『姿三四郎』
1943年度(日)黒澤明監督作品。
世界のクロサワの劇場用初監督作品です。
同名小説に感銘を受けた黒澤明が自ら脚色し演出した作品。
はじめに、戦時中の検閲により、監督のいに沿わないカットがされたこと、
また、カットされたフィルムが今や行方不明になっていることがクレジットされます。
一人の若い武術家が腕を上げていき、
人間的にも成長していく姿をダイナミックな演出で描いてます。
ストーリーは省略しますが、
デビュー作から天才のキラメキが感じられます。
場面転換のワイプなど、
そのまま「スターウォーズ」に使われています。
例えば、長い時間経過の場面。
三四郎が脱ぎ捨てた下駄に、
雨、子犬、雪、木の葉、川に映る夏祭りの提灯といった、
短いショットの積み重ねによって、見事に時間経過を表現しています。
手がつけられないほど強くなった三四郎が、
沼に飛び込み、綺麗な月とその光によって美しく光る花を見て、
悟りを開く場面。
たいへん印象深いシーンですが、
「スターウォーズ・帝国の逆襲」で見事にオマージュされてます。
柔道の試合のシーンは、映画的に誇張されたものであるが、
相手を投げ飛ばしたあと、少しの間を置いて、
障子が落ちてくるのもうまい。
物語はひとりの女性をめぐって、一対一の決闘シーンとなるわけですが、
このクライマックスシーンこそ、黒澤ダイナミズムの決定版。
漫画家の故石森章太郎は、次のように書いてます。
「三四郎は、宿敵檜垣源之助と対決することになる。
風の強い夜、ススキの原、月は中天にこうこうと冴え、
ちぎれ雲が渦巻いてその面をよぎる。
ススキの穂波が、砕ける波濤のように白々とざわめきに揺れ、
雲の影が、悪魔の黒い羽根のように、不気味に、不安に原を駆け抜ける。
やがて、はげしく身をよじるススキの遠い茂みを分けて、
吠える風に長髪をさかまかせた、檜垣の黒い長身が・・・」
うまいですね。
とても的確に名場面を解説しています。
僕にはこんな文章かけません。
制作された時代が時代だけに、
男女の恋愛感情表現は、とてもソフトです。
監督にも知らされずにカットされた場面には、
ライバル檜垣を深く掘り下げた場面などがあったという。
できることなら、ノーカット版を観てみたいものです。
この不世出の天才監督のデビュー作。
観ておいて損はないと思います。
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