30年ほど前に沖縄で白タクに乗った時、運転手のおっちゃんが、空港につくまで、カセットテープでずっとエルヴィスを流し、エルヴィスの思いを熱く語っていた経験が今でも忘れられない。 私自身、実際にエルヴィス・プレスリーを生で見たことはないが、写真や映像で見る彼には、なんとも言いようのない物悲しさを感じていた。

映画エルヴィスは、そんなエルヴィスの一生を描いた伝記的な映画映画であるが、
輝かしいスーパースターとしての活躍の裏にある苦悩や音楽に対する情熱を追体験できる作品である。

物語は、彼のプロデューサーとなるトム・ハンクス演じるパーカー大佐の視点で進行する。パーカー大佐とエルヴィスに対する影響力は強く、作品としては、「エルヴィスとパーカー大佐の物語」と言っても良いくらいである。


この映画は娯楽映画としても優れていて、ミュージカルと行っても良いぐらい、全編を通じて音楽が流れている。音楽は黒人音楽であるリズム&ブルースやゴスペルから始まり、エルヴィスによって、ロックが形づくられ醸成していく。
そういった意味では、エルヴィスを知らなくても、一見の価値は十分あるだろう。

背景として重要なのが、人種差別や政治的な問題だ。エルヴィスの音楽は、そんな時代から生まれたものであり、もがき苦しみ、犠牲をともないながら、音楽に捧げた彼の人生に感銘を受ける。(★★★★)