『カフェ・ソサエティ』 原題:Café Society
2016年(米) ウディ・アレン監督作品
今年も観れてよかったです、ウディ・アレン作品。
相変わらずの懐メロムードのアレン節全開ですが、
その洒落っ気が衰えてなくて本当にうれしかった。
舞台は1930年代。
1935年生まれのウディ・アレンが憧れを抱く時代。
ニューヨークから若者が、
ハリウッドで財を成した叔父をたよって、
退屈な日常から夢を求めてハリウッドにやってきた。
叔父から紹介された女性とたちまち恋に落ちる若者だったが、
その女性は叔父ともただならぬ関係がある女性で・・・
ということで、
一人の若者のちょっと、
いや、かなり切ない成功物語を描いたロマンティック・コメディです。
同じセレブリティたちの生活をシニカルに描いた、
『セレブリティ』よりも口当たりがまろやかになっています。
ストーリーにはあまり触れないでおきますが、
世の映画評を見てみると、
アレン監督のタイム・スリップコメディ、
『ミッドナイト・イン・パリ』に関連したレビューが多いのに気づく。
アレン監督史上最高のヒット作となった同作と比較するのは、
宣伝マンとしては常套的な手段であるが、
こちらのほうが、もっとほろ苦い。
アレン監督作品として比べるならば、
映画ファンの切ない夢物語を映像化した、
『カイロの紫のバラ』のほうがより近いように感じる。
『カイロの紫のバラ』では、
決して叶うことのない銀幕のスターとの恋が現実となり、
やがてその夢が覚めてしまっても、
その夢の相手を思い続ける。
この作品の二人のヴェロニカとの恋模様も、
それに似た感じがしてとてもじれったく、おかしく、悲しいのだ。
ラストの5分間にそれがギュッと濃縮されている。
もはや伝説と化しているハリウッドの巨人たちが、
何気ないセリフのなかにサラッと出てくるのが、
映画ファンとしてはとてもうれしいし、
ハリウッドの映画館に、
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの、
『有頂天時代』のポスターが張ってあったりするのもうれしい。
カウントダウンパーティーのシーンでは、
これも、
今や懐かしの作品となってしまった、
『ラジオ・デイズ』を思い出してしまった。
(ダイアン・キートンが歌う場面ね)
ブラックなコメディーシーンを交えながら、
映画ファンを唸らせてくれるアレン節。
かがやきて やがてかなしき 花火かな・・・
なんて詠んでみたくなる一篇でした。
ごちそうさまでした。