郵便配達は二度ベルを鳴らす(1943)ルキノ・ヴィスコンティ監督版 | あの時の映画日記~黄昏映画館

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 郵便配達は二度ベルを鳴らす(1943)
ルキノ・ヴィスコンティ監督版

 

ジェームス・M・ケイン原作の本作。

幾度か映画化されていますが、私、実は1981年の、ジャック・ニコルソンとジェシカ・ラング主演、ボブ・ラフェルソン監督作しか観たことがありませんでした。

 

 

ルキノ・ヴィスコンティ監督が、本作で長編映画デビューしたというのは知っており、ずっと観たかったのですが鑑賞機会がなく、今回配信サービスでようやく鑑賞することができました。

 

ストーリーは有名ですのでご存知の方が多いと思うのですが、年の離れた主人と暮らす若い人妻が行きずりの若い男と不倫関係になり、次第に邪魔になってきた主人を事故に見せかけて殺してしまうのだが・・・というストーリー。

 

前にみた1981年版では、ニコルソンとラングの絡みのシーンが強烈で官能的だったのが印象的だったのですが、本作の方は時代もあって、そのシーンは匂わすだけにとどめています。

 

その代わりと言いますか、本作では主人公のジーノとジョヴァンナ(原作ではフランクとコーラ)のクローズアップを多用した心理描写に重点を置いているように感じました。

原作で重要な役割を占める弁護士がほとんど登場しないなど、サスペンス要素は少し抑え目でしたね。

 

その分、本作での主人公ジーノのクズっぷりは際立っていると思います。

1981年版では、主演のニコルソンの存在感もあり、ハードボイルドの匂いがしていたのですが、本作の主人公は本当にクズでしたね。

 

常に現実逃避をして、逃げる先はいつも女性。

何故か異性にはモテるが同性には愛想をつかされるタイプ。

それが際立っているので、ラストの因果応報が強調されたように感じますね。

 

戦時中のことでスタジオが使用できずオールロケで撮影。しかも反道徳的内容なので上映禁止に追い込まれたいわくつきの作品。

しかも、原作者には無断で映画化したらしいです。

 

その後のヴィスコンティ作品のように、重厚な雰囲気は感じられませんが、ヴィスコンティ夜明け前ということで鑑賞しておいていいと思います。

結末はわかっていても最後まで観られます。

 

タイトルOssessioneとは“妄執”という意味とのこと。

小説の原題である、“The Postman Always Rings Twice”の意味があまり感じられないストーリーとタイトルにしたのは、やっぱり無許可映画化の負い目があったからなのだろうか

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』Ossessione(1943)

ルキノ・ヴィスコンティ監督 140分

1979年5月日本公開