人とのコミュニケーションがうまくとれない孤独な女と、人生を諦めかけていた男の恋の物語。なのであるが、その設定が秀逸である。二人は同じ夢を見て、夢の中で鹿になって出会う。ありそうで、あり得ない設定。鹿という設定も面白い。鹿はヨーロッパでは復活の象徴であり、夢占いでは幸運を表す。また、物語のロケーションが牛の食肉処理場という点も面白い。食肉処理場は生と死を意識せざるをえない現場であり、やりきれない絶望感やある種の割り切りのようなものを感じさせる。さらに偽りや欺瞞を感じさせる現実的なシーンが物語にリアリティを与えている。二人の物語は、日常生活の中で淡々と進むが、要所にインサートされる鹿の夢の映像が二人の心象とあいまって心に残る。

(★★★★)

 

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