午前7時、なぜか私はカスタネットの練習を始めた。
家を出る前に少し時間があったし、フラメンコの先生も"マメに練習しないとうまくなりませんよ。"と言っていたし、何より私の右手はうまくビートを刻んではくれない。
タ・リア、タ・リア、タ・ピ♪
先生に教えてもらったように叩いてみる。
…若干、違う。
そして、たぶん、うるさい。
練習熱心なモーションで、このままバスの中でも、練習してたらどうだろう。
「カスタネット止めてください。」
運転手さんに注意されるかもしれない。
いや、注意される。
間違ない。
これは、最近たまにメールしてるだけでも注意される、
「携帯止めてください。」よりありえないし、恥ずかしいに違いない。
万が一、「パリージョ止めてください。」って言われたら、
それはそれでびっくりする。
もしも運転手さんが、"パリージョ…。"と言っていたら、降りる時こう言おう。
「今度お手合わせ願えませんか?」
そしたら、運転手さんはこう返すに違いない。
「今どの辺やってるの?」
私は正直に答えるしかないだろう。
「今ブレリアの途中なんですが、なかなかステップが覚えられません。
セビジャーナスならだいたい。
カスタネットも最近始めてみたところです。」
「セビジャーナスは基本ですからね。」
ジェントルマンな運転手さん。
白い手袋が眩しい。
「セビジャーナスはこの頃踊ってないな。久しぶり軽く身体を動かしてみたいものです。」
私は嬉しくなって、
「そうですか、それでは後日連絡差し上げますので、ごきげんよう。」
私は軽く会釈してバスを降りた…。
って、運転手さんはそんな長話できんやろう!
さらに、連絡先の交換もしてないやん!!
いつの間にか、家を出るいつもの時間。
今日もまた、バス停まで走るのでした。