地上より永遠に(1953)
第26回アカデミー賞にて、作品賞、監督賞他8部門を受賞した作品です。
1941年夏。
第二次大戦の火ぶたを切ることになった日本軍による真珠湾攻撃の直前の、ハワイ・オワフ島のスコフィールド米軍基地が舞台。
この兵営の駐屯地に、プルーイット(モンゴメリー・クリフト)が赴任してくる。
この駐屯地の中隊長である、ホームズ(フィリップ・オーバー)はボクシング好きで、プルーイットがボクシングが強いということをあらかじめ聞いていたので、自分のチームに入れようとする。
しかし、プルーイットはボクシングをやろうとせず、それがきっかけで、いじめに近い過酷なしごきを受けることになる。
人が良くて人格者の曹長のウォーデンは、プルーイットにこの地でうまくやるためにと彼に助言をするが、頑としてボクシングをやろうとはしない。
そんなプルーイットにも兵舎内で友人ができた。
酒が好きで陽気な人間、アンジェロ・マジオ(フランク・シナトラ)という人物だ。
二人は意気投合して酒場へ出かけ、女性と過ごすのが楽しみになり、プルーイットは、そこで働いていたロリーン(ドナ・リード)と恋に落ちる。
一方、プルーイットの理解者である曹長のウォーデンは、大尉の妻、カレン(デボラ・カー)と不倫関係で、人目を忍んで密会するような仲だった。
そして・・・
南国のハワイで繰り広げられる複雑な恋愛模様は、誰に共感できるものではなく、プルーイットが上官から受けるしごきも、そんなに悲惨な風には見えない。
たいして面白くないエピソードの積み重ねに見える。
しかし、友人のマジオが友軍に射殺されてしまうシーンから、それまでの平坦な展開が、フレッド・ジンネマン監督の狙いだったことがわかってくる。
士官になるのに興味のないウォーデンが、それをきっかけにあきらかに態度が変わっていくさまが興味深く、いよいよ12月7日(現地時間)、日本軍による真珠湾空襲が始まった瞬間から、それまでの恋愛やら人間関係などどうでもよくなっていくのだ。
のどかな南国の生活が有事により激変し緊迫する。
舞台が真反対になってしまうことで、人間は、組織はどう変わるのか。
それが本作の大きなテーマのように思えます。
ラストに海に投げ捨てられる花輪に感じる無常が余韻を残します。
砂浜で抱き合うバート・ランカスターとデボラ・カーの抱き合うシーンの写真がメインで使われているので、未見の方は甘いラブ・ストーリーを連想されるかもしれませんが、全く逆の、極限状態に追い込まれた時の人間を描いた鋭い人間ドラマであります。
恋愛ドラマを期待すると確実に拍子抜けするでしょう。
『地上より永遠に』Here to Eternity(1953)
フレッド・ジンネマン監督 118分
1953年(昭和28年)10月日本公開