◆おまけ「機巧少女は傷つかない」

 

 

 

 

◆ここからは会田さんにこのテーマで話を聞きます。

日銀の追加利上げ、植田総裁の景気失速懸念は本当か。

 

日銀は政策金利を0.25%程度引き上げる追加利上げを決めました。追加利上げの決定を受け、銀行は普通預金の金利を今の5倍の水準まで引き上げると発表しました。今後、住宅ローン金利や企業への貸出し金利の上昇も想定されます。日本経済は長引くデフレの中、およそ30年にわたって低金利環境が続いてきましたが、利上げを進めながら賃金と物価の好循環を実現することができるのか、日銀は難しい舵取りを迫られることになります。会田さん、改めてですが、このタイミングでの追加利上げについてどうご覧になりますか。

日銀が金融政策の正常化と称する利上げを焦った結果だと思います。

日銀は展望レポートで、2024年度、今年度の実質GDPの成長率見通しを0.8%から0.6%に引き下げました。

この1~3月期の実質GDPは前年同期比で0.7%のマイナスです。

そして、何度も申していますが、実質民間内需はコロナ前の2019年の平均をまだ1.99%も下回っており、経済はまだ平時に回復していません。

景気が消費活動を中心に予想よりも悪く、物価見通しも2%の目標近辺で安定しているわけですから、景気の過熱の心配はなく、FRBやECBであれば利上げはしなかったと思います。

 

ただ、日本は9月に自民党総裁選があり、またFRBの利下げもあり、その後衆議院解散を含む政治の不透明化と米国経済の景気の原則で利上げがしにくくなってしまうのではないかと、

そういうことを回避するため日銀は駆け込みで利上げを強行したと考えられます。

今のお話を聞いていると、とにかく正常化したいんだという一念で、もう次のチャンスは今しかないというところで利上げをしたということですね。

でも、正常化しなければいけないのは金融政策ではなくて経済なわけです。
経済の正常化を優先するのであれば、金融政策の正常化というのは当然優先されないわけですけれども、

今回はこの金融政策の正常化というイデオロギーに囚われて、日銀は経済を冷静に見ることができなくなっているのではないかと思います。何かこう見て森を見ずという感じですね。本当に大切なところを見失ってしまった、目先のことに動いてしまったとも受け取れます。

植田総裁が追加利上げを決定したことについて、「非常に低い金利水準での調整なので、景気に大きなマイナス影響はない」と述べています。景気に大きなマイナス影響はないという強気の認識を示したわけなんですが会田さんはこれをどう受け止められますか。

はい、日本経済の実力の成長率である潜在成長率、これを日銀は推計で0.6%程度としています。

FRBはこれ、ベージュブックと言われる地区連銀経済報告で、成長率が今後6ヶ月で鈍化することを指摘しています。

その結果、9月に利下げに転じると見られます

米国の景気減速によって輸出に下押し圧力がかかり、円高への転換による企業収益の下押しとともに、日本の成長率が潜在成長率を下回ることになってしまうと考えられます。

利上げの影響は景気が健全な間は植田総裁が指摘するように小さいのですが、景気が一旦軟調になってくると、加速度的に利上げの影響が大きくなってきます。結果として、今年2024年全体の実質GDPの成長率はマイナスになってしまうリスクが出てきたと考えます。2000年と2007年には、アメリカの景気後退を前に日銀が「今しかない」と駆け込みで利上げをして、結局失敗したことがありましたが、これで三振になってしまうリスクが出てきているのではないかと思います。

 

「二度あることは三度ある」ということですか。それもよろしくない方向ですからね。

日銀はその誤った景気判断を背景に、3月にマイナス金利政策を解除した会田さんはお考えのようです。この誤った景気判断とはどういうものなのでしょうか。

昨年4月に植田総裁が就任して以降、日銀は景気の見通しを下方に修正し続けています。

日銀はずっと海外経済の回復により景気は下支えされるが、消費の増加などに支えられて緩やかに回復していくとの見通しを固く維持してきました。しかし、実質消費は4四半期連続の前年同期比マイナスで、消費は増加するどころか減少しています。消費の判断を引き下げると、投資を下げることになり、利下げの妨げになると考えたので、「消費は増加します」と言い続けたと思います。このように、金融政策の正常化と称する利上げにこだわるイデオロギーで景気判断が歪んでしまったということだと思います。現在は潜在成長率を上回る成長を続けると日銀は判断していますが、2024年で見れば、日銀の推計0.6%の潜在成長率も0.6%としているため、既に上回るという見通しはまた外れたということになります。


これも外しているということなんですね。

 

でもそんな中で、日銀は0.25%政策金利の追加利上げに踏み切ったわけです。

で、日銀内にはこの中立金利を意識して、来年度にかけて1%までの利上げを視野に入れる声も出ていると、植田総裁も政策金利について2006年以降前回の利上げの局面でのピーク0.5が壁になるとは思っていないとしています。来年度にかけて1%までの利上げを視野に入れるこの声について会田さんはどう感じますか。

はい、政府は企業を貯蓄超過という状況から、投資超過という普通の状況に戻すことで、コストカット型経済とデフレから完全脱却し、成長型の新しいステージに日本経済をシフトしていくという方針です。企業がこれまでのようにコスト削減で貯蓄ばかりする状況から、賃金と投資の増加で資金需要が生まれる状態へ変化させていきます。企業の資金需要が回復し、成長型の新たなステージにシフトするわけですから、かなり長期に考えれば、当然ながら日銀の政策金利から物価目標を引いた実質金利はマイナスを脱するはずです。

となると、政策金利はかなり長期には2%まで上昇していくことはあり得ることです。

しかし現在はまだ内需が弱く、企業も貯蓄超過でコスト削減から出していないわけですから、マイナスの実質金利で景気をさらに強く支える局面になります。日銀がどんどん利上げをしてしまうと、企業はコスト削減で貯蓄ばかりする今までの状況から脱することができず、成長型の新たなステージに移行することができなくなってしまうリスクがあります。政策金利をしっかりとしたペースで引き上げる本格的な利上げサイクルに入るのは、やはりアメリカがちゃんと循環的に回復する状況を見て、さらに日本の内需の回復もしっかり確認される来年後半までは待つべきだと思います。2つの大きな要素があるということですね。

そんな中、政府経済財政諮問会議で、財政健全化の指標として重視する国地方のプライマリーバランス、基礎的財政収支が2025年度に8000億円程度の黒字に転換するという試算を示しています。この黒字に転換するという試算について会田さんはどう受け止めますか。

はい、政府の実質GDPの成長率の前提は、2024年度、今年度が0.99%、2025年度が1.2%となっています。

この好調な成長率でようやく、2024年度は0.6%、2025年度は1.0%でさらに利上げをしてリスクを増やしてしまっています。

これにより、政府と日銀の動きが完全に矛盾しているということだと思います。

グローバルな景気減速もあり、景気は下押し圧力がありますので、経済対策で家計を支える財政支出が結局は必要になると思われますので、黒字は達成できないと見られます。政府の政策方針と整合的な金融政策の運営を日銀法で求められているにも関わらず、今回の日銀の利上げの強行を止められなかった岸田政権は、政治的求心力がさらに弱くなっていくでしょう。

だって本来、今岸田政権がやらなきゃいけないのは、まだ消費が弱いんだから、その辺りをもっと手当てしなきゃいけないんですよね。

そうですね。円安によって下されるところは、財政政策でしっかり手当てをする必要があります

 

読売新聞◆円高株安、急速に1時1ドル148台。
昨日の東京外国為替市場で対ドルの円相場は、日本とアメリカの金利差の縮小が意識され、ドルを売って円を買う動きが強まりました。円相場は一時、およそ4ヶ月ぶりの円高水準となる1ドル148円51銭まで上昇しました。円高が進んだことで、東京株式市場では輸出関連銘柄を中心に売られ、日経平均株価の下げ幅は一時1300円を超えました。終わり値は前の日と比べて9754円90銭安い3万8617ドルでした。減速が思ったよりも早く深くなっていくのではないかという不安があり、当然FRBアメリカの中央銀行の利下げがどんどん進むのではないかということを背景にした円高ですので、日本も内需が弱い中、円高が進むと日本の景気自体もやはり冷えてしまう可能性があるので、ちょっと心配ですね。

今の1ドル148円51銭まで上昇したと申し上げましたが、現在は1ドル149円63銭ぐらいで推移しているという状況です。そして、日経平均の先物を見てみますと、現時点では、これは今6時15分現在ですが、前の日と比べてマイナス1436と出ています。3660円という数字ですが会田さん、これは

 

アメリカで悪い経済指標が出てきました。特に雇用関係で悪化しており、新規の失業保険の申請件数が少し跳ね上がった。

さらに、ISMという製造業の影響感を調査するものがありますが、この製造業の中でも雇用に対する判断が相当悪化したということです。すると、やはりアメリカの雇用が悪化しており、今日注目なのは雇用統計がありますから、この雇用統計が悪化するのではないかという思惑につながり、アメリカの株が下がったので、日経平均も先物が下がったということです。

アメリカの株、8月1日の株取引は、前の日に比べて49482ドル下げた4万347ドル97セントで取引を終えているとのことです。そうですね、下がり具合ですね。アメリカが弱くても、日本が内需が強ければ、こんなにもアメリカ株に連動して先物が下げる必要はないのですが、利上げしてしまいましたので、日銀が0.25%の利上げをしました。内需がまだ弱いにもかかわらず利上げをしてしまったので、当然、日本も支える力はないということだと思います。

とんでもない時に金利を上げちゃったという感じがしますね。

日銀は実質GDP、日本の経済成長の見通しを下げたのに利上げをしたということですね。内需が弱いのに利上げをしてしまえば、マーケットの反応としてはやはり景気が心配だということで、アメリカも弱くなってきているので、何が景気を支えるのか不安になっていますよね。

プロが見てそうなんですね。なのになぜ日銀はそうしたのか、いろんなところからのプレッシャーがあったというのは事実ですか?

よくわからないのですが、今回の説明では物価の上振れリスクが懸念されると言いますが、成長率を下げているわけですから、

そんなに物価が急激に3%、4%と言ってしまうリスクというのはないですし、物価がかなり高止まりしていましたけれども、

日銀が利上げをしなくても2%に向かって物価は安定してきているわけです。

ですから、日銀が変なことを出さなくても安定してきているわけですから、

グローバルなスタンダードであれば、やらなかったと思います。外から見ていると、やはり疑問符がつきますよね。