監督、脚本がコーエン兄弟ということもあって、上映が始まるのを楽しみにしていた。とにかくこの映画、静かに進んでいく中での緊張感がすごい。
助演男優賞を獲得したハビエル・パルデム演ずる殺し屋の存在もさることながら、音楽やBGMを一切使用せず展開される演出がとても効いているのだ。
乾いた砂漠に残された銃撃戦の現場、腐敗し始めた死体と、残された大量のヘロインと200万ドルの現金。
この状況がこれから起こる出来事を予感させる。
現金を奪って逃げる男モス、消えたカネを奪い返すために雇われた不気味な殺し屋シガー、そしてこの物語のかたりべとなるトミー・リー・ジョーンズ演じる保安官のエド。それぞれの距離が少しずつ縮まり、緊張が走る。どうなるのか?
米国社会に対する不安や不満、壊れていく人間達。この国はどうなってしまうのか?そんなアメリカが持つ社会的な問題があぶり出しのように浮き上がってくる。
この映画が今のアメリカの状況を表すものであるなら、逃げる男がアメリカであり、殺し屋がテロリスト、保安官が、古きよきアメリカの先人たち、すなわちコーエン兄弟の声であるようにも思える。
「この国は人に厳しい」と年老いた元保安官がぽつりと言うシーンがあるが、この台詞がなぜか妙に印象に残った。お薦めです。(★★★★☆)
◎ノーカントリー