未知への飛行(1964)
米ソ冷戦時代の核戦争の恐怖を描いたという点で、キューブリック監督の『博士の異常な愛情』と比較されることが多い本作。
『博士の~』が、実に皮肉に満ちたブラックコメディ仕立てであったのに対し、本作はそのような要素は全く入れず、ストレートな社会風刺劇になっています。
したがって、その緊張感は最後まで張り詰めたままでラストまで突っ走ります。
世界皆殺し爆弾で、地球の滅亡を暗示させる『博士の~』のラストのインパクトも相当でしたが、ニューヨーク市民の市井生活をストップモーションで見せて終わらせるこちらも、なかなかなインパクトを残します。
軍事機密としての作戦が、自国を危機に陥れていくという展開もサスペンスたっぷりで手に汗を握りますが、好戦的な軍事評論家に対するシニカルな視線も相当なものだ。
シドニー・ルメット監督は『12人の怒れる男』でほぼカメラが外に出ず、室内での会話のみで見事な演出を見せましたが、本作も、ほぼ、会議室での会話のみなのに、核戦争の緊張が臨場感を持って感じさせます。
見事な演出だと思います。
会議室の連中の表情に、今一つ真剣味が足りないように見えるなか、核爆弾を搭載した戦闘機のパイロットがミリタリズムを発揮する場面。
非人道的行為を行おうとしている彼の行動こそが、それが一番人間的に見えるという、なんとも逆説的真理を、これほど痛烈に表現した作品は誠に稀有である。
現代でも色あせない社会派サスペンスの傑作。
おすすめでございます。
追記
『博士の異常な愛情』と本作の製作時期はほぼ同時期(1964年)だったのに、日本での公開は、ようやく1982年になってからでした。
『未知への飛行』Fail Safe(1964)
シドニー・ルメット監督 112分
1982年(昭和57年)6月日本公開
