9月の四週目はこんな感じ。

と、いう以外に、とくに添える言葉が浮かばない。

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アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)




「一緒に本屋を襲わないか」、「裏口から悲劇は起きるんだ」、「神様を閉じ込めに行かないか」。意味深な言葉に誘われて、次第に伊坂幸太郎の世界に沈んでゆく。現在と過去。輪廻転生。巧みに置かれた物語の断片。それが、ラストで一気に収束する快感と、余韻を残すせつなさ。読み終わった今も、ボブ・ディランの曲が、ずっと頭のなかで流れている。How many roads must a man walk down-ねえ、どれだけ歩けばいいんだよ?

読了日:09月25日 著者:伊坂 幸太郎



MISSING (双葉文庫)MISSING (双葉文庫)




「欺き、騙され、そうまでして人は自分が生きた証をこの世界に留めずにはいられないものだろうか」(205) 本書に収められた5つの短編は、生きることの残酷さを繰り返し描いているように思える。抑制の効いた文章で静かに描き出される心の闇。目を背けることができないのは、それなりに長く生きてきた僕のなかにも、それなりの闇があるからだろうなあ。描かれる物語に希望がないわけではないけれど、それは諦めの向こう側にある希望のような。最後のページを読み終えて、ふぅーと長い息を吐く。

読了日:09月23日 著者:本多 孝好



たまごを持つようにたまごを持つように




哲学者ヘリゲルの『弓と禅』に刺激されて生まれた物語。「いつもより弓がやわらかい。まるで、自分の手を握り返してくるような感じだ。弓と手が一体になるとは、もしかしてこんな感じなのだろうか」(72) 道具と身体の同調。心身一体。無我無心。まるで達人の境地なんだけど、作者が選んだ主人公はごく普通の中学生。どんどん成長する弓道部員の姿を見ながら、あの頃はもっと軽やかに暮らしていたなぁと在りし日の自分を思う。変化することは恐れることではなく当たり前で・・・うん?もしやそれは達人の境地に重なるのかもしらん。

読了日:09月23日 著者:まはら 三桃



まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)




「誰かの内心の動きを推察してみるのは、ひさしぶりのことだった。他人と一緒に生活することの、わずらわしさと面映いようなわずかな喜びを思い出した」(68)、「一人でいたい。だれかがいるとさびしいから」(228)。そこまで孤独な人間ではないけれど、こんな言葉が沁みてくる。それでも辛くならないのは、根っこに「幸福の再生」への信頼があるから。その信頼の描き方が甘すぎなくって好きでした。三浦しをん作品はこれが始めて。新たな作家に手を伸ばすとき、軽く緊張するのは僕だけか。懸念は杞憂。とても良い出会いとなりました。

読了日:09月22日 著者:三浦 しをん

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9月の第三週目。

だいぶ、感想の書き方、パターンが決まってまいりました。
もうすこし、こんな感じでいくとして、

もっとパターンが固まってきたら、今度はそれをどう崩すか、だな。短い文章とはいえ、口調にしろ、リズムにしろ、語彙選択にしろ、いろんな工夫はできそうで。

全くのフリーで書くよりも、
文字制限や引用など、条件があったほうが書きやすい。
今のところ、そんな印象があるなあ。

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周作塾 (講談社文庫)周作塾 (講談社文庫)




「新しい時代の「新しい考えかた」・・・学者のように大上段にではなく、わかりやすい言いかたで、ユーモアをまじえて伝えることができないか」(262) 次世代の「新しい考えかた」に対する周作塾長の読みは正しかった。1984年頃の雑誌連載なのに、今でも充分タメになる。偶然性、運勢、勉学、結婚観・・・話は多岐に及ぶけど説教臭くはなく、読みながらニヤリニヤリ。個人的には「名前を複数もて」というのが沁みた。「ひとりだけの、自分に自己催眠を書けるための名前はいくつでも用意して、いろいろの形で楽しもうじゃないか」(14)

読了日:09月18日 著者:遠藤 周作



哲学の冒険―生きることの意味を探して (平凡社ライブラリー (294))哲学の冒険―生きることの意味を探して (平凡社ライブラリー (294))




「哲学は現実に存在する自己への自分自身の闘争のなかから生まれれてくる」(227) 中学生が読みうる哲学の本、そんな条件で著された本書。エピクロスの言、未来を恐れないため美しく生きるために、哲学の冒険が始まる。ただし「答え」はない。「哲学」とはそういうことではなく、「迷いを共有する人々とともに展開する」(227)もの。とても読みやすいけど読み飛ばせない。こういった哲学書に、ほんと中学生で出会ってればなぁ・・・いやいや、今からでも遅くはない。「闘争」とは言葉が強いけど、自分自身に向き合うことから哲学が始まる。

読了日:09月17日 著者:内山 節



SPEED スピード (文春文庫)SPEED スピード (文春文庫)




「瞬間的に「クンッ!!」と覚醒するのがまたいい!!ちょっと鼻にツンとくるが、美味しいもの程シビレが来るってね」(130)「巻いては吸い、吸っては笑い、笑っては巻き、スピードもキメて、オレ達はニヒニヒ笑いを絶やすことなく、テーブルの上のジョイントを次々と灰に変えていった」(234) ニヒィヒヒィヒィ、ニヒィヒィヒィ!!ぶっ飛んだ男たちの笑い声が聞こえてくるようだ。作者がそう望んだように、全体的にアップテンポで明るい文章。でも、「最高に楽しい明るさ」の彼方にドス黒い闇が透けている。狂気の世界を垣間みた気分。

読了日:09月16日 著者:石丸 元章



平成トム・ソーヤー (集英社文庫)平成トム・ソーヤー (集英社文庫)




「「あんな芸当をどこで覚えたんだ」そいつはゲームテーブルの上へと身を乗り出して、低い声で聞いた」(17)、「「いけない坊やだねえ・・・」そんな囁きとともに、息が僕の耳にかかった。聞き覚えのない、嗄がれた老人の声だった」(62) さあ冒険が始まるぞと期待が高まる、仲間たちとの出会いのシーン。物語は冒頭からトップスピードで、その世界に一気に引き込まれてしまう。後半、もっと跳んで欲しかったなぁと思うのは、終わってしまうのが惜しいから。原田宗典さん、エッセイも好きなんだけど、僕的には小説をけっこう評価している。

読了日:09月15日 著者:原田 宗典



写真学生 (集英社文庫)写真学生 (集英社文庫)




「東京に来て冬の日だまりという言葉の意味を初めて実感として知った。諏訪の冬はおそろしく寒く、日だまりというものは存在しなかったのだ」(231) 写真家小林紀晴さんの自伝的小説。過剰な演出がない。煽るような言葉もない。彼が撮る写真と同じように、静かに訴えかける抑制された文章。言葉を持っている写真家、なんとも羨ましいことだなぁ。すごく気に入っている青春小説のひとつです。

読了日:09月15日 著者:小林 紀晴



パンツの面目ふんどしの沽券 (ちくま文庫)パンツの面目ふんどしの沽券 (ちくま文庫)




パンツ、パンティー、ふんどし、ズロース・・・下腹部を覆う「下ばき」を巡る壮大なる考察。マジメな考察のなかには数々の笑えるエピソードが織り込まれている。イチジクの葉で恥ずかしいところを隠したアダムとイヴ、なぜ葉っぱは落ちないのか。セメンダイン・のり・セロテープ・・・諸説を我が身をもって確かめる園児たちの姿にニヤニヤしていると、話はラテン語の聖書の解読へとぐっと深まってゆく。小さな疑問が世界を解き明かす鍵となる、その実践の見事な例を見た気がした。

読了日:09月14日 著者:米原 万里



青空人生相談所 (ちくま文庫)青空人生相談所 (ちくま文庫)




「問題は〈浪費〉ではなく、それを引き起こすあなたの”内部”ですね。もう少し今の状態をお続けになったらどうですか?それは勿論”少しばかりの浪費癖など気にせず”ではなく、”そういう浪費癖を気にして”ですけど」(209) 悩みそのものではなく、なぜ悩むのかを問題にする。回答者橋本治さん、お見事です。これはもう、一つの芸ですね。問題の次元が繰上がり、新たな視点が開かれてくると、悩みの本来の構造が見えてくる。僕もまあ、わりと悩み多き人ですが、多くの場合は「何を悩んでいるかが掴めていない」んだなぁと納得。

読了日:09月13日 著者:橋本 治



東京物語 (集英社文庫)東京物語 (集英社文庫)




「祭りでもあるのかと思うほどの通行人の数だった。真っすぐに歩けず久雄はぎこちなく歩を進めた。交差点を小走りに行く。・・・急ぐ理由はどこにもなかったが、人の流れに押されてそうせざるをえなかった」(96) 物語の年代ではない。けれども、奥田英朗が描く、主人公久雄の上京一日目の心の動きが切なく痛い。この成長物語は、「東京との距離」を詰めていく物語。上京してから十数年間、在りし日の自分と重ねずにはいられない。

読了日:09月13日 著者:奥田 英朗

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9月の第二週目。

255文字という制限以内で感想を書いてみるのも、
一つの文章トレーニングになるかもしれん・・・

そんなことを思いながら、読んだら短い文章を綴ることに。
途中から、
「どこか一箇所は抜書きをする」という条件も自分に課してみました。


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芸術の神様が降りてくる瞬間芸術の神様が降りてくる瞬間




「まずですね、自分の魂を荒らす必要があるんですね」(町田康14頁)、「自分よりも外にいる自分を鍛えるのが、修行なのかもしれないですね」(立川志の輔240頁)、「『私』と呼ばれている君が、自分で自分をコントロールできない状態にいつも置かれるわけ。」(荒川修作314頁)。:多士済々、でも、どこか重なるような・・・「芸術の神様」は「私が私から離れたとき」にいらっしゃるのかも。茂木さんが、聞き手に徹することなく、自分もグイグイ前にでる。下手すればブチ壊しだと思うけれど、この本は、それが成功しているように思う。

読了日:09月10日 著者:茂木 健一郎,町田 康,金森 穣,山下 洋輔,立川 志の輔,荒川 修作




青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)




田舎で生まれ育ち、バンド活動に励み、一人上京した僕にとって、この本はまさに「僕の本」。覚えてしまった最後のセリフは、いつも胸に沁みてくる。数ある青春モノの中で本書が抜群なのは、青春の頂点といえる学園祭で終わらないこと。この物語には「祭りのあと」がある。その描き方が素晴らしい。祭りには必ず終わりがあって、それもまた青春の味なのだ。もちろん、個人的な記憶なんて持たなくっても、本書はめちゃくちゃ面白い。愛すべき登場人物、方言の味、気の利いたセリフ。読みなさい、デンデケに撃たれなさい。なんか偉そうでごめんなさい。

読了日:09月09日 著者:芦原 すなお




薮の中・将軍 (角川文庫)薮の中・将軍 (角川文庫)




どの作品も雰囲気を持っていて、それぞれに存在感があった。なかでもインパクトがあったのは「好色」。冒頭からすごく映像的で、これは舞台にすると面白いんじゃないかと絵を思い浮かべながら読んでいて、あのオチ・・・たまりません。「藪の中」や「奇遇」などに顕著だけど、物語の見せ方、構成、あとは文体にも工夫が凝らされている。多彩。巻末の解説者は「芥川の固有の技巧主義は成功していない」と書いているけど、個人的にはけっこう興味深いぞ。巻末に付いている当時(大正十年頃)の批評も興味深いし、なんだかお得感もあり。

読了日:09月09日 著者:芥川 龍之介





桜宵 (講談社文庫)桜宵 (講談社文庫)




推理と料理。ともに素材を組み合わせ、想像力を働かせて為せるワザ。香菜里屋シリーズ二作目。「そちらの領域に足を踏み入れてはならない。それは安易に語るべき話でもない」(276頁)。人間の心の闇に触れる、重さのある事件。安楽椅子探偵だからこそ、少し距離をとって静かに描かれている。この連作短編集、好きだなぁ。北森鴻さん、惜しいです。未読の作品をゆっくりと読もうと思います。

読了日:09月08日 著者:北森 鴻





からくり民主主義からくり民主主義




からくりの種明かし、と受け取ると少し危険。これも一面、あれも一面。「こういう見方もあるんだよ」と、マスメディアが伝えない物事の裏側を見せてくれる一冊。こういうテーマには、高橋流の脱力感漂う文体がグッド。重いのに、深刻になり過ぎない。

読了日:09月07日 著者:高橋 秀実




スペイン七千夜一夜 (集英社文庫)スペイン七千夜一夜 (集英社文庫)




こういう便利で自分勝手で、自由にあっちへ行ったりこっちへ来たり、一瞬のうちに都合のよいほうへ乗り移る「自分」というものを、日常的に心の中に飼っておかないと、闘牛という、不思議な審美眼によって支えられる「芸術」を理解したり、まして愛したりなど、とうていできないのである(148頁)/伝統も芸術も文化も、すべて目に見えるものである。・・・古いものが現存する、ということの力を日本人は甘く見ている(179頁):なんとも魅力的な荒々しい文章。さらりとも読めるけど、ゆっくりと考えながら読む。

読了日:09月07日 著者:堀越 千秋



江戸の読書熱―自学する読者と書籍流通 (平凡社選書 227)江戸の読書熱―自学する読者と書籍流通 (平凡社選書 227)

読了日:09月07日 著者:鈴木 俊幸



スペインうやむや日記スペインうやむや日記




小気味よいテンポの暴言型エッセイ。こういう文章、真似できないな。好きだなあ。

読了日:09月06日 著者:堀越 千秋


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