ウィークエンド・シャッフル(1982)
日本映画でもタブーなしのこんなに毒のあるコメディ作品があったんだという驚き。
映画的には不器用ながら、他の作品にはないオリジナリティがあります。
原作は筒井康隆の小説とのこと。
映画化は絶対に不可能と言われていた作品だったこの作品を、ピンク映画出身の中村幻児が紆余曲折ありながら自らのプロダクションで映画化しました。
ある郊外の住宅に住む3人の家族。
その日、妻(秋吉久美子)の友人が訪ねてくるというのでサラダを作っていたところ、マヨネーズが無いのに気付き、夫(伊武雅刀)に買い出しを頼む。
夫は散髪ついでに買い物を引き受けるが、
夫が出かけている間に息子が誘拐される事件が発生。
身代金500万円を要求されてうろたえているところに押し売りのセールスマン(泉谷しげる)が侵入してきて・・・
ここからの具体的描写は自己規制として控えますが、冒頭の覚せい剤狂いの女から始まり、ついには全員壊れていきます。
いやあ、凄いものを観たって感じですね。
オープニングの犬の生き埋めシーンがたどたどしくてどうなる事かと思いましたが、終わってみればそれも演出上の作戦だったのかと思うほど。
展開も、それはありえないでしょと最初は突っ込んでいたのですが、物語が進むにしたがってこの悪夢的ファンタジーワールドに飲み込まれて何も言えなくなりました。
最初は、退屈している主婦の役なのかなあと思っていた秋吉久美子が次第にバカになっていくところの凄さよ。
不自然な設定を自然に演じて観客を納得させてしまうのです。
登場人物全員が狂っていくのですが、押し売りセールスマンで秋吉久美子を強姦してしまう泉谷しげるの軽薄な悪党も特筆に値するほどの怪演。
映画化の際に、最初にこの役のオファーを受けた松田優作が嫉妬したらしいです。
秋吉久美子の家を訪問する3人の友達(池波志乃・渡辺えり子・秋川リサ)の存在感も凄いです。
色に溺れて壊れていきます。
その壊れ方たるや、下手なホラーより怖いですよ。タブーに挑みながらも観客を満足させようとしてきたピンク映画出身の中村幻児監督のセンスが光る!。
豚が暴走する場面は今村昌平監督の『豚と軍艦』(1961)を彷彿とさせます。
デヴィット・リンチを思わせる耽美的な狂気をはらみながらのクライマックスがいいなあと思っていると、まさかの『犬神家の一族』に!
そうくるか!!!
ブラウン管から生首が笑いかけるラストクレジットまで、世界が破滅する物語よりもブラックな展開で、ここまで振り切っていると痛快です。
原作者の筒井康隆は、本作は小説とは別物と言っているらしいです。
年齢制限付きの予告編
『ウィークエンド・シャッフル』(1982)
中村幻児監督 104分
1982年10月公開