ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013)
実在の人物、ジョーダン・ベルフォートの『ウォール街狂乱日記 - 「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生』を原作とした、マーティン・スコセッシ監督作品。
ささやかな小市民だった主人公のジョーダンが、証券界でのし上がっていき、金とドラッグとセックスに溺れていく物語で、180分にも及ぶ大作です。
いかにも、スコセッシ監督が好みそうな題材。
転落物が好きですからね。
まず感じたのは、スコセッシ監督は要領よくなった。
3時間の尺を、サクッと見せてしまう。
それは、代表作といわれる従来作に比べて、主人公が思い悩む場面を極力明るいトーンで描いているからだろう。
急所でのクローズアップの多用は、まるでスピルバーグの映画を思い起こさせる。
この作品の主人公が、転落するばかりではなく、常に上昇志向なんですね。
共同プロデューサーにも名を連ねている、主演のレオナルド・ディカプリオも熱演だ。
ドラッグでハイになった時の演技など、どことなくジャック・ニコルソンを思わせる。
が、作品の性格上仕方ないかもしれないが、ちょっとオーバーアクトかなと感じた。
こんなハチャメチャの物語が、実在の人物の回想録であることに驚かされる。
噂ではよく聞く、司法取引ってこんな感じなのですね。
細部をよく観ると、とても陰性な物語なのに、明るい印象があるのは、スコセッシ監督が本作をフィルム撮影ではなく、デジタルで撮影したことも関係あるかもしれない。
フィルムには、画面には映らない熱が沁みているのだが、本作は乾いている。
反論も多いと思いますが、本作はスコセッシ監督らしくないと感じました。
金を儲けて豊かになろうと主人公が社員に熱弁する場面は、ネットワークビジネスの勧誘会場みたいで面白かったですが。
あと、レイティングの対象になったセックスシーンやドラッグシーンも乾きすぎていて大したことないです。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』The Wolf of Wall Street(2013)米
マーティン・スコセッシ監督 180分
2014年1月(平成26年)1月日本公開