肉体の門(1964)鈴木清純監督バージョン | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

星の流れに 

身をうらなって どこをねぐらの今日の宿

荒む心でいるのじゃないが 

泣けて涙も かれ果てた 

こんな女に誰がした
 

劇中歌「星の流れに」

 

終戦直後の混乱の時代。

生きていくために自然発生的に生まれた街娼たちの集団。

 

『縄張りを守る』『男とヤル時は金を取る』『MPとは寝ない』という約束事があり、

掟を破った者には仲間から激しいリンチを受ける。

 

しかし彼女たちも若い女性。

若くたくましい男性が現れると、

本能的な欲望から恋心というものを感じていき・・・

 

鈴木清純監督は、

この物語を舞台を意識したようなシンボリックな演出で見せようとする。

 

黒人の牧師を誘惑して身体を預け、

食べていくために神様への裏切りを暗示するシーン。

 

掟を破ってリンチを受けている仲間を見ながら、

自らも性を感じていく場面。

 

性と生。

どちらも人間の本能として抗えないことを見せつけてくる、

残酷な牛の屠殺シーン。

 

ラスト、

米国の国旗は青空にたなびいているのに、

日本の国旗はドブ川に沈んでいくシーン。

 

過剰ともいえる色彩やライティングを駆使しながら、

そんな象徴的な場面を並べていって、

踏みつけられながらも負けずに立ち上がっていこうとする気概と、

相反する絶望感を表現する。

 

間接的な表現に隠された鈴木監督のメッセージをどれだけ感じ取ることができるか。

この作品の面白さのカギになっているような気がします・・・

 

再映画化版(五社英雄)は、

より刺激的な描き方をしてセンセーショナルな話題を呼びましたが、

奥ゆかしいとも思える描写の鈴木清純監督版の方が好きです。