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●僕が投票に行かない理由

 

丸山健二と僕の相似点として、健康診断を受けず、投票に行かないことだと先述した。それはまあ、冗談混じりに挙げたことだが、今回はその投票拒否に触れてみたい。丸山氏が何故投票に行かないのか、理由を訊いていないのでわからないものの、僕の場合ははっきりしている。

 

実は50年以上前のこと、人生最初の投票に僕は出かけている。しかしその時、こう決心したのだ。右翼の街宣車じゃあるまいし、車で「お願いしまーす!」と大音声で阿呆のように繰り返しながら走り回る候補者、及び、恥も外聞もなく土下座する候補者には絶対に投票しまい、と。

 

その結果、僕が投票するに相応しい相手がいなくなってしまったのだ。投票は民主主義の根幹である、というような御託は聞き飽きている。僕にとって、それは権利でもなければ義務でもなく、単なる必要悪なのだ。必要悪なのだから、やりたい人はやればいいし、より良い方法を考える人だっているだろう。

 

僕の古い友人で、スタンフォード大学ビジネススクールの大学院で学んでいた男からこんな話を聞いた。ある日、彼が学生の溜まり場へ行ってみると、友人たちがコーヒー片手に寛いでいた。「もう選挙には行ったのかい?」そう彼が訊くと、なかの一人が、外で働く掃除婦を指差してこう言ったというのだ。

 

「あのおばさんと俺たちが同じ一票だぜ。おかしくて投票なんかに行けるかよ」と。この鼻持ちならないエリート主義を支持するわけではないが、結果的に、投票拒否という点では僕と同じである。さて、為政者にとって怖いのは、投票する国民なのだろうか、それとも拒否する国民なのだろうか。

 

自慢ではないが、僕は政治には強い関心がある。政治に無関心だから投票にも行かない連中と一緒にしてもらいたくない。男ならば、いや、まともな人間ならば、精神の刃であれ物質の刃であれ、心に常に刃を呑んでいるのは当然だろう。それを何時抜き放つのか、それは我々各々の問題だ。

 

お互いに「先生」と呼び合いじゃれ合っている国会の“先生方”よ。あなた達は本当に魅力がなくなった。議員数の削減? 半分にしたって多いぐらいだ。誰某の看板が選挙違反かどうか、そんなことが大真面目に論じることなのか。世界の中の日本、日本の中の世界、そのレベルで物事を考えられないのか。

 

若年層の政治離れが心配だ? 心からそう思うなら、そして心から日本の未来を憂えるなら、政治家が自ら襟を正すしかないのだ。既得権益に胡坐をかき、党利党略に明け暮れるあなた方に、政治家になる資格はない。そのみっともなさが若い世代に見透かされ、そっぽを向かれていることがわからないのか。

 

さもないと、本当にさもないと、近い将来、日本に革命が起きるかもしれない。今から覚悟をしておくことだ。政治家が今ほど軽んじられ、蔑まれている時代はないだろう。その方がよほど健全な社会であるようにも思う。もしそこに国民独自の判断力が養われているのならば。ああ、しかし残念ながら……。

 

2018/12/1213 ツイッター投稿

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