今年一発目は、十三の第七藝術劇場で「ビラルの世界」というドキュメンタリーを見た。ドキュメンタリー映画というと、現実に起きているある物事に焦点をあてその現場を撮影した映像作品であるが、その中に何らかの物語性やテーマを編集で見いだして行かなくてはならない。ビラルの世界はインドの最下層の絶望的な生活をしている家族に密着、それでも前向きに生きることで、人々は生きる希望を見いだせるのではないか?という仮説をもとに映像化を行った作品だ。
取材対象となった家族は、雨風がなんとかしのげる程度の粗末な住宅密集地に住んでいる四人家族。
両親は二人とも盲目であり、映画のタイトルになっているビラル3歳とその弟(1歳)の二人の子持ちだ。カメラはこのビラルを中心に家族を追い続ける。いたずらざかりのビラルは、ほっておくと、すぐになにかやらかす。物を壊す、漏らす、泥だらけになる、泣く、転ぶ。もうめちゃくちゃだ。それでも目の見えない両親は体をはってしつけをする。
両親には収入がなく、親戚からの援助でなんとか日々をつないでいる状態。当然子供たちを学校にやるお金がない。
劇中。母親がインタビューで言ったことばに、「目が見えなくてよかった。汚い世界をみなくてすむから」という言葉があった。もちろん、どうする事もできない自分の状況を少しでも納得させるための発言であるが、この言葉だけでいかにすごい状況かがわかる。
父親は目が見えないばかりに、言葉巧みに騙され、政府と企業から貯金を罰金として穫られてしまう。極度の人間不信が彼を襲うが、子供たちのために次の働き口を探すのだ。
ビラルはそんな事は知る由もなく、無邪気に遊びまわる。純真無垢な笑顔、活力がみなぎっている。
前を向いて歩く事を諦めなければ人間どんな状況だってなんとかなる。
そんな希望を捨てない気持ちを持ち続ける事の大切さをこの映画は教えてくれる。(★★★☆)