雨上がり。
空はまだ薄暗くて、途切れた雲の間から細く光が射している。
乾いている時は白ぽいアスファルトも黒さを増し、僅かに光を反射している。
水溜りを避けながら歩いていた。
アパートの駐車場。
車は、狭い隙間を挟んで横一列に駐車している。
湿気を含んだ風が吹く。
ばさりと大袈裟な羽音をたてて黒いカラスが飛び上がる。
見上げると、街灯にとまったカラスが何か見つめている。
視線を追うと、何か黒い塊が。
雨に濡れ、表面が少し毛羽立っているようにも見える。
獲物か?
どこかで見つけたねずみか何かをここまで運んで来たのだろうか。
なぜこんな所へ?
私の車はその向こう。
横を通り過ぎなければならなかった。
獲物を奪われると勘違したあの大きなカラスがこちらに飛んで来やしないか。
少しドキドキした。
そして、目の前の動物の死骸にもドキドキしていた。
近くで見れる。
どんなかんじなんだろう。
くちばしでつつかれた傷跡はどんな風になっているんだろう。
引きずり出された内蔵が…。
怖い。でも見たい。
カラスを気にしながら、それでも地面に転がった黒い塊をやらないではいられなかった。
黒くて、雨に濡れていて、少し毛羽立っている。
まるでボロ雑巾だ。
目を凝らした。
!!!
靴下!!!
あんなに期待していたのに、近付いて良く見るとそれは、靴下だった。
黒くて、雨に濡れて、少し毛羽立っている、まるでボロ雑巾のような、…靴下だった。
確かに素材は同じだけど…。
なんでこんな所に…。
そして、何時からあるのか。
入れ忘れた洗濯物が風に飛ばされてここまで来たのだろうか。
でももう、どうでもいい。
あのカラスだって、空高くを飛んでいる時、見つけて降りてきたに違いない。
そして、
"靴下やん!おぇ。"とか、
落胆したに違いない。
そして、アパートの誰かは片方しかない靴下を履いているに違いない。