グラン・トリノ | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

『グラン・トリノ』(2008)

クリント・イーストウッド監督作品

 

当時、

クリント・イーストウッド俳優引退作品として話題となった作品です。

 

彼が演じるのは偏屈で頑固、

愛国主義者で人種差別もあからさまな朝鮮戦争の退役軍人コワルスキー。

除隊した後は自動車工場で働いていた。

 

そんな彼も年老いて、

今は缶ビールを飲みながらテラスから自慢の旧車“グラン・トリノ”を眺めるのが楽しみだった。

 

平穏で静かな生活を望む彼の隣に引っ越してきたのは、

にぎやかな東洋人の大家族。

その中に少年タオがいた。

 

ある日少年タオが、

不良グループにそそのかされてコワルスキーの愛車グラン・トリノを盗もうとするが、

失敗する。

 

そして後日、

タオと姉のスー、

そして母親が一緒にコワルスキーの家にやってきて、

タオが車を盗もうとしたことを謝りに来る。

 

そして詫びの代償として、

タオがコワルスキーの元で働くことになる。

 

差別意識丸出しのコワルスキーは、

その申し出や東洋人たちの感謝の気持ちである贈り物を断っていたが、

あまりのしつこさに渋々タオを雇うことを承知する。

 

そして、

黒人のギャングに絡まれていたスーをコワルスキーが助けたことから、

彼はスーからホームパーティーに誘われる。

 

そうしているうちに、

頑固で強情だった彼の性格が次第に変わっていく。

 

それと同時に、

ひ弱な少年だったタオもコワルスキーの指導によって逞しくなっていき、

紹介によって建築現場で働くようになる。

 

しかし、

タオがしつこく不良グループに絡まれることによって、

物語は悲劇に向かって進んでいく・・・

 

なぜ主人公がこんなに偏屈もので差別主義者なのかは、

物語が進むにしたがって明らかにされていくのですが、

回りくどい感じになってしまったのはちょっと残念。

 

だけど、それ以外の物語の語り口はさすがの物で、

テンポよく、時に笑いを挟み込みながら退屈させない。

 

タオの姉スーとの関係も爽やかで、

異文化として受け付けることのできなかった東洋文化への橋掛けとしてとてもいい味を出してます。

 

時折他の方の本作のレビューを見てみると、

「東洋蔑視が酷い」だとか「白人主義視線が癪に障る」とかいう見当はずれのコメントが散見されて呆れてしまう。

 

作劇上の演出としてああいう描き方をすることで起承転結が盛り上がり、

主人公の心の変化もわかりやすくなる。

終盤のタオの描き方などをみていると、

東洋人蔑視どころか、人間を平等に描いているのがわかるはず。

そのへんを変にうがった見方しかできないのは、

相当心がひん曲がっていると思う。

 

自分の人生の象徴として大事にされる車“グラン・トリノ”。

その鍵をタオに渡すのですからね。

 

それにしても自分の人生の決着のつけ方はカッコいいですね。

カッコいいというと語弊があるかもしれないですけど、

この作品の場合それ以外の相応しい言葉が見つかりません。

 

「Make my Day」なんて渋い言葉をはいていたころもカッコよかったですけど、

老齢になってますます渋みに磨きがかかるなんて凄いですね。

あんなじいさんになりたいなと本当に思いました。

 

 

『グラン・トリノ』Gran Torino (2008)

クリント・イーストウッド監督 117分

 

『僕の好きな映画(洋画編)BEST200』41位~50位は次回に!

よろしくお願いします。