◆おまけアニメ「東京マグニチュード8.0」

 

 

 

◆3月18日(月)ニュース

▼岸田自民党総裁 裏金事件関係議員の処分指示
▼今回の「金融政策決定会合」で「マイナス金利解除へ」は早すぎる 須田慎一郎が指摘
▼プーチン大統領がウクライナ侵攻に至った「被害者意識」
▼中国車には100%関税課すと言う一方で、TikTok規制法案に反対するトランプ氏の真意

コメンテーター 須田慎一郎 

◆岸田総理が裏金議員の処分指示 「派閥禁止」について麻生氏とどのような決着をつけたのか

ジャーナリストの須田慎一郎が3月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が指示した自民党派閥の裏金事件をめぐる関係議員の処分について解説した。


自民党派閥の裏金事件、岸田自民党総裁が関係議員の処分を指示
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岸田総裁)不記載の金額や程度、これまでの役職等の議員歴や説明責任の果たし方など、状況を総合的に勘案し、党紀委員会の議論を経て厳しく対応してまいります。


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演説のなかで岸田総裁は、党派閥の裏金事件に関係した議員の処分について、茂木幹事長に対し結論を得るよう指示したことを明らかにした。

裏金問題に決着をつけ、反転攻勢につなげていきたい岸田総理
飯田)処分について注目されていましたが、まず党紀委員会に預けるのですね。

須田)岸田総裁としては裏金問題に決着をつけ、何とか反転攻勢につなげたいのでしょう。国賓待遇でアメリカへ行き、そのあと水面下で北朝鮮との関係を改善する動きがあるようですが、そういった外交上の成果をきっかけに反転攻勢を仕掛けたいのだと思います。そのためには、どんな形で決着をつけるのか。処分の問題や党則・党規約、ガバナンスコード等々の改正を通じ、党として再発防止策の決着をつけるという青写真を描いているのだと思います。

政治資金規正法違反には連座制を適用し、除名や離党勧告などの重い処分を盛り込んだ
須田)処分については党紀委員会に任せるのだと思いますが、もう1つ心配だったのは党則・党規約、ガバナンスコードに関して、場合によっては党大会で動議が出てくるのではないかということです。「総理総裁に一任された」と言われている改正案ですが、その後、「あのときの協議では一任していない」というような意見が出てきて、場合によっては党大会で動議を出すという方向になった。どこが引っかかったのかと言うと、政治資金規正法違反の場合、一義的に責任が問われるのは会計責任者や秘書ですが、それに対して連座制を適用し、除名や離党勧告というかなり重い処分もそこに盛り込んだのです。これが1点目。

「派閥の禁止」に関して麻生派とどのような決着がついたのか
須田)また、2点目がポイントなのですが、派閥の禁止です。ガバナンスコードにおいて派閥禁止を盛り込んだ。とりもなおさず麻生派、麻生太郎副総裁に対し、ある種の刃を突きつけた格好になりました。その辺りから不満が出てきたのだと思います。しかし結局、動議が出てくることはなかった。どんな決着がついたのかは非常に興味深いのですが、何とかやり過ごすことができたのです。

総裁決定や法案などの了承について、派閥があれば早く意思統一ができる
飯田)ガバナンスコードについては、「資金力と人事への影響力を背景に議員を集め、数の力によって影響力を増やそうとする組織を『派閥』と定義し、派閥の存続・新設を禁止する」と書き込まれました。派閥禁止が盛り込まれたなかで、麻生氏は一旦、矛を収める形になったのですか?



須田)そうは言っても、「どうやって総裁を選ぶのか?」ということです。個別の議員がバラバラに動いていたのでは、総裁決定のプロセスを踏むことができない。時間も掛かるでしょうし、意思統一を図るのも大変です。議院内閣制ですから、例えば法案や法律については自民党内の部会で揉み、政務調査会にかけて、最終的に総務会で了承を得るという手続きがいるのです。しかし、議員がバラバラだと意思統一のしようがないという状況があります。

政策勉強会という形で法案などが処理できるのか
須田)派閥内で意思統一を図るような作業ができたところは、派閥に関するプラスの側面として、スピード感という意味ではいい部分もあったのです。それがまったくない状況のなか、政策勉強会という形で処理できるのかどうかの問題はあると思います。政策勉強会のリーダー役が「今回は私の顔を立てて、ここは呑んでくれ」と言ってみたところで、「あなたの顔を立てても人事で処遇されることもないし、金ももらえないではないか」という意見は出るでしょうからね。

飯田)「何のメリットがあるのか」と。そうなると結局、表は切り離しているけれども……という傾向になるのでしょうか?

須田)どういう形でプロセスをつくるのかが大事です。おそらく政策勉強会的なものは、これからできると思います。そういった動きが水面下で起こっていますからね。

飯田)当然、政策ごとに賛否もあるし、1人で考えるよりもいろいろな人の意見を聞いた方がいいものができる。

須田)それが自民党の部会的な看板になるのか、政策勉強会という看板にするのか。そういう動きが水面下で起こっているのは間違いありません。

今後は人事や金について「幹事長に一任」となるのかどうかがポイント
須田)ではどうやって意思統一していくのか。飯田さんが先ほどおっしゃった「メリットは何か」という問題もあります。



飯田)そのままオフィシャルにやろうとしたら、人事や金を握る人は幹事長だけになってしまいますよね。メリットがそこに集中する形になりませんか?

須田)幹事長の意思決定はどうするのか、幹事長代理や副幹事長を含めて進めるのか……。「幹事長に一任する形ではないのかどうか」が1つのポイントだと思います。

飯田)そうなると役職など、党全体の組織にまで関わってくる。

須田)そう思いますね。

番組情報

 

 

◆自民青年局「破廉恥パーティー」の原点は「埼玉県連」にある 須田慎一郎が指摘

ジャーナリストの須田慎一郎が自民党青年局の「破廉恥パーティー」について解説した。

自民党破廉恥パーティーの裏
飯田)自民党の党大会が終わり、国会は参議院で予算案を審議している真っ只中です。4月の終わりには補欠選挙も控えていますが、この先の展開はどうなるのでしょうか?

須田)岸田総理としては、これから反転攻勢を目指したいのでしょうが、果たして思惑通りに進むのかどうか。おそらく今週末には、一部報道でかなり大きなスキャンダルが出てきそうなのです。

飯田)そうなのですか?

「破廉恥パーティー」の原点は自民党の埼玉県連にある
須田)自民党和歌山県連の青年局が、例の不適切なパーティーを開きましたよね。

飯田)「破廉恥パーティー」などと言われている。

須田)世耕前参院幹事長の元秘書が中心にいたという話も出てきました。

飯田)当時の自民党・和歌山県連で青年局長だった方。

須田)その裏側に、もう1枚大きな裏話があると言われているのですよ。今回の自民党青年局長の背景を見ていくと、埼玉県というファクターが非常に強いのです。破廉恥パーティーの原点は、どうやら埼玉県、あるいは埼玉県連にあるという話が出てきています。

「青年局たるもの、少々羽目を外すぐらい元気にやらなければダメだ」と埼玉県連のカルチャーが全国に広まっていった
須田)自民党の埼玉県連と言うと昨年(2023年)、子どもだけでの留守番は放置による児童虐待にあたるとした「トンデモ条例案」が出されました。あのとき中心になって進めたのが自民党埼玉県連の県議団だったのです。その辺りが自民党の青年局全体に大きな影響を与え、「青年局たるもの、中堅・若手たるもの、少々羽目を外すぐらい元気にやらなければダメだ」というようなカルチャーが全国に広まっていったという話が出ています。

飯田)自民党埼玉県連の県議団の影響が。



須田)一部メディアは地元・埼玉で取材しているようです。一方で、そもそもどこから破廉恥パーティーが始まったのかを調べていくと、埼玉県に行き着いた。それを取材していると、「他からも取材が入っている」という話が出てきたようです。そこから逆算すると、どうも週末くらいにそれが出てきそうなのです。

男社会的な風土のある自民党のなかで深刻に考えられてこなかった
飯田)自民党の青年局長は(和歌山県)岩出市選出の人ですし、サブに就いたのは群馬の中曽根さんであることを考えると、本部として把握するのは難しかったのですか?

須田)そのようですね。ただ、ある意味で自民党は男社会的な風土があります。そのため深刻に考えず、見過ごされてきた部分もあるのではないでしょうか。

選挙で世話になっている県議団のボスは実力者に ~そこに物申すことは難しい土壌環境がある
飯田)確かにトンデモ条例のときも、埼玉選出の議員に取材すると「我々が言っても県議団が止まらない」と話していました。選挙で世話にもなっているし。

須田)地元の県議や市議が動かなければ、国会議員として国政(選挙)で当選することは難しいのです。そうすると、県議団のボスは実力者になってしまいますから、そこに対して物申したり、進めてきたことにブレーキを掛けるのは難しい土壌環境があるのだと思います。

地元政界のボスが大きな影響力を行使している
飯田)それこそ話題になっている「政治とカネ」の話にもつながります。結局、選挙では手足となって頑張ってもらうため、「政治資金が必要でしたら」という方向になるのですね。



須田)これは新潟県選出で元職の金子恵美さんに直接聞いた話ですが、やはり新潟では県議や市議、村議などがあからさまに要求してくるそうです。要するに「選挙でバックアップして欲しければ金をよこせ」というような要求です。そう考えると、国会議員を頂点にピラミッド構造になっているかと言えば、必ずしもそうではなく、地元あるいは地元政界のボスが大きな影響力を行使しているのだと思います。

補選の結果次第では苦しい状況になる岸田政権
飯田)今週は祝日も挟むので、自民党埼玉県連の記事がどういう形で出てくるのか。それが支持率に影響する可能性もあります。総理としては外交で何とかしたい考えがあるのでしょうが、そんなに効くものですか?

須田)世論的にはそれで支持率が上昇する可能性は低いと思います。加えて、そういったところに対し、どう決着を付けるのかという新たな問題が出てくるかも知れない。

飯田)4月28日には補選がありますが、そこで負けると岸田政権は終わりだという話も聞きます。

須田)問題になっているのは東京15区です。自民党東京都連のボスである萩生田さんと、東京都知事の小池さんはかつて犬猿の仲と言われていましたが、会食してフレンドリーな関係になったと聞いています。自民党を立てずに都民ファーストの会という方針になるのかも知れません。

 

 

 

◆今回の「金融政策決定会合」で「マイナス金利解除へ」は早すぎる 須田慎一郎が指摘
ジャーナリストの須田慎一郎がマイナス金利政策の解除について解説した。


日銀が2日間の金融政策決定会合を開催
日本銀行は3月18・19日の2日間、金融政策決定会合を開催する。会合では金融緩和策の柱であるマイナス金利政策を解除する見通しで、決定すれば2007年以来17年ぶりの利上げとなる。

飯田)マイナス金利政策が解除されるかどうか、まだ決まったわけではないのに確定的な報道が出ています。

須田)いきなりマイナス金利を解除するとなると、さまざまな形で大きな動揺をマーケットに及ぼします。ですから情報を少しずつ小出しにして、激変緩和措置的な動きになるのかなと思います。

飯田)刷り込んでいくような形ですか?

須田)それが重要なのです。ただ、どういう形で行われるか、どんな具体策なのかはわかりません。イールドカーブ・コントロール(YCC)と言われている10年物の長期金利も含め、マイナス金利政策が行われているのですが、一気に短期金利を解除すると、それはそれで大きな影響を及ぼします。そのため、まず第一段階としてYCC、つまり本来であれば日銀の役割ではない長期金利の調整はやめていく。ただマイナス金利はやめても、ゼロ金利政策を続けていくのかどうかは見込めていません。現状、日銀の手元には、おそらく需要が供給を上回ってきたというデータがあるのかも知れません。日銀のデータでは昨年(2023年)の段階で、トントンのところまでいっているのです。

持続的に需要が供給を上回るかどうか ~供給能力をどの程度見込んでいくのかが判断のポイントに
須田)それがこの1~3月期で、持続的に着実に上回っているかどうかがポイントです。もう1つは総供給、供給能力という点で言うと、「低く見積もりすぎではないか」という指摘もないわけではない。生産者も本気でフル操業しているわけではありませんから、「供給能力をどの程度見込んでいくのか」が今後の判断のポイントになると思います。

今回の金融政策決定会合で「マイナス金利政策解除へ」となるのは早すぎるのでは
飯田)需要と供給のバランスで見ると、内閣府も似たような数字を発表しています。内閣府の数字では先月(2月)辺り、「マイナスに戻った」と報じられていた気がしますが。

須田)その辺りの数字をどう見込んでいくかだと思います。はっきり申し上げて、内需は弱いですから。昨年の10~12月期は(GDP成長率が)マイナスになっています。まだ3月は終わっていませんが、今年(2024年)の1~3月期でどう見込んでいくかというところもある。意外と今回の金融政策決定会合で「マイナス金利政策解除へ」となるのは早すぎるのではないかと思います。

マイナス金利を解除しても、いきなり金利が復活するのではなく、マイナスがゼロに戻るぐらいの意味合い
飯田)GDPの数字が改定されて、一応はプラスになりましたが、個人消費はマイナスがさらにマイナスになりましたよね。

須田)GDPの5割強を占め、景気の牽引役と言われている個人消費が弱含みなので、やはり、もう少し様子見をするのかなと思います。一方、個人消費が回復軌道に乗ってプラスになったとき、いきなりマイナス金利を解除すると反動が大きくなるでしょうから、将来的にどうなるかを見込んで少しずつ解除するのだと思います。いきなり「ドン」と解除するのではなく、サラミを切るような形で解除に向かっていく。そういう判断なのかも知れません。

飯田)確かに、先週辺りは「イケイケドンドン」というような報道でしたが、昨日(17日)、一昨日くらいの日経電子版などでは「マイナス金利はやめても金融緩和は続ける」という報道に変わっています。

須田)そこは間違いないのですよ。マイナス金利をやめても、いきなり金利が復活するわけではなく、マイナスがゼロに戻るぐらいの意味合いでしょう。ゼロ金利も十分な金融緩和策ですから、ベースは変わらないのです。いわゆるYCCを含んだマイナス金利政策、かなり振り込んだ金融緩和策は少し緩和していくのだと思います。

よい物価上昇を続けていきたい政府とブレーキを踏みたい日銀とのせめぎ合いが起こる
飯田)金利を上げるとなると2007年以来だそうですが、議事録を読むと前のめりの日銀サイドに対し、政府から出ている人たちが「もう少し待ってくれ、まだそこまで温まっていない」と必死に止めていたように読めます。その辺りの体質は違うものなのですか?



須田)もちろん違うし、それが重要なポイントですよね。政府・日銀一体ということで、いま政府はよい物価上昇、つまり賃上げを伴う物価上昇を実現しようと動いているわけです。それが結実したのが今回の春闘です。ただ、そうは言っても大手企業は上げられるけれど、全部の中小企業が対応できるわけではありません。なおかつ賃上げの持続が見通せているわけでもない。となると、いまはマイナス金利政策、あるいは金融緩和策を解除するようなタイミングではないので、政府としてはよい物価上昇を続けていきたいのです。

飯田)マイナス金利政策を解除するタイミングではない。

須田)ところが日銀としては、よい物価上昇が見えてきた段階で、やはりブレーキを踏みたい。「ブレーキを踏むのが日銀の役割だ」というせめぎ合いが今後起こると思います。

 

 

 

◆公取委の企業公表 裏に「政府の強い意向」があるのは明らか 須田慎一郎が指摘

ジャーナリストの須田慎一郎が適切に価格交渉しないまま取引価格を据え置いた企業を公表した公正取引委員会について解説した。



公正取引委員会が下請け企業と協議せず取引価格を据え置いた企業を公表
公正取引委員会は3月15日、原材料費や人件費などの高騰で下請け企業のコストが増えたにもかかわらず、適切に価格交渉しないまま取引価格を据え置いたとして、ダイハツ工業や京セラなど10社の社名を公表した。10社には下請け企業との価格交渉を促し、改善を求める。



飯田)公表されたのは、イオンディライト、SBSフレック、京セラ、西濃運輸、ソーシン、ダイハツ工業、東邦薬品、日本梱包運輸倉庫、PALTAC、三菱ふそうトラック・バスの10社です。

須田)先立って日産自動車も下請けメーカー36社に対し、納入時に払う代金のうち約30億円を一方的に引き下げたとして、公取委が勧告を行いましたよね。

今回の公正取引委員会の公表は国に動かされてのことか
須田)部品単価、手間賃・工賃を上げることに関して、上げるどころか下げてきたという状況なので、公正取引委員会が伝家の宝刀を抜いたのだと思います。そういった意味で言うと、公正取引委員会は今回のような公表を行うべきですが、これまでは政治的な思惑によってできずにいた。つまり公正取引委員会は吠えない番犬なのですよ。

飯田)吠えない番犬。

須田)今回のことは、公正取引委員会が独自に判断したとは思えません。背景には政治的な動機があるのだと思います。国としては、よい物価上昇を実現するために賃上げが伴って欲しい。そのためには部品単価、手間賃・工賃を上げないと中小零細企業、小規模事業者の賃金は上がりません。それは当然なので、公正取引委員会が動かされたのだと思います。

政府の強い意向があるのは明らか
飯田)去年(2023年)の秋口にガイドライン的なものが出され、まずは協議を行い、「協議にも応じなければ優越的地位の濫用にあたるかも知れない」という内容を書きました。そこから半年ほど様子を見て、実際に動き出した。コストコに対しても勧告するなど、「外資であっても関係ない」という強い姿勢を見せました。



須田)優越的地位の濫用になるのは当然ですから、「ガイドラインをつくる前に取り締まれよ」と思いますが、これまでやってこなかった。にもかかわらず今回行われたのは、国や政府の強い意向があったからでしょうね。

飯田)そうすることで、低迷している支持率が上がるかも知れない。あるいはその先の「デフレ脱却宣言」まで考えているのですか?

須田)そうですね。外交・安全保障で支持率を上げるのは難しいのですよ。選挙となると有権者は経済・景気をいちばん重視しますから、着実に結果を出したいのだと思います。

飯田)はたして岸田さんの思惑通りにことが運ぶのかどうか。

 

◆プーチン大統領がウクライナ侵攻に至った「被害者意識」

ジャーナリストの須田慎一郎がプーチン大統領が圧勝したロシア大統領選について解説した。


ロシア大統領選、プーチン大統領が圧勝
ロシア大統領選挙は3月17日夜に投票が締め切られ、過去最高の得票率でプーチン大統領が圧勝した。これでプーチン氏は通算5期目の当選となる。

飯田)プーチン氏はモスクワの選挙対策本部で「国民が寄せてくれた信頼に感謝する」と述べ、大統領選での勝利を宣言しました。

須田)大統領選挙で勝つのは既定路線ですから、驚く結果ではありません。ただ、大統領選挙の当選を受けて今後どう展開するのか。加えて、ウクライナ侵攻でもロシア軍の優勢が伝えられており、ウクライナ軍は厳しい状況になっています。ロシア経済がそれを支えているわけですが、当初、西側諸国が目論んだようなロシア経済を疲弊させる戦略、場合によっては崩壊させるという基本的な戦略が実現できていない。そこに至らなかったことが最大のミスではないでしょうか。

飯田)戦費の調達も含め、エネルギー価格は上がったままですが、ロシアにとっては都合がいいのですよね?

経済封鎖によってロシア経済を追い込むことができなかった2つの理由
須田)2つ理由があると思います。1つは、かつての米ソ冷戦時代と違い、現代は完全な経済封鎖ができない。ロシア経済と西側経済は密接に絡み合っているため、完全な分離は不可能だった。もう1つは、アメリカ・ヨーロッパ・日本など西側が結束してみたところで、例えば第三世界を含め、ロシアとの関係を従来通り続ける国々がかなり多かったのです。その2つが、西側の経済封鎖が失敗に終わった大きな理由だと思います。

飯田)よく中国・インドの存在が話に出ます。G20などでもその辺りが割れて、声明も出せない状態ですよね。

須田)世界は間違いなく多極化しているのです。全世界のGDPの6~7割をG7諸国が占めている時代であれば、経済封鎖も大きな意味があったけれど、いまはG7諸国の比率が下がって5割を切るような状況です。いくら先進国が経済封鎖したところで、実体経済に大きな影響を与えられないことが明らかになったのだと思います。

西側諸国との融和が受け入れられず、ロシアを守るためにウクライナ侵攻に至ったプーチン大統領
飯田)プーチン氏の任期は2030年までとなりますが、今後、ウクライナはどうなると思いますか?



須田)イギリスの公共放送などがファクトチェックしていますが、米FOXニュースのキャスターだったタッカー・カールソン氏による2時間を超えるプーチン大統領へのインタビューが行われました。私はすべて観ましたが、個々の事実関係についてはツッコミどころ満載で、事実認識の誤りもあるけれど、プーチン大統領は相当、被害者意識を持っているようです。

飯田)被害者意識。

須田)一国のリーダーとして、本来であれば西側諸国と融和を進めていく方針が、もともとプーチン大統領のスタート地点だったはずです。しかし、それが受け入れられず、どんどん孤立化を進めていったという自己認識がプーチン大統領サイドの根底にあるわけです。そこで「国を守るためにはどうしたらいいのか」と考え、今回のウクライナ侵攻に至った。

飯田)ロシアを守るために。

須田)しかし、主権国家に対する一方的な侵略は国際法違反であり、絶対にやってはならない行為です。そこに踏み込んだという点でプーチン大統領が100%悪いのですが、「その思いに対してどう向き合っていくのか」を考える必要もあります。

飯田)意思を変えるようなボールの投げ方ができるのかどうかですか?

須田)「果たして強硬策一本槍でいいのか」という問題もあると思います。停戦や休戦などに持ち込んでも、プーチン大統領のこの意思がある限り、見直しはきかないのではないでしょうか。

 

 

◆中国車には100%関税課すと言う一方で、TikTok規制法案に反対するトランプ氏の真意

ジャーナリストの須田慎一郎が米大統領選について解説した。

トランプ前大統領、メキシコで生産される中国の車に「100%の関税課す」と演説


トランプ前大統領は3月16日、中西部オハイオ州の集会で演説し、11月の選挙で大統領に返り咲いた場合には、メキシコで生産される中国メーカーの車に「100%の関税を課す」と表明した。また、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画も「私なら許さない」と改めて表明した。

飯田)トランプvsバイデンでほぼ決定ですが。

須田)現状ではトランプ前大統領とバイデン大統領の支持率もほぼ拮抗しており、若干トランプ前大統領が上回っているかという状況です。特にカギを握るのは激戦6州ですが、これについてはトランプ前大統領がリードしている。前回の激戦州の状況を見ると、2020年の選挙ではバイデン大統領の4勝2敗なのですよ。そのため、やはりここが大きなカギを握ると思います。激戦6州に関しては、現状すべての州においてトランプ前大統領が有利です。このまま11月5日の投票日を迎えれば、トランプ前大統領に軍配が上がる。ただ、その間に何が起こるかはわかりません。

中国の車には100%の関税を課すと言う一方で、TikTok規制法案には反対するトランプ氏
須田)アメリカの経済政策や外交政策は、すべて政治的な思惑がバックについている。トランプ前大統領はメキシコで生産される中国の車に「100%の関税を課す」と表明しました。貿易論を知っている人間からすると「100%の関税とは何だ?」と思う一方、先立って下院で成立したTikTok規制法案に関しては、トランプ前大統領は反対しています。

飯田)そうですよね。

須田)ここでは中国側に立ったような発言をし、車に関しては反中国的な発言をしている。それもすべて、国内政治の思惑によって動いているわけです。TikTokに関しては民主党が主導し、なおかつ議会で成立したらバイデン大統領がすぐ署名するというようなスタンスなので、反バイデンだから「俺は反対だ」とする。

飯田)「バイデン印の法案なんて呑めるか」と。

TikTokの大株主がトランプ氏に巨額の政治献金を行っている
須田)もう1点、トランプ前大統領の政治資金の問題もあります。TikTokの大株主で投資家のジェフ・ヤス氏は、トランプ氏に対して巨額の政治献金を行っているのです。そのため、TikTokの経営にとってマイナスになるような政策には反対している可能性があります。政策や政治資金の問題によって、方向性が大きく変わってくるかも知れません。

4つの刑事裁判も抱え、政治資金がいくらあっても足りないトランプ前大統領
飯田)2016年の選挙でヒラリー・クリントン氏を破ったときは、大口の献金がなく、草の根の献金やトランプ氏自身のお金も使っていたと言われています。今回に関しては、大口献金もかなりあるのですか?

須田)一部集まっていますし、何よりも、いまトランプ氏は4つの刑事裁判を抱えています。これに関して巨額の裁判費用が掛かっており、「政治資金がいくらあっても足りない」というような状況です。

飯田)弁護士を雇う資金なども含めて。そうすると、大口献金者の言うことも一部は聞かなければならない。

須田)言うことを聞いているかどうかはわかりません。しかし、そういう関係性があることは理解しておく必要があります。

大口献金者と政策の中身は完全にリンクしているケースが多い
飯田)台湾メディアなどでは、「お金でいろいろ変わるのではないか」と危惧するような報道がありますね。

須田)どういうところが、どういう思惑で政治献金を行っているのか。その結果、どんな発言が出ているかを考えなければなりません。ただ、これはトランプ前大統領だけではありません。バイデン大統領もそうですし、ほとんどの大統領候補、あるいは過去の大統領選挙を見ても、大口献金者と政策の中身はリンクしているケースが多いのです。

飯田)アメリカはそういう国だと。一定の許可、資格を取ればいい。

須田)ロビー活動が許されている国ですからね。

マーケットの公平公正を阻害する政治的な思惑
飯田)中国だけでなく、いろいろな国が影響力を行使しようと動くかも知れない。日本はどうなのですか?

須田)日本はロビー活動が下手なのですよ。

飯田)USスチール買収の中身を見ると、「むしろこちらが助けるという話ではないのか」と日本人としては思いますが。

須田)企業買収問題は公平公正なマーケットにおいて決めるべきなのに、政治の思惑を反映させてしまうと……。アメリカを象徴するようなUSスチールという企業が日本企業の支配下に入ると、イメージ的な問題として許容しにくいことはわかりますが、経済の原理原則、自由貿易体制によって大きなメリットを受けてきたのはアメリカ経済ではないですか。そこに対して政治的な思惑を影響させると、自己否定になってしまうのです。アメリカのジャーナリストに「これは公平公正を阻害することになるのではないか?」と聞くと、「その通りだ。そう思う」とみんな口を揃えて言います。

USスチール買収が政治的思惑でひっくり返されるのもアメリカ
須田)アメリカ人記者も言うのですが、それが政治的思惑でひっくり返されるというのも、またアメリカなのです。

飯田)そこも考えて企業は動かなければならないし、いろいろなロビイングも行わなければいけない。

須田)あるいは、それまでの根回しも必要です。経済の原理原則だけでは物事が決着しない側面も持つ国だと思わなければなりません。

飯田)しかも、タイミングが大統領選挙の年に被ってしまった。

須田)かつて、ニューヨーク・マンハッタンの象徴と言われていたロックフェラーセンターを、三菱地所が買収しました。買収したのは土地ではなく、持株会社だったのですが、あれが反日の大きなきっかけになってしまった。今回も、USスチールはアメリカの繁栄の象徴だと言われています。

飯田)やはり、やり方があまり上手くなかったですか?

須田)タイミングも悪かったですね。