死刑囚6人と教誨師の対話によるワンシチュエーション作品。映画のほとんどが、拘置所内に一室。死刑囚との対談シーンだ。教誨師についての詳しい認識がある人は稀有だろう。私もハリウッド映画などの死刑執行シーンで、牧師さんが出てきた程度しか認識がなかった。なんと厳しい職業だろうか。この映画にあるように実際もあまり変わらないのではないかと思ってしまう。
この映画はなんといっても大杉漣とその他俳優陣の熱演に尽きるところがあるが、脚本、構成もすばらしい。対話のシーンはかなりの長台詞を強いられるが、これをカット編集してしまっては、迫力やリアリティが伝わらない。顔のアップ、表情の変化、役者の力量が試される。教誨師と死刑囚との本音のぶつかり合いは見所十分。「なぜ、生きるのか」というテーマが心に突き刺さる。

 

死刑囚の心の救済と改心を導くの大杉漣さん、初プロデュース作品にして最後の主演作となってしまったが、生きることを深く見つめる良い作品でした。心よりご冥福をお祈りいたします。(★★★★)