今回は、神奈川県の湯河原高校です。
とりあえず2月から始めた”関東地方集中連載”はこれにて終了です(笑)
現在は統廃合されて閉校しているのでリンクはありません。
湯河原町は神奈川県の最西端、静岡県との県境に接する町です。名の通り町内を流れる千歳川の上中流域はところどころ温泉が湧いていて、万葉集にも登場するかなり歴史の古い温泉街・湯治場となっています。
ちなみに万葉集に収められている約4,500首のうち温泉を詠ったものは次の一首のみで、これが湯河原温泉に掛けた恋の歌、だそうです。
『足柄(あしがり)の、土肥の河内(かふち)にいづる湯の、世にもたよらに子ろが言はなくに』
「世にもたよらに」は中空に揺れるように、「子ろ」は古語で女の子の意味らしいです。
訳すれば、足柄国の土肥川(現在の千歳川)のほとりに湧き出てくる温泉の湯煙が空に上って搖れて消えゆくように、あの娘と私の恋の行方もどうなるか心配だ…というような意味だということです。
このように古くから知られた湯河原には国木田独歩などの文豪や芸術家が居を構えたり湯治場や別荘地として逗留するようになり、不動の滝や万葉公園などの観光スポットや数多くの温泉宿を擁して県内でも一大観光地となっています。
学校は相模湾に面し、湯河原海浜公園の隣に神奈川百校計画のひとつとして昭和55年に開校しました。
湯河原・真鶴・箱根町の足柄下郡の生徒の主な進学先でしたが少子化の影響は避けられず、平成20年に小田原城東高校と統合、小田原総合ビジネス高校となり閉校となってしまいました。その小田原総合ビジネス高校も現在は小田原東高校に改称しています。
校歌は作詞:佐藤千晶 作曲:牛島友則で制定年は不明です。
湯河原 (全3番)
伊豆の山端 川面に映し
せせらぎさやけき 千歳川
ゆかし流れは 万葉の
遠い昔を 伝えしや
ああ湯河原 湯河原高校 わが母校
万葉集の昔から現在まで流れ変わらぬ姿として千歳川を讃えていますね。千歳川は中流あたりから県境の川となっていて対岸は静岡県となっています。
2番冒頭に出てくる椿は桜とともに湯河原町の町花です。湯河原地区には椿寺という寺社があって約1,000本の椿が植えられているそうです。3番は学校があった環境を端的に表しています。眼前に広がる海原から雄飛の理想を持って翔り上がれ、ということでしょう。
閉校後は湯河原中学校が移転してきましたが、東日本大震災直後は津波災害を危惧して再移転要望が出されていたことがあります。