今日のネタはちょっとすごいぞ。

 昨日 のつづきだ。



 何年ぶりかのスーツを着て、1355に家を出て、自転車で岡山駅西口からさらに北へ。

 だいたい40分で着いたその有限会社の警備会社は玄関に名前が書いてなかったらただの民家だった。


 履歴書の内容がうすっぺらいのは仕方ないとして。


「うちは社員もアルバイトも同じで、一応交通警備のアレだから30時間。4日分は研修受けてもらって、それから本番っちゅーことになります。あとは当日欠勤だけは絶対駄目ですから。」

「制服はあります。消耗品は自腹やけど。寮もきちんとまじめにやってくれるんならOKですよ。」

「一日立ちっぱなしの仕事ですけど、大丈夫ですかな。」

「いつからできます?じゃあ明日から。研修しますんで10時に来てください。」


 できるかどうかはわからんが、やらなしゃーない。米も喰えんし。



 まぁそこまではいい。そこまでは。

 この先がすごい。まぁ聞け。



 その布団屋のあんちゃんに面接の結果教えてくださいと云われていたんで、お礼と結果を告げてきた。


明日から研修ですわ、ありがとうございました。

「おめでとう、良かったじゃないですか!」


 このときの彼は素直に喜んでいてくれた、そう信じたい。



 晩方、そのあんちゃんから電話があった。


「今近くまで来てるんですけど、いいですか?」


 彼はDという会社で布団の訪問販売をやっている。

 そして、俺の仕事が決まったことで、無職ニートでは組めなかったローンが組めるようになった。

 実は俺と同い年というか同学年だったそのあんちゃんはもう8年この仕事をやっていた。

 その経験が産んだ巧みなセールストークもあっただろうし、就職先を紹介してもらったという負い目もあった。

 趣味も合った(フリが上手いだけなのかもしれないが)気もしてたし、友達トークも心地よかった。


 以下、最後のたたみかけの抜粋。

「今試作品というかまだカタログに載ってない新製品で割安で提供できる数量限定でいい布団が少しだけ残ってる。」

「俺も8年この仕事命かけてやってきてる自負はあるからHALちゃんには自信持って勧める。」

「仕事も決まったことだし、しっかり身体を休められる布団はあったほうがいい。」

「うちの売りは10年の保証、よそはつけても3-7年で10年はあまりない。」

「というか今の布団はあまりにもひどい。プロだからこんなんでHALちゃんに寝て欲しくない。」

「HALちゃんの現状見せてもらったから、普段は提示しないなんとかHALちゃんにも払えるものを提示している。」

「いまちょっと確かめたら、掛け敷きで違う種類になるけどもいい布団が残ってる。」

「このくらいなら頑張れば支払えるし、ローンを背負っていたほうが仕事も頑張れると思うよ。」


 23万ずつの掛け敷き布団、諸々入れて割引で税込42万。

 クォークローンで月々6100円*59回、ボーナス年2回+20000円、初回11300円。

 諸々手数料込みで57万1200円の高級布団、5年ローンで契約書にサインしていた。


 すると、上司と思しき男の人が、布団を入れた鞄のようなケースを持ってきた。

 通気性のいい敷き布団と、保温性の高い掛け布団。柄は違うがいいもの同士の組み合わせだと云う。


 すでに深夜になっていた。10時台か11時台だったか。

 彼らは契約を取りまとめると、ホクホク顔で出て行った。



 だがちょっと思い出して欲しい。

 俺は前の職場で1年持たず、そこから3年まともに仕事すらできず逃げていた男だ。

 その俺が、5年と57万の責任を負うということは、あまりにも無謀だ。


 前の職場に就職してしばらくしたときに買わされた活水器を思い出した。あの時はクーリングオフをしたが。


 ヒキコモリのJUMくんを見習って、

PEACH-PIT
ローゼンメイデン 1 (1)

クーリングオフをしようと思い立てたのは、2時間後のことだった。



 なるほどいいものだということはその説明でよく判った。

 だが俺は米が買えなくて見切り品の割れキャベツ齧ってるような駄目人間だ。

 履歴書の希望欄にアパートから追ん出されるから

・金沢へ逃げるにしろ岡山に残るにしろ引越し費用が稼ぎたい、

・正社員に登用された際には寮に入りたい、

・滞納保険料や減免年金を払いたい、

 なんて書く駄目男だ。それで採用した警備会社も凄いが。


 俺には背負えるかどうかすら判らない。

 責任を感じるからこそ背負えないものを背負いたくない。


 もしや布団はオマケでクォークでローンを組ませることが目的で無職ニートではローンが組めないから職場を紹介した?

 職場の社長はいい印象のおじさんだった。ここにつながりはないだろうが・・・

 疑心暗鬼の小さな炎が一度灯ってしまったら、小さくなることはあっても、消えることはない。



 クーリングオフは黙って一方的にできるのだが、引き止められるのは判っていて、それでも彼に一言告げておきたくて携帯に電話した。


 日付の上では昨日の今日でも、事実上はさっきの今で断りを入れられたわけだから、そのあんちゃんかなりヘコんでた。

 電話の向こうで、泣きそうになってたのかもしれない。見えないから判らないけれども。


「なぁ、HALちゃん、そんならそんで、なんで契約したん?」


 今日は10時から研修があるからすぐは無理だけど、クーリングオフ制度に従った解約通知を送付し、置いていった布団を送料着払いで送り返せば全てが終わる。



 9・11布団テロはこうして終わった。

 向こうさんにしてみれば9・11クーリングオフテロだったのかもしれない。