『仁義なき戦い 代理戦争』
1973年(日) 深作欣二監督作品
シリーズの第三作目です。
前作が、大友、山中の個人にフォーカスを当てた作品だったのに対し、
本作は、第一作の流れをくむ群集劇に戻っています。
実質的には本作が二作目にあたるように思います。
その群集劇の中で存在感を示すのが、
何かと広能(菅原文太)と反目する打本(加藤武)。
保身のために敵味方関係なく見境なしに他の組と盃を交わし、ヤクザの組長とは思えないほど弱腰で優柔不断。
この頼りない組長のせいで多くの若者が血を流す。
加藤武の情けない演技は、
シリーズ中通しての悪役(全員ヤクザだからみんな悪役だが)の山守(金子信雄)をもかすませる。
そして、
広能の恩師の口添えで広能組の部屋住みとして母親とともに広能組に訪れる倉本(渡瀬恒彦)も印象的な人物だ。
鉄砲玉になって名を上げようとして返り討ちにあい射殺される。
広能らが葬式を行っているところにも襲撃にあい、
母親が持っていた遺灰まで撃たれて、
さらには車に轢かれてぐしゃぐしゃになるシーンは、
遺骨を握りしめる広能と同じくやるせない怒りが生まれる。
この作品から、
シリーズ通して重要人物になる武田(小林旭)が登場する。
サングラスの奥に野心を抱いているようなインテリヤクザ。
役柄上病み上がりという設定なので派手な見せ場は少ないですが、
やっぱり存在感は抜群。
広島中にその名が広まった広能はますます貫禄で、
『広島死闘篇』では少々物足りなかったが、
本作では見せ場がたっぷりあります。
脇役ながら必ず作品に爪痕を残すのがチンピラ役の川谷拓三。
本作では、愛人にテレビを買ってやるため勝手に広能の経営するスクラップ工場から鉄くずを売りさばいて広能の怒りを買いボコボコにされた挙句、責任を取って左手を自ら切り落とします。
物語の盛り上げ方もうまく、
シリーズの中では上出来の部類ではないかな。
シリーズものにありがちなたるんだところもなく、
おススメの作品となっております。
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