ローマの休日(1953) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

ハリウッドから赤狩りで追われていたダルトン・トランボの原案をウィリアム・ワイラーが監督して映画化。

大ヒットとなり、今や不朽のラブ・ストーリーとして燦然と輝く名作です。

 

窮屈な生活を強いられているある国の王女が、

滞在先のローマのホテルから逃亡。

睡眠薬が効いてきて路上で寝込んでいるところに記者のグレゴリー・ペックが通りかかり保護。

 

ペックは彼女が王女であることに気付くが、

二人はお互いの身分を偽りローマの街中へ。

 

あわよくば王女の独占スクープ記事がとれるかもと、

少しの下心を持ち彼女に同行する彼だったが、

その奔放で飾らない王女の性格に次第に惹かれていき・・・

 

この作品のヘップバーンはまさに妖精ですよね。

ペックのアパートを飛び出して床屋に入りそれまでの長い髪をバッサリ切ってしまうシーンの清々しさと言ったら。

 

少女のようなお転婆の表情を見せたと思えば、

王女としての息を呑むような気品ある美しさも魅せてくれる。

偶然を装って再会する二人のローマ観光名所めぐり。

ジェラートを食べる場面から始まって次々と出てくるローマの名所をこの作品を観た人ならきっと巡ってみたい思うでしょう。

ローマの街はこの作品のもう一人の主役であります。

ほろ苦さと切なさが広がるラストシーンもいいですよね。

身分がわかった後の最後の会話のシーンでエンディングにするのではなく、その後誰もいなくなった会場に背中を向け二歩、三歩と出ていく姿をラストにしたのもいい。

妙なハッピーエンドよりも心に沁みます。

 

私は、

『真の名作は決してリメイクされない』と思っているのですが、

この作品にも当てはまりますね。

この作品のリメイクなんて考えられますか?

(スピルバーグ監督が「ウエスト・サイド・物語をリメイクしたのは大変複雑な気持ちになりました。)

 

後年、

監督のウィリアム・ワイラーは、

この作品をテクニカラーで撮れなかったことを後悔していたと聞きます。

でも、このの作品はモノクロがいいよ。

カラー作品よりももっと豊潤な色彩が想像できるから。

夜中に見る夢に色がついていないのと同じように。

 

『ローマの休日』Roman Holiday(1953)

ウィリアム・ワイラー監督 118分