実在した90歳の運び屋に着想を得てこれだけのサスペンス映画を作り上げるって、さすが、クリントイーストウッド。しかも主演で88歳にしてこの演技。凄いとした言いようがない。
人のいい老人が、こずかい稼ぎのつもりで始めた仕事は麻薬の運び屋だった。アリーは自分のやっている事に犯罪であるという事に気づきながらも、その仕事を請け負うようになるが、その行為は、人生の大先輩がすべてを悟った上で自分の意思でとった行動である所に大きな意味がある。なぜ彼は犯罪と知りながら運び屋を続けたのか?
グラン・トリノの時と同じく、クリントイーストウッドから若い世代や、今の世の中に向けた、彼自身のメッセージともとれそうなセリフが心に残る。実際行っている事は決して許されるものではない。それにもかかわらず、彼が時折見せる人と人の関わりの大切さや、人間の弱さを見据えたやりとりに、人としての深さを感じる。
「運び屋」は一人の老人の晩年を描いた作品であるが、その中には、家族や友人、隣人といった社会的な環境の中で後悔をいだきながら生きてきた、一人の人間として(父として)の慈愛がある。
インターネットの普及で便利になったが、人との関わり合いが希薄になりがちなこの世の中、人は何を信じて、どう生きて行くべきなのか?そんな教訓が沢山つまった作品だ。(★★★★☆)

