◆おまけ「ダンタリアンの書架」
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ここからは森永さんに財務省金融庁日銀3者会合開くこちらについて話を聞きます。
昨日、日経平均株価の下落幅が過去最大となった東京株式市場ですが、昨日は一転して、この値下がりした銘柄を買い戻す動きが広がり、日経平均株価は終値で3200円あまり値上がりし、過去最大の上げ幅となりました。まずはこの株価の乱高下ですが、森永さん、どうご覧になっていますか?
そうですね、やっぱり複合的な要因というか、日の利上げだったり、それに伴う円高方向に為替が動いたこと、そして雇用統計を見てアメリカの景気減速懸念、さらに中東情勢など、いろいろなものが重なって大きく下げたというのがまずありますね。
とはいえ、その今言った複合的な要因だけでこれほど大きく下がるということは基本的にはなくて、じゃあなんでこんなパニック売りみたいになってしまったかというと、やっぱりこの昔はなかったと思いますけども、いわゆるアルゴリズムのトレーディング、つまりシステムトレードですね。システムトレードでは、売りがバッと出た時に、ある一定の数字になったら自分たちも売るという動きがあるわけです。それによってさらに売りが出るから、また他の売りが出てくるということで、売りが売りを呼ぶような展開になっています。人間不在で売りが売りを呼ぶ中で、そこに人間も乗っかって「下がってるから売りで儲けてやろう」といって売ってくる人もいますし、また下がってビビってしまって個人が売るということもあるでしょうし、あとはいわゆる信用売りですね。
信用買いしていた人たちがその担保していた株価がどんどん下がっていって、追加証拠金を入れなければならなくなって、そのために持っていた現物の株を売るというような状況が起きてしまいました。つまり、売りが売りを呼ぶという状況が発生したわけです。そうなると、当然売りから入ってきた人たちは相当大きく取れたでしょうから、今度は利益を確定するために買い戻す動きが入ります。それで一気に上がるから、それを見てまたシステムトレードが上がったというトレンドを認識して買いに入るということになります。やっぱり4000円何百下がって、3000円何百上がって、また今日どうせ100円下がるみたいな形になるので、どうしてもこの1週間ぐらいは上下にボラティリティが高くなるということになるでしょうね。最初は大きいですが、だんだんそれが小さくなっていくと思います。ずっとこの激しさが続くということはないと思うので、1週間ぐらいは徐々に波が小さくなるでしょうけど、大きく動くことには変わりないので、あまり下心を持って「今だ」と思ってやっちゃうと、波に巻き込まれてしまうかもしれないですね。
市場関係者はアメリカ経済の先行きへの警戒感はあるものの、アメリカでは来週にかけて重要な経済指標が発表されるため、その内容を受けた為替相場やアメリカの株価の動向が当面の株価を左右しそうだと話しています。これについてどうですか?
そうですね。来週の動きを見ていると、大体水曜日にCPI、つまり消費者物価指数の発表がありますし、木曜日にはアメリカの小売売上高、金曜日には住宅着工件数やミシガン大学の消費者信頼感指数などが発表される予定です。また、来週以降は、いわゆるサマーバケーション、つまり夏休みで市場参加者が減るタイミングになってくると思います。
そうすると、何かあってドンと大きく動くと、人がそんなにいないから、より値動きが大きくなっちゃうということもありますから、やっぱり来週も結構この株式市場という観点で注目するべき指標があるということはありますよね。
そうした中、財務省、金融庁、それに日銀が臨時の会合を開きました。この3者会合が開かれるのは、急速に円安が進んだ今年3月以来です。このタイミングでの3者会合、これはまあ当然っちゃ当然ですか?
いや、僕はでもこれはもうポーズというか、とりあえずやっときますかみたいな感じで。で、その後、取引時間中に何か発表されるんじゃないかという話がSNSとかでもざわついていましたけど、まあ何もないでしょうと、僕は思っていますよ。で、なんでかというと、そもそももっと話し合うことがあるでしょうって話で、株価が大きく下がったからって何か対策を打ちますって、それは変な話で。いや、もっと違うでしょうと。
例えば、今回の下落が全て日銀のせいだとは全く言わないですけども、明確に利上げをして、しかも会見の中で「利上げは今後もしていきます」と匂わしたわけで、そういう政策に対して「間違ってました」と、政策を改めますっていうのだったらまだ分かりますけど、株が大きく下がったことに対して、財務省、金融庁、日銀が集まって、もしそこに対して何か対策を取りますみたいな話になったら、それは本当におかしな話で、いや違うだろうと、話し合うべきことはいっぱいあるだろうって思いますから、まあどうせ何も出ないでしょうと、思ったら、大したものは出なかったですね。
で、会合の後、財務省の三村財務官は、市場参加者の声を聞くと、海外の景気悪化の懸念の他、地政学的な緊張の高まりを背景にした急速なリスク回避の動きが世界的にあったと承知している。経済金融市場の動向について緊張感を持った上で、冷静に何が起きているのか見極めていくことが大事だという点で一致したと述べましたが、まあポーズですよね、こんな感じですね。
最近、海外の情報とかニュースを見ていると、ちょっと笑っちゃうのが、「注視しています」というコメントがヘッドラインで出てきて、円安が進んでも注視します、というコメントが出てきて、今度は株が大きく下がると「注視します」と。いや、それは何なんだよという感じで、ずっと注視してるんじゃないかっていう話で、そういうことなんです。だからあんまり意味のない会合だったなという印象ですね。
森永さんがおっしゃったように、今は触れ幅が大きいですけども、だんだんそれが収まってくるという状況ですか?
はい、その通りです。為替をまずは注視するべきですね。これやっぱりさっき言った通り、145円というのが一つの業績の下方修正があるかどうかのポイントです。145円前後だったら、まあまあって感じですけど、これが仮に130円台とか120円台と話になってくると、やっぱり業績の加法修正を折り込んでいくので、株価がどんどん下がってしまうということもあります。また、何よりもアメリカの経済がここまで異様なほど強かったのが、一気に限りが出てきたので、そこももうちょっと注目した方がいいと思います。
今年になって新NISAを始めた方なんて、ちょっと気持ちが揺れている方もいらっしゃるでしょうけど、でも株価を見ると売りたくなっちゃうので、オリンピックを見て株価を見ない方がいいと思います。その方が長いスパンで良いかもしれませんね。