シンシナティ・キッド(1965)
スティーヴ・マックイーンの人気がまさに上昇気流に登ろうとしているころの主演作で意欲作。
若くギラギラした魅力満載です。
しかし本作は、『荒野の七人』や『大脱走』のようなアクションで魅せる作品ではありません。
心理戦の要素が多い、“スタッドポーカー”のギャンブラーを演じます。
ニューオリンズではギャンブラーとしてその名が轟いていた主人公のシンシナティ・キッドことエリック・ストーナー。
そんな折、ニューオリンズにポーカープレイヤーの大物“ザ・マン”ことランシー・ハワードがやって来た。いつかランシーと手合わせをと考えていたストーナーは、業界の長老に直訴して、ハワードとのポーカー対決に挑むのだが・・・
まず前提として、本作を鑑賞する前にポーカー、その中でもスタッドポーカーのルールーを知っておかないと、本作の面白さはわかりません。息詰まるクライマックスの意味も分からないと思います。
ポーカーというのは、トランプゲームの一つなのですが、例えば自分の手が悪い時も平静を装い、同じテーブルで対戦する相手がビビって降りてしまえばたとえ持ち手が相手より弱くても勝ったりできるのです。
自分の手が弱くても相手をビビらすためにどんどん掛け金を増やしていくところが、このゲームが心理戦と言われる所以。
そして本作は、このスタッドポーカーのシーンが早いカットで目まぐるしく展開するところが見どころ。
観客に分からない最後のカードが開かれるシーンのスリルはたまりません。
ゲームを進行するにあたってのディーラーの重要性もよくわかるように作られています。
ディーラーは直接ゲームには参加しませんが、ディーラーの腕にこのゲームがギャラリーを惹き付けるかどうかかかっているのです。
だから、主人公の女性関係のシーンが不要だと思いました。
せっかくのいいテンポがその部分で崩れてしまっています。ノーマン・ジュイソン監督どうした!
主人公が最後に対戦するランシーはさすがの貫禄がありましたが、裏でゲームを操ろうとする悪役の小物感も残念。
いかにもニューオリンズだなあと感じるオープニングなどに地方色が良く出ていていい作品なのですけどね。
マックイーンもカッコいいです。
同じギャンブラーを主役にした作品で、日本の『麻雀放浪記』(1984)に似た雰囲気を感じました。