これは、紛れもなく愛の映画である。表面的に見れば、猟奇殺人の問題作であるが、愛の世界を描いた作品だ。父親の愛に飢えた少女アレクシアと、失踪した息子への愛に生きる消防士。この二人の運命的な出会いによって物語は新たな局面を迎え、クライマックスまで一気に突き進む。感覚的には、ベティ・ブルーやトリコロール三部作の記憶が一瞬蘇ったが、それらには無い、多様性のが叫ばれる今の時代を感じさせる異次元の愛の世界を見せてくれる。物語は決して堕ちていくわけではなく、結実に向かいながらも、なんとも言いようのない悲哀を感じさせてくれる。
この映画の凄いところは、なんといっても主演ふたりの熱演である。
特にアクレシアを演じたアガト・ルセルの体を張った演技は強烈だ。まさに命がけ、ここまで捨身の演技は過去にあまり見たことがない。
本作は2021年、カンヌ映画際のパルムドール(最高賞)を獲得しているが、この作品を選ぶところは、実にカンヌらしい。(★★★★)
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