんの解釈で整えられた作品です。私の解釈を全部渡すより、その方が面白いものができると思っているので。全部終わった後で「あれはこういうつもりだったんだよ」「へー。それは分かんなかった」なんていうやり取りも楽しいし勉強になる。
私の戯曲なんて抽象的だから、色んな解釈があり得る(それがいいことかどうかは置いといて)。だから、物語の意味に正解を求める演出家さんとかは相性悪いのかなあ、なんてちらっと思ったり。鮫嶋さんにしか戯曲渡したことないから分かんないけど。いつも素敵に作ってくれるので、作家は幸せです。

最終的にはご覧になった皆様の解釈で、この作品も落ち着くことでしょう。感想ツイートとか読ませていただいてますけど、どうだったかな。いつも思うのは、役者さんとキャラクターが魅力的に見えてたらいいなってこと。舞台上の人々が輝くなら、それで満足です。


本当に長くなってしまった。ツイキャスでご覧いただいた皆様、会場に足をお運びくださった皆様、本当にありがとうございました。鮫嶋さんが戯曲描くようになったら私はお役御免かもですが(笑)、今後ともはるさめを(?)よろしくお願いします。

最後に、お気に入りの照明シリーズを載せとこう。今回、照明褒められて嬉しかった。カメラ通すと大分変わるので、配信向けの明かりはもっと研究しなきゃと思いました。いつも自前の照明機材たち及びあの子達が作る明かりも、私の愛するものの一つです。
今回は舞台美術も兼ねて、ランプをたくさん(それも低めに)吊りたいというご要望でした。相変わらずあったかくていい色や。影も大好き。

これは、真上から蛍光灯1本で照らしたところ。シンプルだけど、生で見たら感動ものの美しさでした。研究施設感のある色味、超好き。

これはブース兼研究室。ここでも芝居してました。したから白い光を強く当てると、なんかオタクの部屋っぽいね。って盛り上がってた。ブースは私の好きなものが集まる場所なので、当然大好き。

あとは、なんかめちゃめちゃ綺麗に撮れた電球。白熱灯じゃなくて、ハロゲンランプです。いただきものなんだけど、この子のおかげで照明の幅が広がったよ。好き。