昔、牛頭天王(ごずてんのう)という角を生やした男が旅をしており、日暮れに一夜の宿を求めた。
最初に金持ちの古単将来(こたんしょうらい)の家を訪ねたが、古単は牛頭天王の姿を気味悪がり、冷たくあしらった。
次に古単の兄で貧しい蘇民将来(そみんしょうらい)の家を訪ねると、蘇民は喜んで宿を貸し、粟飯を振舞って歓待した。
蘇民の親切に感謝した牛頭天王は「間もなく疫病が流行る。家の入り口に『蘇民将来之子孫家』と書いた札を下げれば、子々孫々までその家を疫病から護ろうぞ」と言って立ち去った。
やがて流行った疫病で古単は死ぬが、蘇民の家族は札を掲げて厄災から逃れることができた。
このことから、疫病が流行ると、人々は家の入り口に『蘇民将来之子孫家』の札を掲げるようになつたという。
牛頭天王の正体はスサノヲ神だった。