活字中毒といって良い様なコバヤシですが、なかなか読めないものがありました。それは、翻訳小説、そして、村上春樹の小説でした。
昔は、翻訳小説も喜んで読んでいたのですが、ある時期から、世界に入っていけなくなりました。翻訳調の文体、リズム、言い回しに、どうしても馴染めなくなってしまったのです。
村上春樹の作品も、小説以外、は読むことができました。なかでも『翻訳夜話』や『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』などは、かなり前のめりに、喜んで読んだりしていました。
でも、小説は、ダメだったのです。なんというか、粘っこくて、ああ、もう読んでいられない!と投げ出してしまっていました。
ところが、急に、村上春樹の世界に入ることができるようになりました。嫌いだったピーマンが、急に食べれるようになるような、そんな、味覚の変化がやって来たのです。
もちろん、それまでのさまざまな蓄積があっての変化でしょうが、直接的なきっかけは、D・クーンツでした。
- ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)/ディーン・R. クーンツ
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友人から薦められたこの本、クーンツの『ベストセラー小説の書き方』を、とても興味深く読みました。そして、ちょっと翻訳小説を読んでみようかね、という気分になったのです。
そこで、家の本棚を眺めて、何度も手に取りながら、その度に挫折していた翻訳系積読本のなかから、チャンドラーの『大いなる眠り』、『さらば愛しき女よ』を一気に読み、「どうやら、何かが変わったらしい」と気づいたのでした。
- 大いなる眠り (創元推理文庫 131-1)/レイモンド・チャンドラー
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- さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-2))/レイモンド・チャンドラー
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- そして、ふと、「ならば村上春樹はどうなんだ?」と思いついたわけです。翻訳小説がイケるようになった今、村上春樹もイケるんじゃなかろうか?と。
手始めは短編集からということで、図書館で『東京奇譚集』を借りて読みました。そして、積読本のなかから、『国境の南、太陽の西』を読み、次いで、『ねじまき鳥クロニクル』の1~3巻を一気に読みました。
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- 国境の南、太陽の西 (講談社文庫)/村上 春樹
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- ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)/村上 春樹
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良いじゃないですか。面白い。その世界にじっくりと浸ることが出来ました。
今、まだ抜け切れていない気がするほどに、深く。
この感覚を味わった今、多くの友人が、麻薬のように「春樹が好き」と言う理由が分かる気がします。これはハマるでしょうね。これから、コバヤシも、未読の作品を貪るでしょう。
同時に、コバヤシが今まで、村上春樹を拒んできた理由も、なんとなく分かる気がしています。それは、ある種の防衛本能のようなものだったのではなかろうかと、今の段階では、理解しています。
小説の力でもって、「あちらの世界」に飛ばされたあと、「こちら側」に帰ってこれない危険性。そんな危なさを、当時のコバヤシは、どこかで感じ取っていたように思います。
でも、今はもうその心配はなさそうです。行くけれども、きっちり戻ることができる。その用意が、どうやら整ったようです。だからこそ、すんなりと読むことが出来たように思います。・・・って、独り言過ぎて、なんのこっちゃか、分からないでしょうけれど。ごめんなさい。
クーンツ、チャンドラーをステップにして、村上春樹へ。これは書き留めておきたいぞと思うような、そんな「味覚の変化」の記録でした。
