モン・パリ(1973) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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 モン・パリ(1973)

 

シェルブールの雨傘』(1964)の、ジャック・ドゥミ監督、カトリーヌ・ドヌーブコンビによる、男性が妊娠してしまうというナンセンス・ロマンティックコメディです。

 

ドヌーブの相手役で妊夫役をマルチェロ・マストロヤンニが演じています。

自動車教習所の教官をしているマルコ(マストロヤンニ)は、どうも最近体調が悪い。

おまけに運動不足なのか食生活のせいなのかお腹が出てきている。

 

恋人で美容院を経営するイレーヌ(ドヌーブ)は、そんなマルコを心配して医者に診てもらうように勧める。

 

そして、イレーヌのかかりつけ医に診てもらうのだが、どうも症状がはっきりしないために、婦人科の専門医を紹介され、診断の結果、マルコの妊娠が発覚する。

 

「人類が月面を歩いて以来の最も重大な出来事」としてこの男性の妊娠は学界でも発表され、ファッションメーカーやマスコミもこぞって注目し、マルコは急に時代の寵児に。

 

どうやら、化学物質を含んだ食物を摂取し過ぎた影響で人体が何らかの変化を起こして男性も妊娠する身体に変化したのだろうとのこと。

 

大々的に本件が発表された後、世界中のあちこちで同様の事例が報告されるようになり・・・

 

理屈っぽく観ることはないですが、現在異常に声の大きいジェンダー・フリー推進者の方の感想を聞いてみたい内容です。

究極の男女平等の作品ですよね。

 

だんだんお腹が大きくなってきて、妊婦の苦労を感じ始めるマストロヤンニのコメディ演技が相変わらず楽しい。

まさにピッタリの役柄だと思います。

 

男性用マタニティグッズのポスターがパリの市街に張り巡らされてマスコミが過熱していく様子も面白い。

 

マルコの妊娠が世間に知れ渡っても、友人知人がさほど驚くこともなく、妙な興味も下世話な噂も示さず普通に接しているのはお国柄かな。

男女平等を強調するための演出だったのか。

他の国の監督なら、もっと大騒ぎしたドタバタコメディ調にするか、あるいはもっと深刻な社会派コメディになるはずの題材ですが、ドゥミ監督はこのナンセンスをホームドラマの延長線上にあるような描き方をしています。

 

ラストもあっさりとしたハッピーエンド。

ゴシップ的に報道された新聞がゴミとして流されてしまうのが余韻を誘ういいラストシーンですね。

 

『モン・パリ』L'événement le plus important depuis que l'homme a marché sur la Lune(1973)仏

ジャック・ドゥミ監督作品 96分 

1973年12月日本公開