『逆噴射家族』
1984年（日） 石井聡亙監督作品
ATG作品のなかでは、もっとも振り切っている作品だと思う。
原作・脚本は、近頃は論客家としても有名な「ゴー宣」の小林よしのり。
ディレクターズ・カンパニーの作品だけあって、
スポンサーや世論を気にせず、
めちゃくちゃに撮っている。
念願の一戸建てを購入し、
新生活に夢が膨らむ小林（小林克也）一家。
妻（倍賞美津子）、息子（有薗芳紀）、娘（工藤夕貴）の家族は、
全員一癖ある人物だったが、
それなりに幸せに暮らしていた。
そんな小林一家に、
小林の父（植木等）が居候してきてから、
家族の歯車が狂い始め、
ふと、床下からシロアリを発見したことから、
一家の狂気のスイッチがはいってしまう・・・
平凡な会社員から狂気の父親に変貌する、
小林克也好演。
無責任を引きずってきたような植木等のコメディ演技もはじけている。
そして娘役の工藤夕貴。
この作品がデビュー作。
アイドルを夢見る少女でありながら、
何故か女子レスラーの扮装をし、
挙句に植木等に縄で縛られてしまう。
この頃から不思議な魅力のある少女でした。
2年後の“台風クラブ ”の好演が、
偶然に引き出されたものではないことがわかります。
家族での殺し合いともいってもいい、
戦争映画のような描写の後のエンディングは、
これ以上ないほどシュール。
やはり石井監督、只者ではない。
タイトルは、日航機羽田沖墜落事故に由来。
「逆噴射」は当時の流行語でもありました。
あまりに過激すぎて、
笑えないシーンがあったのが、ぼくにとっては残念。
ただ、ここまで過激にしないと面白さが半減してしまうのもわかるから、
痛し痒しといったところでしょうか。
「ローズ家の戦争」の拡大強化版の趣もありです。
でも、面白いですよ。
テレビじゃ絶対無理ですけどね。
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