ミュージックライフ1967年11月号…ピンク・フロイドをロンドンで取材(1) | プログレッシブBBSの思い出_ピンク・フロイドmemorandum

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【ピンク・フロイドについて語り合おう】
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プログレッシブ・ロックとオールディーズの魅力再発見の日々……
〈ザ随筆〉での執筆記事も再録準備中.

  




この号には、星加編集長と長谷部カメラマンによるロンドン取材旅行レポート特集が載っています。67年の9月に現地で撮られたたくさんの写真とインタビューなどの読み物が満載。
この号だけでは載せきれないということで、後編が次の12月号で特集されています。

表紙/ビートルズ


  カラー・グラビア(P51にある目次の一覧より)

ビートルズは元気でした(EMIのスタジオで会いました)/スコットもレコーディング中/ゲイリーがたずねてきました/ホリーズはハンサムぞろい/プロコール・ハルム/クリフ・リチャード/メロディ・メイカーの授賞式/ジミ・ヘンドリックス/ルル/キャット・スティーブンス/トム・ジョーンズ/ディブ・ディー・グループのミック/トロッグスのレッグ/トラフィック/ピンク・フロイド/ビー・ジーズ

  グラビア

ビートルズのマジカル・ミステリー・ツアー/シーカーズこんにちは/ニーナとフレデリック/ジェフ・ベック/ダスティ・スプリングフィールド/「傷だらけのアイドル」/エブリ・マザーズ・サン/ソニーとシェール/スモール・フェイセス/ローリング・ストーンズ/ポール・ジョーンズ/トロッグス/ツイッギー/トロメロウズ/トラフィック/デル・シャノン

  特集

特集!星加編集長のロンドン取材旅行/ビートルズは元気でした/スコットとジョンが12月15日に来日か?/ホリーズは11月に来日しそう/ゲイリーは新バンドを結成/来日前のクリフ・リチャードと/メロディ・メイカー授賞式に参列/すばらしい男性、トム・ジョーンズと/あなたが選ぶローリング・ストーンズ・ゴールデン・アルバム


P69からの〈
特集!星加編集長のロンドン取材旅行〉では、最初のページに〈ロンドンで会ったスター達〉として、次のミュージシャンが挙げられています。

*印…この11月号でインタビュー等の読み物記事を掲載

ビートルズ
スコット・ウォーカー
ゲイリー・ウォーカーのグループ
クリフ・リチャード
 トロッグス
 デイブ・ディー・グループ
ホリーズ
 シーカーズ
 ビージーズ

 プロコール・ハル厶
トム・ジョーンズ
 キャット・スティーブンス
 ジミ・ヘンドリックス
 ピンク・フロイド
 トラフィック
 ルル
 ジェフ・ベック
 ニーナとフレデリック



ピンク・フロイドのインタビュー記事は次の12月号ですが、この号でも、写真はしっかり載っています。

P25

写真の上のキャプション…
PINK FLOYD
ロンドンのゴーゴークラブ“タイルス”に出演中のピンク・フロイドを訪ねました。サイコデリックのかたまりみたいな4人でした。


“サイケデリック“ではなく、”サイコデリック”という表記になっていたのですね、この当時……。
それはさておいて、この号では、
星加編集長が日本の読者のためにもらってきた、ミュージシャンたちのサインまで載っているのでした。

P67

フロイドのメンバーのサイン(Autograph)なんて、そういえばほとんど見たことなかったような……。シド・バレットのはファンサイトのどこかで画像を見た記憶があるんですけど、筆跡はまさにシドのもの(当たり前)。
ミュージックライフの読者の皆さんへ心をこめて、という最初のメッセージは、誰が書いたのかしら? リックかシドのような気がします。
ニックのサインは絵心がありますね。後年には『Relics/ピンク・フロイドの道』のアルバムカバーアートや、“Dark Side Of The Moon”ツアーの手書きプログラムのデザインを手がけたひとですから……。
ロジャーのは、犬の顔? サービス精神なのかシニカルに決めたつもりなのか、よくわかりませんが、絵心を感じさせるサインになっているのがうれしかったです。


これは、編集部の取材旅行とは別の、見開き2ページのミニ特集。

バッファロー・スプリングフィールド、ピンク・フロイド、ポーパース、マザーズ・オブ・インベンションという、4つのバンドが登場しています。

P46

写真右側の文…

 サイコ・グループ大行進。たえなるギターの音にのってまず穏健派のバッファロー・スプリングフィールドから。チョット、ヒット曲がない、さみしいね。元気を出して、新曲楽しみに待っています。
 イギリスからは、カラフルボーイズこと、ピンク・フロイドの登場。サウンドとは似ても似つかぬ進士達。「エミリーはプレイガール」で本邦にお目見えですが、なかなか、エミリーを上回るプレイ・ボーイ達のようです。
 (以下略)

紹介文、言ってることが矛盾しておりますが、つっこまないことにしましょう……。
その本邦初登場「エミリーはプレイガール」、この号の新譜紹介コーナー〈これがヒットだ!〉に登場しています。

P120

コーナータイトルの下には〈来月のヒットをズバリ当てます〉という一文。その下に11名の選考委員の名前があります。ほとんどはテレビ局ラジオ局のプロデューサーですが、本誌編集顧問として音楽評論家の湯川れい子氏、編集長の星加ルミ子氏も加わっています。最後のページにある〈今月の総評〉は、湯川氏担当のコラムです。
採点方法は、☆☆☆☆☆ 最高、☆☆☆ マァマァヒットする、★★★ 大穴。

この号で取り上げられているシングル盤は、15枚です。

「この世界に愛を/ダンディライオン」ローリング・ストーンズ
「ロック天国」ピーター、ポール・アンド・マリー
「朝日を求めて」ママス&パパス
「ウォーキン・イン・ザ・レイン」ウォーカー・ブラザース
「ペイパー・サン」トラフィック
「ガール・ライク・ユー」ヤング・ラスカルズ
「ベイビー・アイ・ラブ・ユー」アレサ・フランクリン
「言えばよかった」グラス・ルーツ
「思い出のミシシッピー/ビリー・ジョーの歌」ボビー・ジェントリー
「ラブ・サムバディ」ビー・ジーズ
「傷だらけのアイドル」ポール・ジョーンズ
「花咲くサンフランシスコ」フラワー・ポットメン
「あの娘のレター」ザ・ボックス・トップス
「エミリーはプレイガール」ピンク・フロイド
「ラスト・ワルツ」エンゲルベルト・フンパーディンク



「エミリーはプレイガール」のおすすめ具合はどのようなものだったのかしら……と、ワクワクしながら読みました。そこだけ、引用させていただきます。


エミリーはプレイガール
 See Emily Play
 (ORー1785)

 イギリスで大きな話題になっている、このピンク・フロイド、本邦に初登場です。光と音のサイコデリック・サウンドを、イギリスでは最初に試みたグループです。
 サウンドはしごくまともで、アメリカ勢ほどの混乱は見られません。
 誇り高きイギリス勢のリーダーとして、すばらしい曲を次々と発表していますが、日本での第一弾、ヒット性はある曲ですが、いかに。

植木 一寸面白いね。(☆☆☆)
平川 個人的で申し訳ないけど、わたしは最近こういう音楽に弱いもんで、巷では評判いいヨ。(☆☆☆)
横山 ピンク・ムードは大好きな方が多いのでしょうが、ピンク・フロイドとなると……なかなか魅力のある曲ですよ。(☆☆☆)
菊池 変わってはいるけど……この辺になると出てみないとわからない。(☆☆☆)
北山 非常に緻密に出来たポップス・ナンバー。(☆☆☆)
湯川 コッていて面白いけど、リラックスして聞くわけにはいかないでしょう。そこのところがね。(★★★)



湯川氏のコメントと採点は、さすがだなぁと感心、いえ、感服してしまうのでした(エルビス・プレスリーの大好きなおばさまという記憶がよみがえります)。大御所のこの方もフロイドを聞いてくださったのですね。

光と音のサイコデリック・サウンドを、イギリスでは最初に試みたグループ〉、この件は、「エミリーはプレイガール」のライナーノーツには、もう少し具体的に書かれています。参考資料として、林 港氏によるその解説文から少々引用します。


彼らは今までのビート・グループと異り、非常に面白い特徴を持っています。それは「光と音」です。ピンク・フロイドは音を聞くだけでは残念乍ら彼等の総てを判断する事は不可能です。……と云うのは「光と音」を非常に効果的に使います。彼等のステージは真暗にして音と照明をうまくミックスしてファンを堪能させる様です。普通ではつながらない音をつなげ、ミックス出来ない照明の光を交錯させる。それがピンク・フロイドの特徴になっているのです。 


イギリスでのフロイドのレコード・デビューは、67年3月発売のシングル「Arnold Layne」。そのあと6月に「See Emily Play」、8月にファーストアルバム『The Piper At The Gates Of Dawn』です。
アメリカでは、4月頃に
「Arnold Layne」、7月に「See Emily Play」、10月に『The Piper At The Gates Of Dawn』。
このLPでは、イギリス盤にはなかった「See Emily Play」が収録されています。曲順がイギリス盤とはちがっていて(70年代前半頃まではよくあることでした)
、A面1曲目がエミリーなのです
日本では、アメリカの様子をうかがってからリリースという感じだったのでしょうか。

この年の12月に『The Piper At The Gates Of Dawn』サイケデリックの新鋭』の邦題で発売されますが、そのLPのB面ラストには、「エミリーはプレイガール」が収録されていました。

この取材の三ヶ月後には、シドが表舞台には出られなくなってしまうので、ちょっと複雑な思いもあるのですが、星加編集長がフロイドを取材してくださったことも、日本での「エミリーはプレイガール」のヒットにつながったのではないかという気がします。

余談になりますが、この67年のミュージックライフを今回はじめて読んでみて、やはりビートルズとウォーカー・ブラザースの人気の強さをあらためて感じました。
ビートルズは前の年に来日してライブもやっていますから納得ですが、
ウォーカー・ブラザースは67年の2月にプロモーションで来日しているだけなのです。この三人組は5月に解散し、各自がソロ活動に入っている時期です。
スコット・ウォーカーについては、いまでもたまに読み返している漫画『ファイヤー!』(水野英子作画)のモデルになったミュージシャンですから、いずれちゃんと聴いてみたいなと思っています。



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