マルコムX(1992)
アフリカ系アメリカ人の急進的黒人解放運動指導者で、1965年に暗殺された、マルコムXの自伝映画。
本人の手記を基に、実に202分にも及ぶ、スパイク・リー監督作品。
幼少時から、KKKなどの白人至上主義者らからの迫害を受け続け、肉親も殺されるという不遇な生い立ちだったマルコム。
家族は離れ離れになり、マルコムも他所へ預けられることになる。
やがて学校に通うようになるマルコムは、学業はとても優秀であり、将来の夢を教師から尋ねられると「弁護士」と答えるほどの知的な少年だったが、担任からは、「君は優秀だが、弁護士は黒人の仕事ではない。手先も器用だから大工になったらどうだ」などといわれたりする。
やがてハイティーンになったマルコムは、盗みや賭博などをするチンピラに成り下がり、ついには友人とともに逮捕されてしまう。
刑務所に入ったマルコムは、そこで知り合った受刑者のべインズから、NOI(ネイション・オブ・イスラム)の存在を知らされ、もともと憎悪の対象だった白人たちを悪魔と呼ぶその教えに感銘し、また、その指導者である、イライジャ・ムハンマドに深い薫陶を覚える。
刑期を終え出所したマルコムは、その能弁の才を活かして各地で集会を開き、黒人解放運動家として大きな影響力を持つ人間となっていく。
が、ほかのNOIのメンバーたちは、急に大きくなっていくそのカリスマぶりに畏怖の念を抱くものもでてくることに。
組織の中が次第にきな臭くなっていく中・・・
黒人解放運動の指導者としての苦悩が次第に深まっていくのですが、その経過にあまり面白味はない。
NOIが次第に分裂していく様子も、史実を少しでも知っている方には特に興味を惹かれるところはないだろう。
数百年も虐げられてきた黒人たちの積年の恨みを全部晴らしてやろうというスパイク・リー監督の怨念にも似た情熱が202分もの長尺に込められているように感じる。
劇中のマルコムの心境の変化は、スピリチュアルな高みを目指してインドに渡ったのに、その指導者マハリシに絶望してしまったビートルズメンバーのジョン・レノンみたいだなと思った。
マルコムを演じた、デンゼル・ワシントンは熱演ですが、作品としては、全体的に冗長な感じが免れない。
重傷を負わされた黒人青年を救いに警察署に向かうシーンが、作中唯一ともいえる映画的興奮が盛り上がりを感じるシーン。
同監督としては「ドゥー・ザ・ライト・シング」(1989)のほうが、完成度も高く上出来だったと思う。
力み過ぎたかな・・・
『マルコムX』 Malcolm X(1992)
スパイク・リー監督 202分
1993年2月日本公開