親兄弟、家族、友人や師匠、恩人など、誰にでも大切な人がいるだろう。
僕にもそういう人たちがいる。
彼らの存在無しに、今の僕は無いだろう。
その中の一人のエピソードを懐かしく思い出す。
もう30年以上昔のことだが、当時、僕はあるロック・バンドでベースを弾いていた。
ある日そのバンドのギタリストの友だちだというキーボード奏者が、バンドのリハーサルに遊びに来ていた。
それが彼との最初の出会いだった。
リハーサルの後、一緒に来ていた彼の弟と僕の3人でお茶に行こうってなって、大阪・日本橋地下街の喫茶店に行った。
暫くたわいもない話しをして、彼は切り出した。
「ウチのバンドに入らへん?」
ちょうどその時にやっていたバンドに相当煮詰まっていたので、答えは簡単だった。
「ええよ。やろう。」
その彼がやっていたバンドは「スパイラル」と言って、彼のオリジナルを中心に演奏する、プログレッシブ・ロック・バンドだった。
譜面とテープを貰って、ウチに帰って聴いてみた。
僕は即答したことを少し後悔した。
僕の演奏力では難しいんじゃないかと思ったから。
だけど、曲は格好よくて、プログレッシブ・ロックが大好きな僕にはとても魅力的に響いた。
最初のリハーサルの時、僕以外は皆上手くて、僕が一番下手くそだった。
それに細かいところまでキチンと計算された楽曲はやはり難しかった。
だけど、とても楽しくて、メンバーは人間的にも最高で、きっと成長できると思った。
彼は僕に本当の音楽を教えてくれた。
後年、10数年振りに再会した時、彼はもうバリバリのプロで、日本を代表するキーボード奏者の一人になっていた。
飲んでたら、
「あの頃、大阪のフレットレス・ベースでは、治ちゃんが一番上手かったで~♪」
なんて言ってくれた。
とても嬉しかったけど、もしそうだとしたら、それは君のお陰やで、と思った。
彼の名前は「小川文明」。
僕の友人であり、最初の師匠であり、尊敬する恩人だ。
彼と出会わなければ、僕はこうはなっていない。
素晴らしい作曲家で最高のキーボード奏者で、ファンキーで愉快で、、、。
僕は一生最大のリスペクトを捧げるだろう。