赤ちょうちん | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

1970年代。

世の中は天地真理や麻丘めぐみ、南沙織とアイドルブームだった。

僕は今イチ乗れなかったんですよね。

何か違和感を感じてました。


一番最初に買ったレコードは、

太田裕美の「木綿のハンカチーフ」。


学生運動なんかやっていたのは、少し世代の上の人たちで、

僕らの世代はそれを離れたところから、少し冷めた目で見ていた。


’70年代の映画も、その初頭と終わりの頃ではまるで雰囲気が違う。


そんな時代のエアポケットだった頃の映画は独特の臭いを持っていた。

一口に’70年代とひとくくりには出来ない感触があった。


1974年度(日)

藤田敏八監督作品。

『赤ちょうちん』


は、そんな不安と苛立ちと諦めと絶望を感じさせてくれる作品です。


主人公(高岡健二)のアパートになんとなく転がってきた17才の女の子(秋吉久美子)。


女の子は恐ろしいくらい純真で優しい心の持ち主。

女の子には「鶏電感」という神経症状を持っており、

鶏に対して過敏な反応を示すという一面を持つ。


同棲生活を始めた二人。

住まいを転々とする二人だが、行く先々でこれでもかというくらいアクシデントが襲う。


主人公はなんとなく乗り切っていくのだが、

女の子はその優しすぎる性格が災いとなり、次第に神経を病んでいく。


二人の間には子供ができる。

当時の時代背景として、若すぎる母親に対する世間の好奇な視線も突き刺さる。


二人のアパートに転がり込んでくる詐欺師(長門裕之)。

そのサギ師に対する主人公とその仲間によるリンチが壮絶。


女の子を育ててくれた最愛の祖母の死。

なんとなく現れる兄。


どこからか飛んできた鶏の羽を目で追い、

狂気に走る秋吉久美子がすごい。

とんでもなくホラーな展開になります。


全く救いようのない物語なのに、

妙に希望をもたせるエンディング。


どこからか狂気なのかがよくわからない空気感が、

時代を切り取っているようです。


秋吉久美子好きだなあ。

斎藤耕一監督の「旅の重さ」 のオーディションでは、

高橋洋子に負けて、主役の座を譲ったという彼女。

しかし現在の存在感は、断然上ですよね。


「同棲」のもつ甘いイメージを木っ端微塵にしてくれるこの作品。

オススメです。


がちゃん


ペタしてね 読者登録してね


赤ちょうちん [DVD]/秋吉久美子,高岡健二,長門裕之
¥2,380
Amazon.co.jp